「フリー・ジャズの聴き方〜相倉×菊地対談」

新書で入門 ジャズの歴史 (新潮新書)

新書で入門 ジャズの歴史 (新潮新書)

渋谷のLast Waltz by shiosaiで行なわれたトークイベント、『相倉久人の“極私的・戦後日本ジャズ史”連続講座 〜いかにジャズを愛し、かつ問題視したか〜(全4回)』<第四夜>(ゲスト:菊地成孔)に行ってきました。
相倉先生のことはあまり存じ上げていなかったのですが、山下洋輔氏が師と仰いでおられる著名なジャズ評論家であるということで、菊地先生とは師匠と孫弟子のような関係にあたるともいえるのだとか。
当日、仕事が思ったより長引いてしまい、急いで駆けつけた時にはちょうど前半終了前、休憩を挿んで後半の1時間くらいしか聞くことができなかったのですが、それでも十分面白く刺激的な話が聞けて楽しかったです。
それにしても、この1週間で授業も含めると3度も菊地先生の話を生で聴ける機会を持てて、あまり頻繁だとそのうちありがたみがなくなってくるんじゃないか…と思わないでもないですが、しかし何時何処で何度聴いても面白いんですよねえ。
ジャズの名司会者でもあった相倉先生を敬意を込めて「MC相倉」とも呼ぶ菊地先生は、それに関連してか「SIMI LAB」のキャップをかぶってターンテーブルの前に座ってました。
この日のテーマは「21世紀のジャズを考える」ということになっていたのですが、前半は主にジョン・ケージなどの現代音楽の話が主だったようで。しかし話が山下洋輔トリオがヨーロッパツアーで大ブレイクした時の話になると、ドイツ、特に北欧には現代・前衛音楽が受け入れられる下地がすでにあり、フリー・ジャズでも特に過激な山下トリオの音楽がウケやすい空気が整っていたのだと、話がきちんと繋がって、すごく納得させられました。
そしてそれまでアメリカ一辺倒だった日本のジャズ界の流れを大きく変えたのだとも。このあたりは先日「夜電波」に山下洋輔氏がゲスト出演された時の話とも繋がってきて、自分にもわかりやすかったです。
そして話がフリーフォームドのジャズの聴き方の話になり、特に難解だと思われている前衛的なフリー・ジャズは、ただデタラメに演奏しているようにしか聞こえない(…自分なんかまさにそのようにしか感じられていない)かもしれないが、ちゃんと聴き方はあるのだ、と。
その一例として、相倉先生が山下トリオのアルバム「キアズマ」に書かれたライナーノーツを挙げられて、その中で「山下洋輔トリオは立って聴け」と主張されたという話も出ました。例えばハイハットに合わせて足を踏み、ピアノに合わせて手先を動かし、サックスに合わせて首を振っていると、次第にバラバラの要素が自分の身体の中で統合されてくる。それをまとめあげるのは「腰」なのだ、と。
それに菊地先生が、日本のジャズ喫茶文化が、踊らずに座って聴くことを半ば強要したせいで、前頭葉に意識が集中し過ぎて、バラバラのものを統合していく身体的快感が本来優先されるべきなのに抑圧されることになってしまったという解説も加えて、すごく腑に落ちた感じがしました。
この対談も含めて、四夜にわたって行なわれたこのトークイベントの内容は、書籍化されるということで楽しみです。

キアズマ

キアズマ

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