「クラウド アトラス」


仕事帰りにレイトショーで何か観ようと思ってたら、「クラウド アトラス」を自宅の近所のシネコンで21時という遅い時間から上映するのを知った。
どういう映画なのかほとんど予備知識はなかったのだが、ウォシャウスキー兄弟改め姉弟(笑)監督の大作だということで、面白そうだとは思っていた。
3時間弱の長い映画なのでちょっと躊躇したが、上映終了が12時になっても歩いて帰宅できるし、翌日が仕事休みというタイミングだったので、この見応えのある作品にチャレンジした。
観終わった感想としては、「面白かった!…けど一度観たぐらいではまったく理解が追いつかない!」。
なにしろ時代も場所もバラバラの6つの話が同時進行するのだから。
観終わった後で検索してみて、「あ、この話とこの話と…で、あの話のあれとあれが繋がってて…」と後から理解できた部分も多いし、しかもこの作品、主な登場人物を演じるトム・ハンクスハル・ベリーをはじめとした主演俳優が、6つのストーリーそれぞれの随所に別の役で現れる。特殊メイクを施し、性別も年齢も全く違う役として出てくるので、さらにややこしいことこの上ない。それも観終わった後で調べて、「ああ、あの時のトム・ハンクスの役はこういう設定だったのか…」「あ、あの役もこの役者さんだったのか…」とわかったのだった。
だからといって、この作品が観ている間はなにがなんだかさっぱりわからなくて難解な映画かというと、そんなことはない。
オムニバスではなく、ほんとに同時進行するから…それもある程度区切りのいいところまでひとつのストーリーを進めてから切り替わるのではなく、数分ごとに頻繁に6つの話がランダムに切り替わるので、確かに観ている最中、「これほんとに収拾つくのかよ!」と、ちょっとイライラしながら観ていた時間もあった。
だが次第にいろんな出来事や人物の関連性が掴めてきて、最終的にはかなりわかりやすい結末に収まることになるし、そこから浮かび上がるメッセージもすごく腑に落ちるようにできている。
スケールの大きな作品だが、輪廻転生の思想が自然に入っているわれわれ日本人は特に理解しやすいのではないだろうか。(手塚治虫の「火の鳥」との類似を指摘する声が多いのも頷ける)
いろんな繋がりがよく出来てる、すごい脚本だな〜と感心するだけでなく、アクションやサスペンスも、これでもかと云わんばかりのてんこ盛りで、もともとひとつひとつが1本の映画にできるような題材だから、中身の充実ぶりが×6倍でもおかしくないわけで、とにかく見所も満載、3時間まったく退屈することがなかった。
ちょっと盛り過ぎで、1本の映画としての完成度としてはどうかというと、個人的にすごく好きな作品にはならないかもしれない。でも最新技術を駆使して、「今の映画はここまでやれるんだ」というのを、リアルタイムで体験できたことに満足。
(ネタバレになりますが)
この複雑で壮大な物語、個人的にはどう落としどころをつけたかというと、「あ、これは『ペ・ドゥナが神になる話』なのね。」というところに落ち着いた。ペ・ドゥナファン必見(笑)。

クラウド・アトラス 下

クラウド・アトラス 下

クラウド・アトラス 上

クラウド・アトラス 上