「ナルちゃんと大友っち。」

「粋な夜電波」第133回放送は、大友良英さんをゲストに迎えて放談。
古くからの付き合いで「ナルちゃん」「大友っち」と呼び合う仲のお二人が、楽しそうに思い出話を語った貴重な回。
予告されていた「薄毛の話」は来週に持ち越しになりましたが(笑)、単なる懐かし話に留まらず、聞いていて勇気づけられる、すごくいいお話でした。
その放談の一部を文字起こししてみました。

plays standards

plays standards

菊地 まあ…何て言うの?…まずとりあえずは最初のフックとして、若い人に言いたいことはさ…。
大友 うん。
菊地 「俺なんかどうせあと4年で給料が幾らで、結婚もできないし、なんとかかんとか…。」って、こうやって将来予想を立てる人いるじゃん?
大友 はいはい。うーん…いるのかなあ?そんな人
菊地 (笑)。
大友 え?…ゴメン。
菊地 「いるのかなあ?」って(笑)。
大友 トンチンカンな事言った?
菊地 アナタ、ツイッターやってるでしょ。年甲斐もなく。
大友 やってる、やってる。
菊地 だったら知ってるでしょ。そういう「どうせ俺の将来なんて…。」というふうな考え方をしてる若い人が沢山いることを、ご存知ないですか?
大友 やってるけど読んでないもん、あんまり。ゴメン(笑)。
菊地 (笑)。あ、あれってそういうことが出来んの?
大友 うん。読んでない、俺、全然。
菊地 書くだけ?
大友 うん、書いてるだけ。
菊地 書いてるだけなんだ。
大友 うん、うん。自分の宣伝用ツールっていうか。
菊地 なるほど。
大友 うんうん。
菊地 なんかね、そういう「将来を見切る症候群」があるんですよ。
大友 それって何?…「俺なんかもう歳だし…。」こと言う二十歳の子がいるみたいな…ちょっと違う?
菊地 まあ…相変わらず…ちょっとズレてますねえ(笑)。
大友 もうこの二十年間、ナルちゃんと、この会話だよね、ずっと。
菊地 (笑)。
大友 流行りの事になると、急にオレが…
菊地 ま、流行りっていうかさ、…まあ…流行りかなぁ…。
大友 うん。
菊地 なんかね、とにかく女性でも男性でも、「どうせあと何年で30までにこうしてこうして…」って、すごい考えんの、みんな。
大友 うん。
菊地 明日なんてさあ…どうなるかわかんないじゃん!レコード大賞穫ってるわけだから!(笑)。
大友 ちゅうかさ、オレもナルちゃんもそうよ。そんなこと考えて生きてこないよね?
菊地 一回もないよ。オレもう…極端なこと言ったら、明日死ぬかもしれないもんね。
大友 うん。いや、オレ…毎日起きて「今日のスケジュールなんだっけ?」って思いながら生きてる程度だから。
菊地 いや、ほんとだよね。
大友 うんうん。そんな将来の事なんか考えてねえよ。
菊地 だって…まず明日の事考えないところからさ、「ジャイアント・ステップス」でもってですよ…
大友 (笑)。
菊地 知り合ったの、何年だっけ?…だって…
大友 ただ知り合ったぐらいだったら、80年代…の終わりぐらい?
菊地 80年代の終わりぐらいにPIT INNで…
大友 うん、お互いに朝とか昼と出てね…
菊地 そっちが昼の部、こっちが夜とか、あるいは逆とかいって…
大友 うんうん。
菊地 バンドチェンジの時にね、なんか…
大友 うん。
菊地 その頃はもう全然…ガリガリでね。
大友 ガリガリでもないけど、痩せてたな(笑)。
菊地 痩せてた痩せてた。痩せててさ、もう今ツーブロックとか言ってるけど、それどころじゃなかったね。片方刈り上げてたでしょ?
大友 あ、そんな時期もあった。その時見てる?
菊地 見てるよ、オレ。佐々木健介さんみたいになってた(笑)。
大友 いろいろ試してたんだよ。自分で髪の毛切ってたんだけど、ちょっとモヒカン失敗して、片っぽ全部…片っぽだけ毛が生えてる時期もあったね。
菊地 あったよね。
大友 あったあったあった。
菊地 片っぽだけ生えてる毛が腰ぐらいまであってさ。
大友 そこまでじゃないけど(笑)。
菊地 自家製の…自家製って言わないか…手製のギターを持ってですね。
大友 あ、でも手製のギターだったよね。
菊地 だったよね。
大友 うんうん。
菊地 そいで、まあ…パンクムーブメントっていうかさ…
大友 うーん…パンクとちょっと違うけど、まあ…そういうとこにいたね。
菊地 いわゆる80's ニューウェーブムーブメントですよ。
大友 うんうん。
菊地 で、「わあ〜…」とか思ってたの。
大友 (笑)。直接なんだかんだやるようになったのは、90年代入ってちょっとしてぐらいじゃない?
菊地 えとね〜…
大友 何のあたりだっけ?
菊地 「菊地メモリー」によるとですね…「菊地メモリー」かなり曖昧ですけど
大友 うんうん。
菊地 89年ですよ。
大友 89年だ。
菊地 もう80年代も終わりだなって時に、あそこですよ…たまプラーザかなんかの…
大友 あ〜…なんかやったね〜。
菊地 セルロイド・マシンガン」っていう…
大友 やった、やった。CDとか出さなかったけど。
菊地 そうそうそう。それでね、一回ゲストでちらっと呼ばれて行ったの。
大友 それが最初か。
菊地 それが最初。それでね、今はゲームセンターになっちゃって…
大友 BEAM…渋谷の当時QUATROの向かいにあった…
菊地 そうそうそう。
大友 うんうん。
菊地 あそこのこけら落としだったんだよね。
大友 こけら落としもやったね。
菊地 あれ一緒にやったの。
大友 やったやった。思い出した思い出した。あれ90年代入ってるよ、たしか。
菊地 あれは90年代入ってる。あれは数年経ってるから…それでも91〜2年だと思うんで。
大友 91〜2年だよ。
菊地 すでに2001年で10年でしょ…15年前ですよ。
大友 いや、91〜2年だと15年どころじゃないんで、22〜3年前だよ。
菊地 そうですね。22〜3年前ですね。
大友 う〜わ〜…その頃産まれた子が今22〜3歳ってことだ。
菊地 その頃産まれた子が、もう「あまちゃん」に夢中ですよ(笑)。
大友 その頃産まれた子が、この番組聴いてるかもしんないってことだね。
菊地 聴いてるかもしれないね。「あまちゃん」もしくは「粋な夜電波」に夢中ですよ。まあ、高い確率で前者ですけどね(笑)。
大友 (笑)。オレ、その頃はメールとかないから電話じゃん。
菊地 電話よ。
大友 で、ナルちゃんに初めて電話した時のこと、今でも覚えてて
菊地 マジで?
大友 留守電だったんで。
菊地 (笑)。
大友 で、普通の留守電じゃないんだよ。なんか…「ギャー!」って大騒ぎしてる留守電で…
菊地 (笑)。
大友 「なんだ、コイツ?」って思ったのが、記憶があるんだけど。
菊地 あれね、あの頃流行ったの、オレの周りのヤバい友達の間で。留守電をどれだけクレイジーに出来るかってのをやっててさ。
大友 うんうん。
菊地 ま、今放送で名前言ってもわかんないけど、ミナカミとかいたじゃん。
大友 ああ〜。
菊地 ヤバいの。今名前出すだけでもドキドキする奴。いっぱいあの頃いたじゃん。
大友 はいはいはい。
菊地 今、お互い…ねえ?…ちゃんと。…今、エージェントいますか?
大友 いないよ。
菊地 マネージャーさんは?
大友 ひとりでやってるよ
菊地 事務所は?
大友 ない。
菊地 ビュロー菊地に入りませんか?
大友 ヤダよ(笑)
菊地 (笑)。今入ってくれるとねえ、いろいろ助かるんだけど(笑)。
大友 ほんと、ヤダよ(笑)。
菊地 (笑)。…ま、オレがさ、事務所の代表取締役になるなんて話もさ、留守電のマイクロカセットのテープ聞いてる頃はあり得ない話…
大友 ありえない!…あんな奴が社長になんの絶対ヤダ!…凄かったんだから。
菊地 (笑)。
大友 電話して「もしもし?もしもし?」って言ってるのに、「ギャーッ!」って騒いでんだよ、向こうで。何人かで。
菊地 そうですね。あの時ね、しかもね…別に声には乗んないんだけど、裸で騒いでたんだ(笑)。
大友 あ、でもね、そういう感じがしてた。
菊地 (笑)。
大友 もうオレの記憶では、男女が入り乱れてギャーギャー言ってて…
菊地 そうそう。女3男3とかで、当時六畳一間に住んでたから…
大友 うん。
菊地 女3男3で、とにかく素っ裸になって(笑)…恥ずかしさから絶叫するんだ!って言ってさ。
大友 あ、それだ。
菊地 それをマイクロカセットに録ってさ(笑)。電話かけた奴がこれを聞くとか言って、ギャーッ!とか言ってたの。
大友 そう。だから電話した瞬間に…留守電ってわかんないじゃない、すぐに。
菊地 すぐにはね。
大友 で、向こうで大騒ぎしてるような感じで…「もしもし?もしもし?」って言ってんのに(笑)。
菊地 そうそうそう。みんながね、「もしもし?もしもし?…ナルちゃん?」って言うんだよ。
大友 そうそう。
菊地 「何やってんの?」とか言って(笑)。
大友 そうそうそう、わかるわかる。とんでもない奴に電話しちゃったな…と思って
菊地 懐かしいよね。
大友 うーん。
菊地 そいで「あ、どうもどうも。」って出てね。仕事取って。当時は全部電話ですよね。
大友 電話だよね。あと、ファックスが…だって、新しかったんだから。
菊地 もう…ファックスなんか持ってる奴はね、なんていうの…めちゃめちゃハイテクでしょ。
大友 うん。「すげえ…ファックス!」みたな感じだったからね。
菊地 ゴッゴッゴッゴッゴ…(笑)。
大友 これで海外に手紙じゃなくて送れるぞ!みたいな。
菊地 そう。自分が書いたものが海外に送れるって、やっべ〜!とか言って(笑)。
大友 そうそうそう(笑)。
菊地 今、送れ過ぎだよね。
大友 うん、送れ過ぎ。
菊地 あんなに送れなくてもいいよね。
大友 あんな…もう…ケータイにまで送ってるからね。
菊地 ほんとだよね。
大友 うん。
菊地 いや〜…だからね、何があるかわかんないすよ、ほんとにね。
大友 いや、わかんないよ。
菊地 うん。
大友 だって、その頃、ケータイを持つ人生があるなんて想像してないしね、そもそも。
菊地 そうね。テクノロジーまずわかんないけど、自分の事ぐらいはさぁ…予想付くと思うじゃん、人間
大友 そんなことないよ〜
菊地 ないよね(笑)。
大友 自分以外の人見たって…
菊地 いや、ほんとだよね。
大友 ほんと。幸福だろうが不幸だろうがなんだろうが、何がくるかわかんないよ、ほんとに
菊地 いや、ほんとほんとほんと。
大友 うん。
菊地 そのことは強く訴えたいですよね(笑)。
大友 訴えたい。しかも自分一人の責任とかじゃなくて、いろんな事態で…
菊地 いやいや、ほんとですよ。
大友 何があるか、わかんないもん。
菊地 ほんとほんと。いや、何があるかわかんないもんね。
大友 うん。
菊地 みんな結構そうでもないまま…暗くなってる人が…別にその…ラジオのリスナーだけとかじゃなくてさ。
大友 うんうんうん。あ、結構いるってことだ。
菊地 全体的に多いよねえ。
大友 はあ〜。
菊地 あと、まあ…50と54のおっさんの会話だからさ、完全にズレてるんだけど、これ(笑)。
大友 (笑)。すいません、オレはもう20代からズレてたからね
菊地 そうね、…そうだよね。
大友 すいません(笑)。
菊地 あの…普通の20代を送ってないからね。
大友 送ってない。
菊地 大体同じ…ま、4つ離れれば高校だとパイセンとも言えない、もうOBだから…
大友 そうか、そうか。
菊地 だいぶ離れてんだけど…ということになるけど、それにしても大雑把に同世代だとした時に…
大友 そうだよね。大体同じ感じで遊んでたもんね。
菊地 そうそう。…の時に、20代にストリートで遊んだ量は、半端なく少ないでしょ?
大友 少ない少ない。20代なんか、遊んでないもん。
菊地 身を捧げてたからね。
大友 アングラの世界!
菊地 (笑)。
大友 「ゴ〜〜ッ!…ギャ〜〜ン!」っていう10年間。
菊地 今日のオープニングなんか、ポップな方ですよね。
大友 あれはオレん中で最大限ポップにしたのが…
菊地 (笑)。
大友 こんなにポップにしていいのか?っていう。
菊地 ほんとだよね。
大友 仲間から裏切り者扱いされんじゃないか?…ぐらいの覚悟でやってたのよ
菊地 あの時こんなポップな音楽出したら、もう…粛正に遭うんじゃないかっていうような恐怖の中、録ったんだよね
大友 そう。そんくらいの覚悟で。
菊地 あのね…あれなのかもしんない。10年ぐらい時代とズレてると、いいのかもしんない。オレね、30代はまったく遊んでないの。
大友 あ、そうだよね。
菊地 ずーっとね、ポリリズムの研究やってたの、ティポグラフィカ…(笑)。
大友 (笑)。
菊地 だから、自分が30代の頃の遊びはあんまり知らないんだよね。
大友 なるほどなるほど、そうかもしんないね。
菊地 20代やってなかったでしょ?
大友 20代全然遊んでない。
菊地 遊んでないよね。
大友 うん。
菊地 30になって、ちょぼちょぼっていう感じ?
大友 30代になって、オレ、ツアー人生になったから…海外とかの。
菊地 そうね。
大友 あれでだから…遊びっていうよりも…まあ、でも、解き放たれた感じだよ。
菊地 最近はさ、若い人も、海外にも行きたがんないの。
大友 いや…あのね、海外行って、日本人の数が激減したの、肌で感じるもん。
菊地 感じる?
大友 感じる。
菊地 最近はね、オレもあんまり海外行かなくなったから。
大友 うん。
菊地 一番行ったのは、大友っちとつるんでた頃よ。
大友 あ、そっか。
菊地 その前オレは、山下(洋輔)組の兵隊だったんで。
大友 そうそう…でも行ってたよね。
菊地 行ってた。山下組で長い時は2ヶ月海外にいて…
大友 うんうん。
菊地 山下組終わる頃、大友組になったんだよね。
大友 うんうん。
菊地 で、Ground Zeroで回るようになって。
大友 うん。あの時も結構間廻ったよね、一緒に。
菊地 廻った廻った。だいぶ廻ったよ。
大友 うん。だからオレはあんなんで…バンドの時もあったけど、一人でもぐるぐる廻ってたから。
菊地 ていうか、ほんとに…ある意味イグザイルですよね。
大友 (笑)。
菊地 世界中を廻ってるっていうかさ。
大友 ダンスしながら(笑)。
菊地 (笑)。
大友 してねえか(笑)。
菊地 ダンスヤバいでしょ(笑)。でも、ダンスだってね…
大友 うん。
菊地 今、ダンスっつって二人で笑ってるけど、3年後踊ってるかもしんないんだよ(笑)。
大友 オレ?
菊地 そう(笑)。…だって、何があるか分かんないんだよ
大友 いや…でも、そう。ほんとだよ。
菊地 ほんとだよ。オレ、今、ラッパーなんだよ!
大友 それもちょっと…それ言ったらオレ、盆踊りやってるからね、今!
菊地 (笑)
大友 来年、盆踊りアルバム出そうって本気で考えてるんだもん。ありえないよ。
菊地 でもさ、その盆踊りはさ…言っちゃ、前衛盆踊りでしょ?
大友 いやいやいや!…みんなが踊れる盆踊りですよ。
菊地 いやいや、音楽はみんなが踊れる普通の盆踊りの音楽かもしれないけど、ちゃんと自治体に根付いた…あ、根付いてるか。
大友 やや!
菊地 あ、やや?
大友 ややだね。でも、もう。
菊地 だから古典的な盆踊りでは…
大友 ないないない。
菊地 ポストモダン盆踊り」でしょ?
大友 ポストモダンっていうか…(笑)、まあ…そうね。
菊地 音楽が普通の盆踊りなだけで…オレだってそれテレビで観たもん。
大友 あ、そうか。
菊地 とにかくね、オレはね、今年大友っちを観過ぎたの(笑)…テレビで


※文字起こしの「NAVERまとめ」あります。