「東京の街が奏でる 〜小沢健二コンサート」


東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアルで行なわれた、小沢健二コンサート「東京の街が奏でる」に行って来ました。
日曜日を希望日にしたのに、運良く抽選に当たってゲットしたチケット。正直、9000円はちょっと高いかな…と思っていたけど、前回、2010年のひふみよツアーは最初からチケットが取れる気がしなかったが、今回は同じ会場で十二夜にわたって行なわれるので、可能性があるかと思って予約を申し込んでいた。
オペラシティのホールの中に入るのは初めて。3階席まであり、天井も高く開放感がある空間だが、思ったよりステージとの距離が近く感じられた。1階席の後方だったが、見やすい席だった。
ステージ上にはドラムセットはなく、弦楽四重奏とベースでアコースティックな編成で演奏されるらしい。後方に横長のスクリーンがあり、そこには影絵が映し出される。
17時スタートで、オープニングに登場したのは、なんと七尾旅人。毎回ゲストに来てもらって、前説のようなものをやってもらってるらしいのだが、「いちょう並木のセレナーデ(reprise)」のオルゴールを回し、詩を朗読し、即興でアカペラで歌ったパフォーマンスは見事だった。何を歌ってもマジックがかかるあの声だが、その即興で作ったメロディが一度耳にしたら忘れられないほど素晴らしかった。あれで会場の雰囲気がぐっと温かくなったなあ。
続いて単独で自然体で現れたオザケンは、体型も細く少年っぽさを残したままで、自分の席からは表情までは見えなかったが、相変わらず若々しい。
「街に血が流れる時」「メトロノーム」という詩を朗読し、ギター1本で「東京の街が奏でる」というコンサートのタイトルにもなっている新曲を歌い出す。このコンサートが明確なコンセプトと強い意志のもとで開かれたものであることが、はっきりとわかる。
途中でひとりずつメンバーを呼び込み、おなじみのコーラス・真城めぐみとベース・中村キタローに、4人のストリングスが加わる。このホールで鳴らされることを前提にしたアレンジの豊かな響き。
続く「さよならなんて云えないよ」で大合唱、早くもスタンディングオベーションで、始まったばかりなのに会場の盛り上がりは最高に。オザケンが「今日はたくさん曲やりますから、ご安心を…。」と言って落ち着かせるほど、今日という日を待ち望んでいたお客さんの期待と興奮に満ちあふれた空間。
…実際に、思っていた以上にたくさんの曲を披露してくれた。
(「ブギー・バック」をラップの部分までひとりで歌ったのには、会場からも笑いが…。「オレ、スチャ兄…」ってそこは歌詞変えないんだ(笑))
20年近く前の懐かしい曲を、当時リアルタイムで聴いていた世代が共有する、懐古的な雰囲気になるのかと思っていたが、すべての曲の意味を捉え直し、特に震災以後の今鳴らされる必然を獲得し直して、このコンサートに臨んでくれていた。メロディが色褪せないのはもちろんだが、すべての歌詞が再び生きた言葉として耳から入って血流に乗り全身に巡っていくのが感じられた。
基本はアコースティックギターの弾き語りだが、ストリングスのアレンジが多彩でいつまででも聴いていられる感じ。「天使たちのシーン」はまさにハイライトで、今こそさらに心に響くメッセージが込められていたことにもあらためて気付く。
ホールでドラムやホーンもいないので、座ってじっくり聞く静かなライブになるかと思ったら、全然…盛り上がる盛り上がる。
オザケンのギターも時に激しくかきならし、後半の「130グルーヴ」と本人が呼ぶ、アップテンポなナンバーの大熱演。「暗闇から手を伸ばせ」「愛し愛されて生きるのさ」で、最高潮の盛り上がり。
前回のツアーでは一部しか披露しなかったという、名曲「ある光」はこの時だけエレキギターに持ち替えてファンキーなカッティング。間奏のセリフの部分を二度も繰り返してくれて、客席から「うおー!」という歓声があがる。…やばい、「もっと光を!」って感じになってきた。
この日の、詩の朗読をはさみながら数曲ずつ演奏するという構成といい、ホールの雰囲気といい、時に客とコール&レスポンスのような大合唱が起こることといい、…これはまるでブラック・ゴスペルだわ。
個人的には、みんなに歌わせたりお決まりの手拍子や仕草を要求したりするライブは好きではなくて、「めいめいが勝手に踊ればいいじゃないか」と思っているほうなのだが、この日のコンサートの祝祭的スピリチュアルなムードの中では、みんなと一緒に歌い手を叩くことが自然に感じられた。祈りを届けようとする意志も共有することができた。これは観客がすごく良くて、通常のロックのライブではなかなかないヴァイブスが出ていたからだろうと思う。
その名もずばり「神秘的」という新曲も披露された時は、ほんとに天井の三角窓から光が射して神が降臨するんじゃないかと思うほどで、さすがに「この空間、オザケンにまったく興味がない人が見たら異様だろうな…」と、余計なブレーキがかかってしまった(笑)。
終わってみれば4時間近くの大熱演。なんとも濃密で贅沢な時間だった。

…9000円を高いと思ってしまったことに関しては、深く陳謝いたします。ほんとに素晴らしかった。

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