「ひとりジャック・タチ映画祭。」



今年の4月に「アクト・オブ・キリング」を観に、シアター・イメージフォーラムに行った時、ちょうど「ジャック・タチ映画祭」もやっていて、劇場前は長蛇の列だった。
ジャック・タチという名前はよく耳にしていて、宇多丸氏が「みんな大好きジャック・タチ!」とか言っていたから、名作を撮った名監督なのだろうとは思っていた。
どんな内容の作品を撮っているかは、よく知らないまま、いずれ機会があれば観てみたいとも思っていた。
そこで、今週、キネカ大森の名画座二本立てで、「ぼくの伯父さん」と「プレイタイム」を上映すると知って、ちょうどいい機会だと思って、休みの日の午前中から京浜東北線に乗って大森駅に向かったのだった。

キネカ大森は時々行くが、結構好きな映画館で、なにより空いてるのがいいし、テアトルシネマグループなので水曜日はサービスデーで2本立てでも1100円で観れる。
SEIYUの中に入っていて、その地方のデパートみたいな、いなたーい雰囲気も好きだったりする。
この日も早目に付いて、上映時間まで、いちおうレストランフロアになっている5階のインドカレー屋に入って、昼飯を食べてから映画を観ることにした。期待せずに入ったが、720円のランチセットは、大きなナンがやたら美味くて、満足。
ジャック・タチ、フランスの偉大な才能…らしいが、なぜまた観てみようかと思ったかというと、先日観たウディ・アレン監督の「ミッドナイト・イン・パリ」が面白かったからというのも理由のひとつだ。なんだか、あのパリに憧れる主人公に影響されて、パリを舞台にした昔の映画なんかを観ると、結構ハマるんじゃないかと思って。
しかし、結論から言うと、自分の「個人的ジャック・タチ映画祭」は、かなり苦痛な4時間となった。
いや〜…ここ数日、アクション映画ばかり観てたからなのか、そういうモードでない時に観てしまったからなのか。
退屈だったし、ジャック・タチの笑い…ハマらなかったわ〜。
「プレイタイム」はその撮影の仕方はすごいと思ったし、あれだけの群衆に全部に演出を付けて、全部が繋がっている話にするなんていうのは、途方も無い偉業だと感心もするが、やっぱ基本的にドタバタコメディは苦手なのかも。
しかも前半部分は、パントマイムのような無声コントのような感じが延々と続き、静かすぎてウトウトしてしまった。観始めてから、「あ〜…こういうタイプの映画なんだ〜。」とガックリきた。
その日はキネカ大森にしてはめずらしく座席がけっこう埋まっていて、年配の方が多く来ていたようで、やっぱりある一定の層にはジャック・タチ人気というのは根強いのだなと思ったが、映画が始まると座席のあちこちからイビキが聞こえてきた。…やっぱり退屈なんじゃん!
おフランスの雰囲気と、毒のない上品な笑い…エスプリ?これがエスプリというやつなのか?…が、なんとなくオシャレに見えて憧れている人が支持しているのではないだろうか。
「プレイタイム」を観終えただけでグッタリしていたが、いちおう「ぼくの伯父さん」も最後まで観た。こっちは少年とおじさんの交流を描いているから、ちょっと人情もの的な要素もあって、ノスタルジーでグッときたりするのかな?…と期待してみたが、やっぱり同じような話。
前半パントマイム、後半ドタバタコメディ。なんか小林賢太郎の無声コントを60分観た後に、続けて「全員集合!」のドリフのコントを60分観たような感じ。
それすら知らなかったのかと言われそうだが、この両方の作品に登場するユロ氏という、ジャック・タチ氏本人が演じるキャラクターがウケたシリーズで、要はフランス版「ミスター・ビーン」みたいなものなんだな。「ミスター・ビーン」よりはずっと上品なんだろうけど。
とか言って、「ミスター・ビーン」も観たことないのだが、まあ…どっちにしても苦手なタイプの笑いかな。
どっちかというと、自分が期待していたのは、フランスのウディ・アレン的な存在なんじゃないだろうか…ということで、もうちょっと毒のあるユーモア、気の効いた会話劇のような作品だった。
まあ、一方的な思い込みで期待外れだと思ってしまっただけで、作品の質が悪いわけでもない。
ただ、自分はうまく乗れなかったというだけで。
あわよくば、ついでに天才グザヴィエ・ドランの新作「トム・アット・ザ・ファーム」まで観てしまおうと目論んでいたけれども、2本観てグッタリしたので諦めて帰宅。
「トム・アット・ザ・ファーム」は後日アップリンクで観よう。