「ザ・ファイター」


ギンレイホールの2本立て、「127時間」に続いて「ザ・ファイター」。
両方とも今年上半期に日本公開された作品だったので、観たくて逃したのを、そう時間を空けずにセカンドラン上映されてありがたいと思って観に来たのだったが、「なんでこの2本の組み合わせ?」というところには気が回らなかった。
そうか、両作品とも事実をベースにしているのか…。
「ザ・ファイター」は、プロボクサーのミッキー・ウォードとディッキー・エクルンドを描いた伝記に基づいている。
主演のマーク・ウォールバーグ自ら製作に関わったようだ。
調べてみたら、アイリッシュの血が入っているからなのか、実在のミッキーと風貌もよく似ている。本人が熱望した主演での映画化であることが伝わってくる、見事な役への入り込みっぷりだった。個人的にマーク・ウォールバーグは「ブギー・ナイツ」でのイメージが強くて、ハリウッドのトップスターという印象を持っていなかった。失礼ながら、ややB級?…という印象だったのだが、この作品を観てすっかり感服した。いい役者さんです(いい年齢の重ね方をしていけば、ケビン・ベーコンのようなあらゆる作品からお声がかかるような存在になりそう)。
しかし、そんなマーク・ウォールバーグの熱演を食ってしまった、クリスチャン・ベールの凄まじい役者魂
過去の栄光にすがりつくが現状は薬物中毒で弟に迷惑ばかりかけているダメ兄貴のディッキーを演じたクリスチャン・ベールは、15kg減量し、頭にハゲを作り、歯並びまで変えて撮影に臨んだという。廃人同然のヨレヨレの姿は、これがバットマンでの大金持ち紳士のブルース・ウェイン役と同一人物とはとても思えない。そりゃ、アカデミー助演男優賞獲るわ…。ちなみに、ミッキーとディッキーの母親役で、分からず屋で自分勝手ながらも息子を思う気持ちが強過ぎるというクセのある人物を演じたメリッサ・レオ助演女優賞を受賞したようだ。
とにかく、役者陣は皆大熱演で、ドラマにぐっと集中して観れた、いい映画。感動を押し付けるようなあざとい演出もなく、ラストもあっさり終わるところも好感が持てる。
ボクシング映画というだけで熱くさせられるのは間違いないのだが、肝心のファイトシーンも迫力があり、アクションのために身体を作り込んだマーク・ウォルバーグにも喝采を送りたい。拳の怪我で一度リングから遠ざかる時にデブデブになるというシーンもあり、そことのギャップを見比べると、クリスチャン・ベールに劣らない役作りへの努力がわかる。
エンドロールで、この映画のモデルとなった実在のミッキーとディッキーの現在の様子が映し出されるが、ふたりの関係性がこの映画で描かれた時からほとんど変わっていないことが窺える。さっきまで映画で観ていたふたりのその後の姿そのままなので、ここでも役者ふたりの演技が素晴らしかったことがわかるのだ。

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