「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」

菊地成孔先生もお薦めしていた(11月29日のDIARYの中で)「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」が、渋谷のUPLINK Xで上映されていたので観て来た。

自分はクラシック音楽とかほとんど何も知らないに等しいので、グレン・グールドという人のことを全く知らず、映画が始まってしばらくしても、これは伝記映画で、グレン・グールド役を、誰か役者さんが演じているものだと思い込んでいた。
…これドキュメンタリーなんだ。
ずいぶん男前なピアニストもいたもんだね。それはアイドル視されるわ。
彼の演奏の素晴らしさとかを聴き分ける耳も持たないわけだが、前半はモノクロの映像だし、バッハとかのピアノ演奏が続くし、おまけにUPLINKでリクライニングのいいソファを選んでしまったので(笑)、ほとんどうとうとしていた。それはそれでいい感じ。
後半、カラーになってから、グレン・グールドがコンサート活動から引退して、ラジオ番組の制作や、当時の最新技術を駆使したレコーディングに没頭し始めるあたりから、しっかり観たが、ここからがこのドキュメンタリーの面白いところだったと思う。
おそらく、若くしてデビューした美青年のピアニストで、早々と半引退生活に入った彼は、メディアにもてはやされていた時期こそが活動の全盛期で、後はゆっくりと忘れられていった人だったのだろうと想像する。
しかし家族を持ち、心身ともに充実した中年期から、やがて不安から神経症的になり体調を崩し、家庭もうまくいかなくなっていく晩年にかけてに、濃密なドラマが詰まっているし、彼の本質が浮かび上がってくる。
やっぱりすごく繊細な人だし、生まれながらの芸術家だったように思う。周囲に理解されずに苦しんだことも多かったようだが、残された家族や友人の温かいコメントを聞いて、すごく愛されていたこともわかり、幸せな人生だったのではないかと思って、胸が熱くなった。
バッハの平均律クラヴィーア曲集を独自の解釈で弾いた演奏の音源も有名のようで、ちょうど「憂鬱と官能を教えた学校」を読み始めたら、クラヴィーア曲集のことが出て来たので、その辺から興味を持って聴いていこうかなと思っている。

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