「サウダーヂ」


シネマハスラーの2011年間ランキングでも堂々の1位に選出された、富田克也監督「サウダーヂ」を観た。
ユーロスペース公開時に観逃したので、その1フロア下のオーディトリウム渋谷での再上映で。ナント国際映画祭グランプリ「金の気球賞」受賞後の凱旋上映ということもあって、平日なのにかなりの客数。ユーロスペースよりオーディトリウムの方が椅子がいいという評判だったが、確かにこちらの方が快適。2時間47分もある作品を観るにはありがたい。
公開前、本作の予告編を観た時にはあまり気乗りしてなかったのだが、今回は宇多丸氏の絶賛評論もラジオで聴いているし、何より菊地成孔先生までがラジオで絶賛し、HPのダイアリーでかなりの文字数を割いて推薦されているのを読んでいたので、これは観ないわけにはいかないと、かなり期待して観にきたのだった。
自主制作映画の地味な作品が、にわか映画好きの自分に果たしてハマるのかという不安はあったが、結果的にかなり面白く観れた。3時間弱が全然長く感じなかった。心配していた「絵面的な貧乏くささ」みたいなところで興ざめしてしまうこともなく、むしろシーンによってはかなりカッコいい映像が撮れていて、画面構成に工夫も感じられて、新鮮な驚きもあった。
事前に先入観を持って、ましてや他人の意見に安易に左右されたところもあるので、果たしてこれが過大評価なのかどうかはわからないが、楽しく観れさえすればいいわけで、この作品に関してはいろいろいい評判を聞いてから観て正解だったと思う。
とはいえ、一度観ただけではなかなかこの作品のどこがどう面白かったのか、説明するまで整理がつきにくく、とにかく意外と面白かった…としかいいようがない。
群像劇で登場人物が多く、それぞれのエピソードが印象的なので、ひとつひとつの場面を切り取っても、すごく印象的で面白いのだが、全体を通すとはっきりとしたストーリーや、エンディングでのわかりやすいカタルシスがあるわけではないので、「結局どういう話?」と尋ねられると返答に困るような作品。
扱われているテーマは重要で切実だし、伝えられるメッセージも個人にも社会にも投げかけられる強いものがあるのだが、さびれゆくいち地方都市を舞台にし、リアルな現実を生きる人々の日常的なエピソードの集合なので、スケールが大きいんだか小さいんだかもわからない。
地方都市の閉塞感、若者の絶望、隔絶された人々との軋轢…など、作中で描かれたテーマ的なものを言葉で説明しても、この作品の面白さを語ったことにはならない気がする。確かにそういうものについて深く考えさせるところはあるが、なぜそれが面白く観れたのかというのは、よくわからない。
とにかく、監督の意向で、DVD化もされないようなので、もう一度観てみようかなとも思っている。そんな気にさせられる作品であることは確か。大傑作という人が多いのは頷ける。
吉祥寺バウスシアターでは、爆音上映もあるらしいので、また違う映画体験が出来るかもしれないので、そこでもう一回観ようかな…。
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