「ちゃんと伝える」

ちゃんと伝える スペシャル・エディション [DVD]

ちゃんと伝える スペシャル・エディション [DVD]

園子温監督作品のDVDをこつこつ観ていこうとしているんだが。
「ちゃんと伝える」は2009年公開作品ということで、「愛のむきだし」と「冷たい熱帯魚」の間に作られたことになる。
その過激な2作品に衝撃を受けて園監督に俄然注目するようになったのだが、この「ちゃんと伝える」はそういうエクストリームな表現を期待するような作品ではないということは、観る前からわかっていた。
それでも前半のうちは「いやいや、このままで終わるはずがない…」という変な期待感を持って緊張して観てしまった。
そのため、観終わってみると、あまりにも淡々としたホームドラマで、正直ちょっと拍子抜け。地味ながらも心にちょっとした何かを残す作品なので、決して悪い映画ではない。だけど入り込めなかった。
やっぱり主役のエグザイルの人…の「演技の出来なさ」にがっかりしちゃったのが大きかったなあ。
観終わった後に、TBSラジオライムスター・宇多丸のシネマハスラー」でこの作品について語っている回を聴いたのだが、
http://www.tbsradio.jp/utamaru/cinema/
そこで宇多さんが「この映画は主演のAKIRA佇まいを良しとするかどうかで評価が分かれる」と分析していたけれども、まさにその通り!
普通の青年が「がん」の告知を受けて戸惑うというストーリーだから、豊かな表情を見せられずに、ぼんやりしているくらいのほうが、むしろリアルだという意見は確かに一理ある。
しかし、それにしてはセリフが「普段そんな喋り方する若者いないよ!」と思ってしまうようなきっちり台本通りのお芝居口調だったので、「自然体に見せる芝居ができない」ことを露呈してしまっていた。確かに、大仰な演技は必要ないけれど、この映画はもう少し上手な役者さんの主演で観てみたかったと個人的には思った。
それでも、これを観たことによって、園監督作品にもいろんなタイプの映画があるんだということがわかり、その触れ幅の大きさに感心もし、他の作品もこれから観ていこうと思っているので、さらに楽しみになった。
個人的なお薦めポイントは、「愛のむきだし」と「冷たい熱帯魚」を観た後に、この映画を観ると楽しめるところ。あの作品に出演していた俳優陣が、まったく違う役柄で随所に顔を出すのが意外性もあって面白いよ。