湊かなえの「告白」

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

「告白」という同名の小説が町田康にもあったが、これは湊かなえ著。
ベストセラーランキングで長らく上位の方にいたから、そのタイトルと著者名は記憶していた。
まもなく映画が公開されるということは知らなかったが、文庫になったタイミングはちょうどいいと思い、読んでみることにした。
連作短編でそれぞれが繋がっており、最後の解決に向かっていくという構成は結構好きなパターンだし、一方的なモノローグながら、章ごとに書き手を代えて異なる視点を示し、ストーリーを類推させつつ進むという展開に、著者の創意工夫が感じられた。
著者自身の意見をすべて盛り込もうとして設定された物語の筋に、リアリティを求めると多少無理があるけれども、細部の積み重ねに最後まで綻びはみられず、謎解きとしての面白さを増幅させていた。
登場人物それぞれの独白によって次第に明らかになっていく事件の全容だが、結末はまた読者の予想を裏切る意外な方へ向き、感嘆しきり。
テーマは重く、決して愉快な話ではないが、これをミステリの要素を盛り込み、読み物として一級品に仕上げたところは素晴らしいと思う。