「サブカル・スーパースター鬱伝」

サブカル・スーパースター鬱伝

サブカル・スーパースター鬱伝

吉田豪さんの数ある著書の中で、最速で増刷がかかったという話題の新刊「サブカル・スーパースター鬱伝」を購入&ほぼ読了。
小島慶子のキラ☆キラ」の木曜のコラムコーナーは楽しみにして欠かさず聴いていたし、「豪さんのポッド」なども聴いていたので、耳馴染みはあったが、なにげに著書を買うのは初めて。雑誌媒体とかで「吉田豪インタビュー」と見つけるとすぐ読んだりはしていたけど。
読みたいけれども、一度通して読んだら「ああ、面白かった」で終わってしまう本、本棚に置いておいていずれ読み返したくなるかもしれない本ではないもの…は、どうしても貧乏性でなかなか買うまでにはいたらなかったりして。
ただ今回は名だたるサブカル系著名人のインタビュイーの面々の中に、菊地成孔先生も入っていると知って、迷わず購入。

吉田豪さんと菊地先生…?…接点ありそうで意外になさそうだと思い込んでいて、この組み合わせが実現していたことに今さらながら驚いた。
内容は「サブカル系の人は40代にさしかかると鬱状態に陥ることが多い」という持論を確かめる意味でも、実際に鬱を経験したことのある人々に話を聞いてみるというもの。
菊地先生が不安神経症を発症して、精神分析治療によって治癒されたというのは、ご本人も公言されていて有名な話ですが、詳しいところまでは知らなかったので、そこへの興味もあって、この本を買うと真っ先に菊地先生の章から読み始めました。
菊地先生とかは、わりと客観的に当時の状況を把握されていて、吉田豪さんだからこそ聞き出せた秘話的なエピソードではなかったようですが、この本では他にもリリー・フランキー氏、みうらじゅん大先生、故・川勝正幸氏、杉作J太郎氏、大槻ケンヂ氏など、興味深い方々ばかり取り上げられていて、どれも非常に面白かったです。鬱の話自体は語り手本人にとってはヘヴィな話だとは思いますが、読み物としてはやはり面白い。
聞き手に徹して、基本的に語り手を立てる、聞き手としての吉田豪さんの距離の取り方はやはり絶妙だと感じました。これみよがしなツッコミを入れたり、わざと相手を挑発するようなことがなくて、基本的に敬意を払っているのが伝わるというか…。
ま、この本では吉田豪さんと特に縁のある方々が多いから、日頃の信頼関係があってこそ出来た話であり、それをまとめて出版できたことが、実はありそうで意外になかった貴重な記録としても成立している本が出来上がったということで、これが売れているのは納得できるところだと思います。
個人的に唐沢俊一氏の章だけはちょっと抵抗があって読み飛ばし(なので、ほぼ読了)たのですが、読み始めてからあまりの面白さに一気に読み終えるまでの時間は短かった。
そして「ああ、面白かった」で終わって、すぐに古本屋に売ってしまえるような本だったかというと…、実際にアラフォーの自分にとっては、身につまされるようなところもあり、いざ自分がそういう状態に陥った時のことを考えると、対処法のヒントがたくさん詰まっている一冊でもあるので、やはり本棚にきちんと置いておきたいと思いましたね。