「オール・イズ・ロスト〜最後の手紙〜」



(まだ14日の話だが…)
この日は14(十〈とう〉・フォー)でTOHOシネマズのサービスデー。
1000円で観れるので、観たかった二本をまとめて鑑賞。
「オール・イズ・ロスト」も「ネブラスカ」も、公開館数が少なくて、なかなか仕事帰りとかに観にいけるようなタイミングも合わず。
そこに、日比谷のTOHOシネマズ・シャンテで、ちょうどその2作を公開していたので、絶好の機会。
予告編を観て、ロバート・レッドフォードが海で遭難して必死に生き延びる、ただそれだけの映画で、しかも出演者はロバート・レッドフォードただ一人だけ!…という、そのシンプルな作りに興味を惹かれていた。
映画は実際、目が覚めたら船室に水がゴボゴボ入ってきて…というところから始まり、無線機が海水に浸かって助けが呼べない、急に天候が悪くなってヨットが転覆…と、あれよあれよという間に、大海原でひとりぼっちの状況に。
出発時の状況や、家族と会話した場面などが、回想シーンとして挿入されるのかと思っていたが、それも無く。
そもそも何で独りでヨットで旅していたのか、どこに向かうつもりだったのかも、全く説明なし。説明ゼリフのような独り言も発しない。
ただただ、起こってしまった状況が予想以上に深刻な事態であることに、戸惑いながらもひとつひとつ対策を施し、命を繋ぐことに真剣に取り組む老人の姿を延々見ることになる。
セリフもないから静か〜な映画で、さすがに時々眠くはなったけど、面白いところも多かった。
非常食や救命ボートやライフジャケットなど、ひと通り装備の揃ったヨットでの航海ということで、映画のお話とするには、実はそこまで過酷なサバイバルというわけでもなかったりする。
目の前を通り過ぎる貨物船に気付いてもらえず、助かる可能性もある中で、不運が続いたりもして、「ダイ・ハード」のような、現実離れした奇跡的な生還というほどでもない。
果たしてどこまで危機感があるのか、超人的な能力を発揮するほど生きることに執着しているのか、もぼんやりしていてあやしいものだ。
じゃあ、サバイヴものとして、どこに特筆すべき点があるのかというと、あの完璧なスターであったロバート・レッドフォードが、包み隠さずさらけ出すことになった「老い」こそがすべてかもしれない。
ロープを繋ぐのもひと苦労、機会を使いこなすのも心もとなく、まさに御老体に鞭打って、それでも生きようとするその姿を見ているだけで、何とも言いようのない感動が湧き上がってくる。
ただ生きるため、死なないようにするため、というだけで、人はあらゆる知識を総動員し、身体すべてを使いこなさなければならない。
損得や見栄や美学・哲学…すべてを剥ぎ取った一個体の生命に戻った時に、本当に「生きることの意味」が見出されるのかもしれない。
少なくともそういうことなのかもしれない…と考えさせられる作品だった。