「ダラス・バイヤーズクラブ」



仕事が早く終わったので、雨の中有楽町へ。「ダラス・バイヤーズクラブ」を観に行った。
ヒューマントラストシネマ有楽町は水曜日がサービスデーでもあったので、アカデミー賞発表直後だし、激混みが予想されたが、案の定「もう最前列しか空いてません。」と。
入場できただけでもラッキーかなと思ったが、1列目がほんとにスクリーンが目の前で、ほとんど見上げるような角度での鑑賞になってしまい、予想以上に辛かった。
まだこの内容だったから良かったけど、SFとかでカットが激しく切り替わるような映画を観たら、てんかん起こしますぜ。
先日のマシュー・マコノヒー2本立ては、作品はいまいちだったものの、彼の魅力は随所で輝いていたので、今作の激痩せして臨んだ、その役者魂に打ちのめされるのかも…と、かなり期待していた。
しかし、事実を基にした作品だからか、観終わってみると、以外にも淡々としていて、ガツンとやられるような映画ではなかった。若干物足りなく思ったのは確かだが、それでもやっぱりいい作品だと思える。
難病ものとか人助けものとかの要素を強調してお涙頂戴の作品になったら白けるところだったが、まあ…そんなことになってるはずがないとも思っていたが。
抑制の効いた演出で、じわじわ心に染みる作品。
時折、挟持を見せるマコノヒーの姿にグッとくることもあるが、自分がHIVを発症したからといって、急に善人になったりしないところに好感が持てた。
しかしこの作品で強く印象に残るのは、やはりオカマちゃんのレイヨンを演じたジャレッド・レトだった。
無愛想で本音をなかなか明かさないロン(マコノヒー)に感情移入できるのも、レイヨンに対しての態度から、あくまでも間接的に彼の善人性や正義感を感じ取ることができたからだ。
この作品は、自分が病気になって初めて他人を救おうという心が芽生えた男の成長の物語…とか、そういうんじゃないような気がする。
やっぱり互いに疎外感に苛まれた孤独な者同士の不器用な心の通わせ合いがせつない…という、これはある種恋愛映画なんじゃないだろうか。
ジェニファー・ガーナーには悪いけど、ほんとは恋愛的な要素といったら、女医・イブと患者・ロンの関係の中にみられるはずだったのだが、レイヨンの魅力に惹かれてしまうと、そこはどーでもよく感じてしまった。
後は、やっぱり現実的にいろんなしがらみがあるからなのだろうか、製薬会社をはっきり悪者として描かなかったおかげで、なかなかカタルシスを得にくい結末になってしまった。
単純にどっちが悪いとか正しいとかって問題じゃなかったのだろうとは思うけど。少なくとも映画的には、もうちょっと盛り上げようはあっただろうに。

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