「スノーピアサー」



なにしろ自分は、現時点での生涯ベスト映画に「母なる証明」を挙げるぐらいなので、ポン・ジュノ監督最新作となれば、観に行かないわけにはいかないのである。
公開前から楽しみにしていた作品で、結局日本公開タイトルは「スノーピアサー」になったが、当初は「雪国列車」の邦題で公開されるとも聞いていたので。
十数年ぶりの大雪の後の東京、まだ路肩に雪が積もっている中で、観に行くのにふさわしい状況だとかなんとかこじつけてみたり。
新宿シネマカリテ。新しく出来た武蔵野館系列のこの映画館は椅子の背もたれが頭まであって快適。
平日の昼間でも結構人入っていた。
韓国人監督ポン・ジュノクリス・エヴァンスエド・ハリスなど有名俳優を起用して撮った初の英語作品で、今回製作にも名を連ねている同志のパク・チャヌク監督が「イノセント・ガーデン」で欧米進出したのと同様、満を持してのインターナショナルな作品となった。
原作がフランスのコミックというこの作品は、この世の縮図のような「現代版・ノアの方舟」のような設定で、様々な示唆に富んだ、スケールの大きな近未来SF作品となったが、「グエムル-漢江の怪物-」という怪作を撮ったポン・ジュノ監督にしてみれば、そこまで大それたチャレンジというわけでもない。
その、ソン・ガンホとコ・アソンの「グエムル親子」だけが、今回の主要の韓国人キャスト。
ソン・ガンホの出る作品にハズレ無し」と信じている自分だが、実は今作、韓国では大ヒットしたようだが、Twitter等であまり良い評判を目にしないので、若干不安に思っていたところもあった。
ドメスティックな作品でないと、ソン・ガンホから滲み出る「切な可笑しみ」が上手く表現されないのかもしれない。

観終わって率直な感想は…むちゃくちゃ面白かった!
途中、ちょっとテンポ感が合わないところもあったが、単純にユニークな設定、映画向きのわかりやすいストーリー、アクションあり、サスペンスあり…で、映画として面白い要素がぎっしり詰まった作品だった。
インターナショナルな作品ということで、韓国映画が苦手な人でも普通に楽しめる作品になっていると思う。逆に言うと、ポン・ジュノならでは、この監督の作家性みたいなものが発揮できているかというと、そこはちょっと分かりにくい。
宇多丸氏が言うところの、「闇使いの上手さ」や「画面の切り取り方の上手さ」みたいなものは、随所に感じたけども。
しかし、よくよく考えてみれば、寡作だが毎回違う作風にチャレンジしてきたポン・ジュノ監督の特徴というのは、スタイリッシュな映像センスを売りにしたパク・チャヌク監督のような分かりやすいものではなくて、作家性ありきというよりは、ずいぶん風変わりな面白そうな話を選んできて、緩急付けた演出で観客を引き込む映画に仕上げる、職人気質なところもあるようだ。
一作一作にポン・ジュノ印を刻むというよりは、そのフィルモグラフィを振り返った時に、やっぱりポン・ジュノの作品はどれも面白かった!と言わしめるところに彼のスゴさがあるのだと思う。

Snowpiercer(韓国盤)

Snowpiercer(韓国盤)