「この世の先に」


ブラジル映画祭2011」開催期間中の、自分の仕事が休みの日、まとめ観するためユーロスペースへ。
最初に観た作品「この世の先に(原題:Nosso Lar)」は死後の世界を映像化した作品で、ブラジルで大ヒットしたらしい。
医師のアンドレが目覚めると、そこは死後の世界。飢えや寒さに苦しむ地獄のようなところで大勢の人々が争いあっている。苦しみの果てに心からの祈りを捧げ、神に救いを求めると、「私たちの家」と呼ばれる平穏な生活をおくれる秩序ある世界に連れてこられる。
ここでの天国のような死後の世界が、宗教的というよりSF的で、やたら具体的に映像化されていたのが面白かった。
家族に逢いに行きたければ、ボランティアで労働し徳を積み、その世界での各省庁の大臣に許可をもらわなければいけなかったり、霊界から家族にメッセージを送るのに、センター的な施設に行き、ノートパソコンのような端末を利用したりする。
その世界の住人たちは白装束で、疑似家族で共同生活を行い、労働に就かない時は、花の咲き乱れた池のほとりで静かに過ごし、ステージで披露される歌や詩の朗読などに耳を傾けている…。その映像はチープで、こんな井の頭公園のようなところが天国なのかと、苦笑してしまうが、死後の世界も現実世界の延長上にあり、節度を守って過ごせば心のやすらぎを得ることができるという、その提案自体はなかなか参考になった。
「死んだらどうなる?」という問いに過剰に不安を覚えておびえて暮らすくらいなら、死後は例えばこういう世界があり…とイメージしておくことは少しは救いになるのかもしれない。
ただこの作品はブラジルで最も著名な霊能力者シコ・シャビエルが発表したベストセラー小説を映画化したものであり、最後にこの主人公のアンドレが次にメッセージを伝えるのがシコ氏であることを示唆してこの作品は終わる。ご丁寧にも「シコ氏はその受け取ったメッセージを16冊の著書に記しており、多くの人に読まれている…」的なナレーションまで付け加えられている。
要はこれ、「丹波哲郎大霊界」だわな(笑)。
わかっちゃいたけど、あくまで作品と著書のプロモーションは切り離して欲しかった。
最後のナレーションで全部台無しになった感がある。
観てる最中はそこまで「トンデモ映画」だとは思わず、結構感心して観てしまったんだけどね(笑)。

にほんブログ村 映画ブログ 映画備忘録へ
にほんブログ村