「ファミリー・ツリー」


ファミリー・ツリー」をレイトショーで観た。
主演のジョージ・クルーニーゴールデン・グローブ賞で主演男優賞を受賞し、作品もアカデミー賞脚色賞を受賞するなど、高い評価を受けている。
原題は「The Descendants」で「子孫たち」という意味。
自分も以前「キラ☆キラ」で町山智浩氏が解説されていたのを聞いて、日本公開を楽しみにしていた。
ジョージ・クルーニー演じるマット・キングはオアフ島で弁護士をしているが、先祖から代々受け継ぐ広大な土地の管理もしており、その土地の売却の準備をしている。相続した財産で贅沢することを良しとせず、本業にいそしむ日々で、忙しさにかまけて家庭のことをおろそかにしがちだった。そんな中、妻のエリザベスが水上スキー中に事故に遭い昏睡状態になってしまう。医者から回復の見込みがないと告げられ、本人も事前に尊厳死を望んでいたことから、妻の生命維持装置を外すかどうかの選択を迫られる。妻が回復したらもう一度家庭を大事にしてやり直そうと決意していたマットだったが、そこに、連れ戻した不良娘、長女のアレクサンドラから、事故に遭う前に妻のエリザベスは他の男との浮気に夢中になっていて、知らぬは旦那ばかりなりだったことを告げられてショックを受ける。そしてマットは幼い次女・スコッティと長女のふたりの娘を連れ、さらになぜか長女のボーイフレンドでいかにも頭の悪そうなシドを加えた4人で、妻の不倫相手を探す珍道中に出ることになるのだった。
…というあらすじ。町山氏も解説していた通り、この人の生死と自分の人生の大きな岐路に立つヘヴィな状況が、なぜかコメディとして描かれているのがこの作品のユニークなところ。
監督のアレクサンダー・ペイン、他の作品は未見だが、こういうちょっとブラックなコメディの名手らしく、悲劇的な状況をユーモラスに、愛のあるトーンで描いている。
コメディといっても取り立てて大げさなギャグがあるとかいうわけではなく、一生懸命な人間の切なさの中におかしみを見いだしていて、それがヘヴィな状況を乗り越える時の救いになるというところを、うまく拾い上げている。
作品の舞台がハワイというのが、またシリアスな話を和らげる大きな要素になっている。全編ハワイアン音楽が、ひっきりなしに流れるのは個人的にはちょっとノイズになったが、青い空と海、美しい自然をバックに車を走らせる時の、ゆったりしたハワイアンミュージックが、主人公たちの内面とのギャップもあって、すごく癒しにもなっている。
主人公を演じたジョージ・クルーニーも、他の作品で見せるダンディな姿からはかけ離れた、娘の扱いにオロオロし、妻の浮気を知って情けなくうろたえる、冴えない中年男をすごく自然に体現していた。大げさな芝居はせず、表情から複雑な心情が読み取れる演技にとても好感が持てた。
困難を乗り越えて、バラバラだった家族の絆が強まる…というと、なんか泣かせにかかるような映画に思われそうだが、最後まで話は淡々と進み、観終わった後にじんわりと心が熱くなるという良作に仕上がっている。
自分は好きだなあ、こういう映画。
惜しむらくは、平日の夜のショッピングモール内のスクリーンということで、客が10人にも満たない状態での観賞だったため、コメディシーンの時に周りに笑う人もおらず、いまいちこの作品をコメディ映画として楽しむ状況になかったことか。アメリカだと多分場内爆笑のシーンも多くあっただろうにね。

ファミリー・ツリー オリジナル・サウンドトラック

ファミリー・ツリー オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ,ギャビー・パヒヌイ,サニー・チリングワース,レナ・マシャード,ソル・フーピズ・ノヴェルティ・トリオ,デニス・カマカヒ,ケオラ・ビーマー,オジー・コタニ,チャールズ・マイケル・ブロットマン,マカナ,ケオラ・ビーマー with ジョージ・ウィンストン
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