「ジャズ小説」

ジャズ小説 (文春文庫)

ジャズ小説 (文春文庫)

先日の吾妻ひでお先生と菊地先生の対談の中でも名前が挙がった筒井康隆先生。
筒井作品の吾妻作品への影響の大きさも窺えたし、何より筒井氏本人の山下洋輔氏やタモリ氏ら、日本のジャズメン達との交流が、様々な方面に刺激を与え、それが今も脈々と受け継がれているということもわかった。
筒井作品は、学生の頃に「七瀬シリーズ」を読んでいたり、その後もナンセンス小説の短編や「文学部唯野教授」なども読んでいる。
しかしなにしろ作品数が膨大なのと、内容も多岐にわたるので、どれを氏の代表作とするかも読む人によって異なるだろうし、小説だけでなく戯曲やエッセイや評論、本人の俳優活動なども含めて、その活動全般、筒井氏本人の存在そのものの影響力が大き過ぎる。どこから手を付けていったらいいものか…。
と思っている時に、ブックオフで「ジャズ小説」という文庫本を見つけたので、買って読んでみた。
ジャズをモチーフにした短編集で、ショートショート的なかなり短いものも含まれていて読みやすい。ブラックなユーモアの利いたもの、SF的な要素のあるものなど、筒井世界を垣間みるのにちょうどいい一冊だった。文庫版の解説は山下洋輔氏が書いている。
久しぶりに筒井康隆氏の小説を読んだわけだが、あらためて思ったのは、御本人の存在感に比べると拍子抜けするほど、文体に癖がなくて、読みやすいということ。だからこそ様々なジャンルを書き分けられるのだともいえる。
自分の中では比較的近年にハマった作家、町田康氏や舞城王太郎氏などは極端かもしれないが、最近の作家は個性を出そうとするあまり、奇抜な文体を売りにしているような人が多い。それはそれで面白いのだが、平易な言葉で誰にでもわかりやすく、しかし書いている内容はちょっとぶっ飛んでいるという、筒井氏のスタイルが逆に新鮮に感じられた。
多作ではあるけども、読みやすいので、筒井作品をいろいろ読んでいこうと思っている。まあ、おいおい。
家(紙ジャケット仕様)

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