「6才のボクが、大人になるまで。」



渋谷に「天才スピヴェット」を観に行ったら、14:30の回は満席。
そこで急遽銀座に移動して、TOHOシネマズ シャンテへ。
6才のボクが、大人になるまで。」を観ることにした。
これも「たまむすび」での町山さんの解説を聞いて、ぜひ観たいと思っていた。
なにしろ一人の少年とその家族の物語を撮り続けて、12年かけて完成させたという希有な作品。
子役のエラー・コルトレーン君が18歳まで成長していく記録にもなっているが、ドキュメンタリーではなく、劇映画。
きちんとシナリオがあり、配役された俳優陣も年齢を重ねながら制作されている。
このアイディアだけでもすごいが、実際に完成できたのが奇跡のような映画だろう。
それだけでも観る価値が十分あると思ったので、それ以外の情報はなるべく入れずに鑑賞。
予告編すら観ていない状態だったので、6才のこの可愛らしい少年がどう成長していくのか、本当にワクワクしながら観れた。

主人公の少年メイソン、姉のサマンサを演じるのは監督の実の娘さんのローレライ・リンクレーター。この二人姉弟の母親オリヴィアをパトリシア・アークエット、父親をイーサン・ホークという名優が演じる。
両親は離婚してしまったが、2週に一度会いにくる父と子供たちは仲の良い関係を続けている。
子供たちを育てるために、復学して心理学の勉強をし、教師の職を得ようとする母。その時に出会った教授と再婚。
その結婚生活もやがて破綻。義父のビルがアル中で暴力的だったことが原因。
度重なる引っ越しや生活環境の変化に戸惑いながらも、健やかに成長していく姉弟
カットが変わって1年後の状況になるたびに、実際に背が伸びて、顔だちが大人びていくのを目の当たりにして、「おやまあ、すっかり大きくなっちゃって〜。」ほんとうに驚く。
(「よその子とゴーヤは育つのが早いですな!」と、博多華丸の気分。)
やがて二人とも思春期を迎え、恋に悩み、悪い遊びにも興味を持ち始め…というあたりでは、「道を踏み外すんじゃないぞ〜。」と、親戚のおっさんのように心配し、ハラハラしながら見守った。
特別にドラマティックな展開があるわけでもなく、ただ成長していく子供の姿と、それを見守る周りの大人たちを映し出しているだけなのだが、それでも十分に面白い。
やっぱり実在感と説得力が全然違う。しっかり感情移入して最後まで観れた。
特に、父親役のイーサン・ホークのいいパパぶりを観ているだけで、目に涙うるうる。
子供と一緒になって全力で遊ぶ時は遊び、自分の過去の過ちを認め、それを踏まえて真剣にアドバイスをする彼の誠実さが伝わってきて、グッときてしまう。
そして、この映画をコツコツ作り続けたリチャード・リンクレイター監督の堅実な仕事ぶりと真摯さにも大きなリスペクト。
3時間弱はさすがに長かったけれど、観て良かった。素晴らしい映画体験になった。