「ブルージャスミン」



ケイト・ウィンスレットケイト・ブランシェットをよく混同する。
英国人っぽい方がブランシェットで、オーストラリア人っぽい方がウィンスレットかと思っていたら、どうやらそれも逆のようだ。
ブルージャスミン」も、「セレブから転落したのに、いまだにお高くとまっている勘違い女の滑稽さ」を演じたと聞いて、「あー、なるほど。あの気の強そうな顔の女優が演じたら、それははまり役だろうな。」と思って、頭の中に思い浮かべていたのはウィンスレットの方だった。
ウディ・アレン監督の現在のところ最新作で、ケイト・ブランシェットアカデミー賞主演女優賞を受賞して話題となった作品。
町山さんの解説を聞いて、面白そうだと思っていたにもかかわらず、公開時に見逃してしまっていたので、名画座での上映はありがたい。
まあ、いかにもウディ・アレンが得意そうな話だし、面白いに決まってると思っていたが、案の定面白かった。
実際は無一文なのに見栄を張り続けるジャスミンの必死の取り繕い方や、対照的な性格の妹・ジンジャーの尻軽さやトラッシュぶりが笑える、コメディ映画としてヒットしたようだが、やっぱり最後にはグッと胸にこみ上げてくるものがある、悲喜こもごもの人生を描いた傑作だった。
セレブ暮らしにあぐらをかいていた上に、自分を甘やかし続けた旦那は投資家のふりをした詐欺師だったのに、それを見て見ぬ振りをした結果の破滅なので、自業自得なのにも関わらず、堕ちた後も貧乏な人を見下し、また自分はセレブに返り咲けると思っている女なんかに、感情移入できるものだろうかと思ったのだが、これが意外にも「その気持ちわかる!」と思ったり「そこまで無反省になれるかね!」と反感を抱いたりで、すっかりジャスミンの魅力に惹かれてしまっていたのだ。
鼻持ちならないセレブには共感できないが、もし自分が超成金だったらどうなるかと想像すると、そんな考えになってしまうか〜というシミュレーションにもなるし、その振る舞いは、ああはなりたくないもんだという反面教師にもなる。
対照的に、貧困から抜け出せない暮らしに慣れ切ってしまって向上心すらない妹のジンジャーの方が、庶民的には感情移入しやすく、その対比でお互いの複雑な心境を描いていくのは見事な演出だと思った。
最初は笑ったり皮肉ったりしてジャスミンのことを見ているのだが、次第に彼女の過去が明らかになるにつれて、お金に執着してしまう理由も少し明らかになったり、そしてその転落した本当の理由を知ると…。
最終的には、ちょっと背筋が寒くなるようなブラックな終わり方で、後味がいいとは言えないのだが、なんかそれも含めて人生いろいろだしな〜、もうちょっと楽しんで生きてみようか…と思えた。
さすがウディ・アレン監督。自分はかなり好きだ、この作品。