「監督失格」
「サウダーヂ」に続いて、オーディトリウム渋谷で「監督失格」を観た。
2005年に亡くなった元AV女優・林由美香を、かつて恋人でもあった平野勝之監督が撮影したドキュメンタリー映画。庵野秀明氏がプロデューサーとして関わっている。
内容は事前に知っていたので、ある程度覚悟して観たが、やはりズシンと重いものが心に乗っかった。
人の死をこれほどリアルに感じる映像作品を初めて観たので、いざその場面にさしかかると、心臓がバクバクして言いようのない恐怖心に襲われた。過去の元気な時の林由美香の生々しい映像を観させられていただけに、いち観客としてでも大きな喪失感は覚えた。しかし安易に感情移入して泣けるような感じでもなかった。やはりただのドキュメンタリーとしてありのままを見せるのではなく、それまでに撮影された映像を、彼女の没後数年を経て、ようやくそこから立ち直ろうともがく平野監督が、努めて冷静に編集しようとし、客観的に観れる作品として成立させようとしたことが感じられたからだったのだろう。
テロップでのナレーションを挟みながら、状況の理解を手助けしているのが、まさに庵野手法なのだろうか。そのお陰で、見るのがツライだけ…とまではならなかった。
偶然、死の現場に立ち会うことになってしまった平野監督だが、やはりこの作品は作られるべきして作られた映画だと思うし、また故人が監督に作らせてあげた映画だとも思える。
人がいろんなものを犠牲にしてまで表現に向かうというのはどういうことなんだろう、と考えると、どうしてもせつない。
観る前も気が重かったし、観終わってもさらに気が重い。しかし、観てよかった…。
- 作者: 直井卓俊,林田義行,柳下毅一郎
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