「ゴーン・ガール」



「たまむすび」での町山さんの解説を聞いて、公開を楽しみにしていた、デヴィッド・フィンチャー監督最新作「ゴーン・ガール」。
Twitterでも絶賛の声しか目にしないし、いやそりゃもう絶対に面白いに決まってるでしょ!と期待値は上がりまくっていたが、とにかくストーリーに関してはなるべく事前に知り過ぎてしまわないようにして観に行った。
いやあ…最高!
画面作りに関しては、もう完璧なんじゃないかと思えるほどの完成度。どのシーンを静止画にしても鑑賞に堪えうる美しさ。
ソーシャル・ネットワーク」からか、奥行きや広がりがあって細部までビシーッと決まった画面構成が、現実的なストーリーの日常的な場面にまでハマるようになったのではないか。ケレン味が押さえられて、いい緊張感が持続し、まさにこういうストーリー向き。
俳優陣の演技も皆素晴らしい。ベン・アフレックはその「スキの多い男前」な雰囲気が、この妻や世間に振り回されるちょっと愚鈍な夫役にピッタリ。
妻役のロザムンド・パイクは…ハリウッド女優として大ブレイクする瞬間をまさにこの作品で目の当たりにした。凄過ぎる。
セクシーで聡明ないい女ぶっている時からの裏の顔の見えなさ。耐える妻を演じている時の何考えているのか分からない感じ。本性現し始め、悪意が露呈した時の嫌な女ぶり。自分の思い通りに事が運ばなかった時のオロオロする弱さも見せ、時々はじけて可愛げのあるところも見せる。そのひとつひとつの瞬間が、観客を爆笑させるほどのコメディエンヌとしての才能も開花。
ラストに向かって、状況は二転三転して加速していくジェットコースタームービーだが、この妻エイミーの底知れなさに恐ろしくもなってくる。
昔のフィンチャー作品なら、どんでん返しでオチもバッチリ決まって、はいオッケー!ってところで終わるとこなのだが、この作品は最初から最後までテーマが貫かれていて、観客との距離が離れない。
現代社会の様々な問題も風刺しつつ、喜怒哀楽、信頼と疑心など、あらゆる感情をドラマの中でスパークさせ、完璧な画作りで記録する。
毎回異なるチャレンジを試みているフィンチャー監督だが、もはや巨匠の風格が漂ってきた。

ゴーン・ガール 上 (小学館文庫)

ゴーン・ガール 上 (小学館文庫)

ゴーン・ガール 下 (小学館文庫)

ゴーン・ガール 下 (小学館文庫)