ナベジュンワールド。

渡辺淳一というベストセラー作家について、自分が知っていることはごくわずかだ。
作品自体まともに読んだことがない。
ただ、映画化もされ、話題になった「失楽園」「愛の流刑地」や、売れているらしい「欲情の作法」というエッセイ(?)などの近年の著作物から、中高年の性愛を赤裸裸に描いた作品で人気を博している作家で、老いてなおさかん…というイメージが先行しているのは、世間一般に知られているところとそう遠くはないと思う。
身もフタもない言い方をしてしまえば、おっさんが喜んで読みそうな「ちょいエロ小説」ばっかり書いている…でも文芸的には高い評価を得ている大御所ということになるだろうか。
そんな大先生が現在、文芸春秋に連載中の「天上紅蓮」という小説が、一部の間で話題になっているらしいと聞いた。
仕事でたまたま本文を扱うことがあったのだが、ぱっと見た印象では、ちょっと固めの歴史小説かという感じ。
内容も白河上皇院政を敷く時代の話だとかで、「中高年の性愛」からかけ離れている感じがしたので、最初は〈あの〉渡辺淳一氏だとはすぐに結びつかなかったほど。同性同名の別の作家の作品なのかと思った。
おそらく昔からのファンならば、そういう伝記的小説と医療にからんだ社会派小説と、「愛の小説」を書き分けることのできる作家というイメージも持っていて、特に不思議なことではないのかもしれないが。
なにしろ全くの素人からすると渡辺淳一イコール「失楽園」の人…というイメージが強いもので。
「へー。こういう歴史小説みたいなのも書くんだ…」
と思って、ちょっとした驚きだったところもある。
しかし、よくよく内容を読んでみれば、白河上皇が若い愛人を自分の孫の天皇に嫁がせ、それ以降も禁断の関係が続いていく…というような話で、「結局そっちかい!」と思わずツッコミたくなる。なかなかの暴挙だよね。
しかし、相当昔の話で、いくら小説だといえ、皇族を相手にして、こんな小説を書けるのはすごいと思う。感心もしたが呆れもする。
いや、いいのかねこれ。天皇陛下万歳!な組織の方々から、批判は出ないのだろうか。
何を書いても展開される「渡辺ワールド」の徹底ぶりには、ちょっこ感心しっぱなし。
いやあ、ある意味すごい!

欲情の作法

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