「MPB 1967」


東京でのブラジル映画祭2011は金曜が最終日で、最終の回の上映作品が「MPB 1967(原題: Uma Noite em 67)」。
実はこれが一番観たかったのだが、上映スケジュールが自分の予定と合わず、観るのは無理かなとあきらめかけていた。ところがたまたま金曜に仕事が早く終わり、なんとか間に合いそうだったので、今週三たびユーロスペースへ。
やはりブラジルに関心を持つ人は圧倒的に音楽から入るのが多いようで、この最終上映はほぼ満席の盛況だった。
内容は1967年のテレビ局主導の音楽祭の当時の映像に、その時のことを振り返る関係者のインタビューを織り交ぜたドキュメンタリー。
この67年の音楽祭というのが、カエターノ・ヴェローゾジルベルト・ジルホベルト・カルロス、エドゥ・ロボ、セルジオ・リカルドらMPB(ブラジルポピュラーミュージック)を代表するアーティストが揃ってが出演した、まさに伝説の一夜。
自分にとってアイドルのような存在のカエターノ・ヴェローゾが、今の哲学者のような風貌で画面に現れて自身の音楽について語るのを観れるだけでも十分なのだが、当時の映像が超貴重。
デビュー間もないカエターノが「Alegria, Alegria」を歌う、トロピカリズモ前夜の初々しい姿や、ジルベルト・ジルがムタンチスの演奏をバックに「Domingo No Parque(日曜日の公園)」を歌うパフォーマンスも観ることができる。とにかく当時の会場にいた観客の熱気がものすごい。
音楽祭自体はテレビ局主導で作為的に演出されたショーになっていたのだが、この時の映像は、今になって振り返ると、政治的にも転換期にあったブラジルのエネルギーが爆発寸前で充満していた時の記録にもなっている。
まさにブラジル音楽がサンバ、ボサノヴァに留まらず、世界の様々な音楽と融合し、独自のポピュラー音楽を生み出そうとしていた瞬間に、今更ながら立ち会えたかのような追体験が出来た。

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