「韓流最高会議はまだまだ継続。」

「粋な夜電波」第158回放送は、恒例企画「第七次韓流最高会議」。
世の中の流れに伴って、韓流ブームにも逆風が吹く中、この企画を続けるのは勇気が要ることではないかなと、余計な心配をしてしまいますが、「音楽至上主義」の菊地先生はどこ吹く風。
あくまでもいい音楽を紹介しているのだという姿勢はぶれません。
あらためて所信表明しているかのような、前口上代わりの番組冒頭のコメントを文字起こししてみました。

Keep Your Head Down (リパッケージ版)(韓国盤)

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都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

貴方だけ今晩は。菊地成孔です。今夜の「粋な夜電波」は「第七次韓流最高会議」。
4年目に入ったこの番組で7回目ということは、おおよそ半年に1回お送りしてきた企画ですね。
K-POP」「韓流ブーム」といった、大韓民国さんが外需を求めて繰り広げる海外進出の一環としてのこの現象も、え〜…たった3年で大きく変わりました。
TBSの番組冒頭でこんな事を言うのも、いささかアナーキーに過ぎますが、今WOWOWに加入するとですなあ、少女時代のさいたまスーパーアリーナでのコンサートに1万3000人が招待されます。…130人や1300人じゃないですよ。1万3000人。たまアリの収容人数が約6万人だとしてもですね、これは大変な数字と言えるでしょう。
恫喝も減りました。いささか寂しいというのが素直な感想です。
初回から…そうですね…3、4回目ぐらいまではワタシ、「この企画を中止しないと、オマエの命をとるぞ。」ぐらいの類いのですね、ずいぶんと威勢のいいメールを頂戴していたりしたんですね。
2011年、この番組が開始された年のヒューゴー賞…これはアメリカのSFの芥川賞みたいなもんですが、受賞作の名前は「都市と都市」といいます。
これは画期的かつ非常に示唆的な物語ですね。
ひとつの都市にですね、2つの都市が共存しているんですね。ひとつのマンションに2つの家族が、ひとつの議事堂に2つの市議会が入ってるんですよ。
ところがですね、この両都市には相互的な法律がありまして、なんとですね…「お互いの都市民はお互いの存在を認証してはいけない」んですね。つまり「都市はひとつなんだと思い込み、行動しないといけない」という決まりがあるわけです。
街を歩いていても、同じ都市民の存在は認めるんだけども、すぐ隣を歩いている違う都市民の存在は見て見ぬ振りをして暮らすの。…面白いですね。
これがインターネットによって飼育された「気に食わない書き込みに食ってかかることへの虚勢」、つまりは「嫌な奴はそもそもこの世に居ないんだ」と思い込み、あまつさえ結構思い込めば思い込めちゃうという…。これは臨床の用語では解離と言ってですなあ…抑圧や投射などと区別されますが、国家的な規模で行なわれている解離という物語ですね。
こうした事への暗喩になっていることは言うまでもありません。
ワタシに恫喝のメールが届かなくなったことも、おそらくそういうことでしょう。
今、韓国が大好きで気軽に旅行に行くワタシのような人間と、韓国を蛇蝎のごとく嫌う人々は、お互いをこの世に存在しないと捉えているような節があります。
とはいえ、まあ…これは大した問題ではありません
ワタシは、ドイツでオランダ人に対する、インドでパキスタン人に対する、アルゼンチンでチリ人に対する、セネガルギニア人に対する…かなりえげつない悪口を聞いてきました。それこそ放送はまったく出来ないですね。番組冒頭から「WOWOW…」なんて言っちゃってるワタシでさえビビッてしまうぐらいの、これは悪態です。
隣国どうしというのは、人類史上仲が良かったためしなんてないんですね。
島国根性」なんて言葉も最近はめっきりご無沙汰ですが、陸地続きの隣国を持たない我々は「隣国どうしが嫌い合う」という、ごくごく当たり前の事に今さらながら敏感になっているだけなのかもしれません。
…なんちゃって、底の浅い報道番組みたいな事を言うのは時間の無駄でございます。それよりも一番底の深い…そう、音楽を聞きましょう。
「ケッ!韓国ポップスなんて聞いてられるかい!」といった御仁もいらっしゃるでしょう。
それこそ解離してですね、「今週の放送なんか無かった。」ということにしちゃう方すらいらっしゃるでしょう。「先週は良かったです。来週は良かったです。」みたいなね。それはまあ、仕方が無い。
ここはどうかひとつ、この私の不細工な面に免じてですなあ、最初の1曲だけでもいかがですかな?
東方神起』なんて、宝塚みたいなもんだろ、あんなもん!」なんて仰る不届き者のワイルドなお父様はおらぬかな?…実は、何を隠そう恥ずかしながら、私もそんな不届き者の一人でした。このトラックを聞くまでは…です。
これはミラノにあるイタリアで最も優れていると言われているセレクトショップと、韓国最大の芸能事務所がコラボして作ったリミックス作品集の中に収録されています。
「何でそんなことするんだ?」って?…そういった話はこれから番組をお聞きいただくお楽しみといたしまして、とりあえずスピンしてみましょう。
ハングルをそのまま読むとですね、「イゴガヌン アルゴガ…」的に読めますが、韓さん、これはどういう意味でしょうか。
 「イゴガヌン アルゴガ…」で「これだけは知っとけ。これだけは知っといて。」みたいな感じです。
菊地 はい、ありがとうございました。…あ、ご紹介が遅れました。このコンテンツのレギュラーである社会学者の韓東賢(ハン・トンヒョン)さんです。韓さん、今夜もよろしくお願いします。
 よろしくお願いします。
菊地 それでは早速参りましょう。「菊地成孔の粋な夜電波」、今夜は「第七次韓流最高会議」です。私も韓さんも韓国のビッグタレントのパーティーに参加してきた土産話を持って、ここTBS第6スタジオに待機しております。本日の1曲目はリミックスアルバム「10CC 5thYear SM」よりDJ HYOOによる東方神起のリミックス、「Before U Go」。
(曲)

※文字起こしの「NAVERまとめ」あります。