「エリック・ドルフィーの瘤。」

第55回の「粋な夜電波」はジャズバー〈菊〉再開店!
選曲も素晴らしかったですし、技術解説もとても興味深かったです。この番組がきっかけでジャズを聞き出してハマっている方というのは(自分もそうですが)、相当数いらっしゃると思います。
今CDの盤がほとんど売れないという悲惨な状況にもあるようですが、中古盤屋に行くと明らかにジャズのコーナーが拡充されてますもんね。
生放送中にラジオよりYouTubeを薦めるという、自由な菊地先生の(笑)、エリック・ドルフィーについて語られた部分がとても面白かったので、文字起こししてみました。

エリック・ドルフィー

エリック・ドルフィー

え〜…というわけでですね。まあ…ゴールデン・ウイーク…ま、さっきも言ったように、ワタシ、全然仕事なかったんで(笑)…G.W.は…ま、YouTube三昧ですね。…いきなりTube(ツベ)の話かよって話なんですけれども。
あの〜…最近ね、ま、「この番組を聞いて…」なんていう有り難いというか恐れ多いというか、お声も含めまして…、あの…「最近ジャズが好きになって…」、そいでよく出てくる質問として、「何から聞いていいかわからないんで、入門盤ならびに名盤を、菊地さんが教えて下さい」みたいな話を、いろんなとこからこう…いろんな形でね、ある時はメールで、ある時は路上で、ある時は空中で…というような感じでですね(笑)。空中…なんだかよくわかりませんけども、あの…いただいたりするんですけども。
まあ…なんか有識者に10枚くらい選んでもらって、CD屋行くっていう時代じゃないすよ、もう。CD屋も弱いですから。
あの…これはもう圧倒的にYouTubeですね。YouTube称揚してて大丈夫なのか?っていう感じですけど、YouTubeだと思いますよ(笑)。ワタシ、ほぼず〜っとYouTubeのジャズ・チャンネル観て、夜になったら呑みに行って、帰って来たらまたYouTubeのジャズ…、ジャズ・チャンネルって…チャンネルなんか無いんですけど。YouTubeはねえ…あの、功罪いろいろありますし、その…合法性非合法性とかいろいろ問題も、もちろん含まれているんですけども。
…ま、少なくとも…他のこと知りませんよ、ワタシ。…変な面白い顔の猫とか全く興味ないんで(笑)、あの…不思議動物とかですね、あとなんか外人の小さな…ちっちゃい子がなんか歌ってますみたいなのは全く興味ない、ほんとに…観たこともないんですけど。とにかく履歴全部ジャズで、モダン・ジャズで埋まってますね。
今、モダン・ジャズ入門ツールっつったら、魚民に行って(笑)…あの、ずっと呑んでると、魚民はずっとBGMがモダン・ジャズなので、それで勉強できるってのと、あとはYouTube…この二大ツールが、…魚民かパソコンですので、…いい時代になったとね…、驚愕の…なんてんですか?…今まで…そうですね…インターネットが生まれる以前の社会…「ジャズ社会」と言ってもいいと思いますけども…。そこでは全く話題にならなかった、あるいはその…光すら当たらなかったトピックに光が当たってますね、YouTube
例えばこの後ですね、曲としてはですね、まあ…これが来るかな?って予想されてる方も多いと思うんですよね。え〜、ゴールデンウイークの最終日…G.W.…ですよね。なので、エリック・ドルフィーの「G.W.」をかけるんじゃないか?っていう…予想屋さんが、バンバンバンバン「G.W.」にベットしてる時だと思うんですけど、…まあ、その予想は当たりでですね。「Outward Bound」の方の「G.W.」…あ、今日は、ジャズ・バーなんで、話すネタから何から全部ジャズネタなんで、「全然わかりません!」っていう方は早退して下さい(笑)。あの…多分、何にもわかんない…っていう、とうとう1行もわからなかったって方も出てくると思うんですけどね、それ気にせずどんどん喋る回…というふうにしたいと思いますが。
「G.W.」の…「Outward Bound」盤の「G.W.」を今から聴くわけですが、まあ…それよりも何よりもですね、…ま、これ数年前…ここ数年ではっきり、YouTubeによってはっきりしたことなんですけど、これをお聞きのジャズマニアの方で、今からするワタシの話を、初めて聞くという方ね…、かなり勉強不足だと思いますけどね。え〜…何の勉強不足かっていうと、YouTubeの勉強不足だと思うんですけども(笑)。…あの〜、すぐチェックして下さい。
え〜…最初にアップされたのが何時かとかね、ワタシ、そんなにそこ詳しく見ないんですけど、多分、2〜3年…だと思うんですよね。エリック・ドルフィー(こぶ)の話です、有名な。
エリック・ドルフィーの瘤は、え〜…ジャズマニアの間では、「アドリブ脳」が詰まってると言われてて(笑)、あの中に別のアドリブするためだけの脳が入ってる…、大脳、小脳、アドリブ脳っつった感じでですね(笑)。エリック・ドルフィーのあの瘤の中にあるのは、あの不思議な宇宙的なソロをとるための脳なのだ…という説がこれ有力ですね。ジャズマニアの間だけですよ、そんなバカなこと言うのは。
で、これがですね、…そこは有名です。YouTubeでだけ見れる情報です。64年の…ジャズファンの方はご存知の通り、エリック・ドルフィーは1964年の6月29日にベルリンで客死してますけども、旅行中…楽旅中に亡くなってますが、糖尿病ですけれども。…え〜、64年のですね、4月12日のノルウェーオスロで、チャールズ・ミンガスのグループで演奏している映像がまず上がってます。これは素晴らしいです! これの「So Long Eric」だけでもいいので、すぐ今聴いて!…番組聴くのも中断していいんでYouTubeに走って!…っていうぐらい映像も、演奏も素晴らしい。客席が…ちょっとカメラ客席なめますけど、客席も素晴らしいです。客席が素晴らしいってのがやっぱり…のを知らしめたのが、YouTubeの功績だと思うんですけども。

え〜、そして、4月…同じような…なんてんですか…関連画像で、同じ64年、同じ4月の、4月19日にですね、ベルギーで演奏してる映像がアップされてます。メンバーはどちらも…メンバーっていうか、バンドはどちらも同じチャーリー・ミンガスのグループで、4月12日のノルウェーオスロはですね、Johnny Coles…これ、渋いですねえ。トランペット…頭丸刈り丸刈りっつうか、つるっ禿げっつうかね。え〜…もうジャズ界の名脇役、超マニアックなトランぺッターですけど、ジョニー・コレス。そして、後にソウル・ジャズなんかやるClifford Jordan。お馴染みJaki Byard、そしてもう…なんつったらいいんですか…まあ、チャールズ・ミンガス・グループの「殺し屋」っていいますかね、Dannie Richmondがドラム。そしてエリック・ドルフィーなんですけども。
これがベルギー、4月19日のベルギーになると、Johnny Colesが違う仕事があったんでしょうね、いなくて、Jaki Byardエリック・ドルフィーの2ホーンなんですよ。…これを見比べていただきたいです。4月12日と4月19日ですから、1週間ですね。
それでですね、まあ驚愕の事実がありまして。4月19日のベルギー版を見ると、ドルフィー額の瘤が無くなってるんですよね。…そいでその瘤のあたりに、こう…あれは怪我もしくは手術の跡だと思うんですけど、こう…瘤の位置に、数センチの傷があって、そいで瘤がすっきり無くなってんですよ。切ったか、転んで取れちゃったか、喧嘩したかなんだかわかんないんですけども(笑)。これは有名なシモスコ&テッパーマンが書いたドルフィーの伝記にも出てませんし。ワタシ、このことに言及している…まあ、今言った2つの動画に日本語のコメントまったく無いんで、…てか、ワタシ、コメント欄の読み方も書き方もよくわかんないんで、ただ、開けたらそのコメント欄を読むだけなんですけど。誰か…英語のコメントがブワ〜ッと、英語、フランス語、ドイツ語のコメントがバーッと載ってるんで、誰かがそのこと言及してるだろうと思って、コメント全部繰ったんですよ。でも誰も指摘してませんでした。…気になんないの?…と思って(笑)。気になるでしょ!と思うんですよ。

4月12日から19日って、あいだ1週間すよ。12日版には普通にエリック・ドルフィー、瘤付いてて、19日版には無いんですよ。そして、29日は、亡くなってるんですよね。…あの、すごい…エリック・ドルフィーの不思議として、即誰かが言ってそうなことなんですけども、YouTubeのコメント欄には何も言及がありませんでした。…という、非常にマニアックな(笑)報告から始まってしまいましたが。
はい。ではそういうわけで、エリック・ドルフィーの「G.W.」、ゴールデン・ウイークにかけまして、聞いてみましょう。
(曲)

Outward Bound: Rudy Van Gelder Remasters

Outward Bound: Rudy Van Gelder Remasters

くわ〜っ…カッコいい!…何考えてんだ!って…まあ、アドリブ脳で考えてんでしょうけどね。え〜、60年、ワタシが生まれる前の演奏です。「Outward Bound」というタイトルも、もうメチャメチャカッコいいですけどね。エリック・ドルフィーのゴールデン・ウイークでした。

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