「ソウルBAR〈菊〉、当たり前のように開店。」

「粋な夜電波」第104回放送は、久々開店のソウルBAR〈菊〉。
リアルタイムでは日比谷の野音で最高のライブを行いながら、ラジオの前の方にも最高のグルーヴを提供する、菊地先生のまさに粋なはからい。
すっかり恒例となった、ソウルBARの店長とバーテン・ベーアーのコミカルなやりとりによるオープニング部分を文字起こししてみました。

黙示録(紙ジャケット仕様)

黙示録(紙ジャケット仕様)

この番組からの提案も虚しく、コフィー・アナン国連事務総長は、戦場にアース,ウインド&ファイアーのレコードを持って行かずに特殊職を退き、つまりシリアを完全に諦めてしまった。
DJとして言わせてもらうが、コフィー…君はアフリカの4部族を含む8か国語を話す、スマートでハンサムな男だが、君の部屋に置いてある12年前のノーベル平和賞は、即刻床に叩き付けて粉々にすべきだ。
それが出来ないと言うなら、一刻も早く、空爆自爆テロの音量をはるかに超える、つまり文字通り爆音が出るサウンドシステムをMITに開発させ、敵対する両国に密売してもらいたい。「これさえあれば、相手の国に勝る音が出る」と言って。
ソウルミュージックの使命は、デートの時に偶然流れているセクシーなBGMだけじゃない。
あらゆる闇に光を当て、人生を一瞬ですっかり変えてしまうことができる。僕はそうやって変わった。
今夜のこの放送を、戦前としか思えない異様なムードに沸くこの国の週末を、ラジオの前で過ごしているすべての人々に。
結論を先に言おう。驚く事に、だ。
愛に飢える必要も、愛を諦める必要も、愛を恥ずべき必要も、愛を憎む必要も、あなたには最初から、まったく無い。

ベーアー YO-YO-YO、YO-YO-YO、YO-YO-YO-YO-YO-YO-YOって、三三七拍子、ドユコトー?…って懐かしいですね、店長!
店長!…あれ?…店長〜!
店長 待たせたな!
ベーアー おっ!店長。絶頂期のコント赤信号リスペクトな登場ですね。渡辺正行さんってジョン・トラボルタに労力士(ロレックス)だし。かっこいい〜! 牛乳イッキ飲み!
店長 牛乳じゃなくてコーラだ。ところで、当店のバーテンにしてキャバクラ博士のベーアー君、2013年春夏の君の愛の調子はどうかね?
ベーアー それが店長…お恥ずかしいことに、超かわいいメンヘルちゃんにフラれボコられ、ハートはいつもこぶだらけであります。
店長 それがこの店に勤続している、愛に選ばれし、そしてバイト募集要項にも選ばれし者の言葉か?
ベーアー 耳が激痛であります!
店長 そんなことだから、楽天ソフトバンクから要らないお知らせメールばっかりきて、「あの娘からかな?」ってぬか喜び一万回になるんだよ。愛の合言葉、略して愛・愛・アイフルソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー
ベーアー そんな全然略してないうえに、山田エイミー・ワインハウスみたいな90年代風の洒落たことを、昨今のキャバクラで言っても全然通じやしませんよ〜。
店長 …バカヤロー!!(バン!)
ベーアー 痛い!…こぶが増えた〜。只今お聞きのオープニング曲はEarth,Wind & Fire、79年のアップリフティング・ナンバー「Can't Let Go」。直訳すると「一緒に行けないよ」。あの娘とホテルに行きたかったのに!
店長 今のは愛の鞭。すなわち、愛について誰もが無知であるという摂理を、ちょっとした暴力によって表現してみました。
ベーアー さすが店長! シャクティーパットで恋の痛手が治りました。もうホテルなんか行きたがらない!自分の部屋、もしくは野原で愛し合うであります!
店長 選曲が困難で、選挙区に誰も居なかろうと、選曲はDJがする。それが千曲をマウントする、ソウルBARという夜の教会のデフォルトちゃんだ〜。
ベーアー …なんかカッコ良く頭で韻を踏んでますけど、それって当たり前の話じゃないですか〜?
店長 そう、当たり前だ。当たり前に極上のソウルミュージックを、当たり前に最高のスキルで流し続ける。そんな当たり前の、AM界唯一のソウルBARが、今宵当たり前のように開店。東京は夜の七時。そして、停戦解除のソウルも夜の七時。ウイスキー・ミルクとブランデー・7UPの準備はいいかね? 当たり前のベーアー君。
ベーアー 1トンずつは当たり前〜。
店長 オーケー、それじゃ開店だ。入店は心に傷を持った順に、うるさがたのソウルマニアから、音楽もダンスも愛せないインポテンツまで、まとめて全員ウェルカムだ〜。
ベーアー 必死になんとか生きてる社会人共! 今夜は否が応でも愛し合わせてやる!
菊地 というわけで、東京港区は赤坂TBS第4スタジオからお送りしております、「菊地成孔の粋な夜電波」。今夜はシーズン3より実に一年ぶりの開店、ソウルBAR〈菊〉。店長はワタクシ、ジャズの国から来た混血の魔法使い菊地成孔。そしてバーテンは、愛の伝導師万年見習い・ベーアーでお届けしております。
電波は954kHz、そしてご来店の皆様におかれましては、手製のミラーボールとお気に入りのラブカクテルをご用意のうえ、住宅事情の許す限り、ご自宅のサウンドシステムの音量を最大にしてお楽しみ下さい。それでは参りましょう。
ベーアー 参りまショー。
店長 …オマエ、最近「ドラえもん」入ってないか?
ベーアー ノーノー…I Can't Let Go!
店長 …くらわすぜ。