「『アナ雪』について語る。」

「粋な夜電波」第160回はフリースタイル。
特集企画が立て続いて、後回しになっていた「『アナ雪』とJK」についての話が披露されました。
大ヒットの秘密に迫る!…というつもりはないのでしょうが、実は結構核心突いてるのでは?と納得してしまう、菊地先生ならではの切り口で語る「アナと雪の女王」。その部分を文字起こししてみました。

ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本

ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本

えーとですね…もうちょっとメールいきましょうか。
アナと雪の女王」の話ってしたっけ?…してないんだよね?…カットされたままになってんだよね?
あの…今回も口上にちょっと挿みましたけどもね。
まあ、一番良く言ってですね…ワタシも行きました、で、隣にJKがいたんですけどね。
JKの話はね、鮮度が落ちんのが早いんですよ、JKだけに。
ま…「映画泥棒」って出てくるじゃないですか(笑)。こういう…顔が…何だろうねあれは…昔の動画カメラが頭になってんのかな?…で、スーツ着て踊る細めの奴がいるじゃないですか。
あれが出て来て「映画泥棒」が踊り始めた瞬間に、「あれ、中入ってんの、生瀬勝久だよね?」って言ったっていうところだけ、ちょっと面白かったんですけど(笑)。
それ以外はまあ…さほど面白くなかったですね。見聞きした時は面白かったんですけど。
まあ、それにしても、映画自体の話ですけど、まだヒットしてますからね。
一番良く言って…あれですよ…「子供に観せに行くっていう体で親が喜ぶようなアニメ」ってのが多いような気がするんですよ。ワタシ観てないんですけどね、観なくても分かるんですよ、ちゃんと。「ちゃんと」とか言っちゃって(笑)…適当なんですけど。
こう…親の方が感動してるっていうね、ただ子供を連れて行くっていう体面で観に行けるっていうような…。
まあ、なんか最近は「大人・子供の癒着」のアリバイのカルチャーが、すごい発達してるんで。ワタシとしては、そこは分けて欲しい…ね。
大人ってのは、クサくて気持ち悪くて話も趣味も合わなくて全然ダメな代わりに、そういう異物でストレンジな代わりに、だから自分のピンチの時に助けてくれるっていう存在じゃないとね。
友達みたいになっちゃったらね、子供が苦しんだ時に行き場が無いですからね。
そんな真面目な話してもしょうがないですけど。それはともかく…そういう映画じゃないっていう…ところが、一番良く言ってそうですね。
アナと雪の女王」ってのは、こう…例えばね、「トイ・ストーリー」ってのがありますよね、あれは大人の方が喜ぶ…ていうか泣いちゃうと思うんですけどね。ああいうふうに、泣いちゃう上にクオリティがすごい高いじゃないですか。
で、無限にクオリティ高くなってたらヤバいですよね。ピクサーだってそんな、永遠にクオリティ上げてくわけにいかないですから。
娯楽映画史ってのは、必ず一回ね、落とす時がくるんですよ。音楽と同じで。
どんどんどんどん盛り上げてって、そのまま盛り上がって終わるのは、この世にラヴェルの「ボレロぐらいしか無いですからね(笑)。あとは、上がったり下がったりするわけですよ。
で、ガンッって緩急付けなきゃいけないんだけど、一本の映画の中でじゃなくて、数年間のその会社の配給の中で付けるわけ。
で、「アナと雪の女王」がね、つまんないとは言わない、全然。つまんなくはないんですけど、もう…連れてった親も子供時分のことを思い出して泣いちゃっって、もう親子で大感動…どっちかっていうと親が泣いちゃって…っていうような、物によってだいぶ感動のヴォルテージ上げちゃったんで、ちょっと子供向けに落とした結果だと思うんですよね。
その結果、主題歌がひとり歩きしてる…っていうことがあっても、別に何の問題もないですけど。
それが一番…「アナと雪の女王」を、こんなラッパーしかもTBSのパーソナリティが映画の話真面目にすると、最近髭剃ってサングラスかけると宇多丸さんに似てるって言われる時があるんでですね(笑)、「シネマハスラー」とごっちゃになっちゃう可能性がなくもないですけどね。
ま、それはともかく…ともかくっていうか、気にせず先に進むとですね(笑)、悪く…もし言った場合ね、これ…悪くじゃないんですけど。
やっぱディズニーが、あのパワーですから、世界の…地球上のエンターテインメントの王ですからね、何でもやり放題ですよね。ま、かっぱらおうと思ったらかっぱらい放題ですよね。「かっぱらい」って言葉は悪ぃですけど。
エンターテインメントってのは…とにかく、かっぱらい合いが商売ですから、これはしょうがない。
我々の記憶だと「ライオン・キング」騒動…ね。あれが「ジャングル大帝」じゃねえか…とかなんとかかんとか、やってましたよね。ですから、いろいろかっぱらうわけですけど。
いくらなんでも、glee(グリー)」からかっぱらい過ぎですよね。
glee」の実質的な主題歌でありますところの、ジャーニーの「Don't Stop Believin'」…この番組でもスピンしました。フィルが亡くなった時にね、スピンしましたが、あの曲とコード進行とリズムの作りがほぼ同じ。8ビート…ガンガンガンガンガンガン…っての。「ありの〜ままに〜」っていうのと、「ドーンストップ〜ビリーヴィン〜」…ほとんど同じ情感ですからね。
ま、それはそれでいいんですけど(笑)。「グリークス」…「glee」のマニアのことをグリークスって言うんですけど。
グリークス的に言うとですね、アナの姉ちゃんの雪の女王の声優…アメリカ版っていうか本式の声優ね、各国版じゃなくて…が、なんと「glee」の主人公のレイチェルの母ちゃんですよ。ほいで、アナと結ばれる主人公の男が、これまたグリークス的に言うならば、我らがマッキンリー高校…これは「glee」の主人公達の高校ですけど、マッキンリー高校・ニューダイレクションズのライバル「ヴォーカル・アドレナリン」の、やがて顧問になるOBのイヤな野郎…が、やってますから。結構主要キャストそのままぶっこ抜いてますからね。
だから、まあ…結構これ「glee」取ったよな…って映画だな…ってのが、二番目の感想なんですけど。
隣のJKが気にしてたことは、自分が深く腰掛けた時に、ポップコーンのラックから自分の手が遠いってことでしたね(笑)。
「ポップコーンが遠いんですけど!」って言ってました、はい(笑)。



※文字起こしの「NAVERまとめ」あります。