「高円寺の珈琲貴族での思い出。」

「粋な夜電波」第211回はスペシャルウィーク特別企画。
菊地先生が20代後半から約8年間暮らしたという思い出の街、東京杉並区高円寺をぶらぶら歩きながら青春の日々を語るという番組初の全編ロケ企画。
自身の過去についてもすべてオープンの菊地先生ですが、著書とかで読んでいたエピソードも、実際にその場を訪れて語られると、やはり臨場感というか…リアリティが増して、さらに面白い!
伝説の喫茶店を訪れて、壮絶な過去の体験談を語られた部分を文字起こししてみました。

Violet Blue

Violet Blue

まあ、え〜…とりあえず、まず1個目言っときますけど…懐かしいですね
今、高円寺純情商店街…ね、…を歩いておりますが、懐かしいと同時にですね、もう今ワタシ…52ですけども、先ほど申し上げた通り、20代を過ごした街ですので、懐かしい…もなんも、全然…もうやっぱ東京ってのは変わりますね、これね。
どっち行こうかな?…もう、こっち行っちゃおうかな。いきなり最初に…エグい目玉(笑)…エグい目玉スポットに向かっています。
えーと、Google Earthとか…ああいうのが得意な方、あと高円寺在住の方、高円寺に在住していた経験のある方などは、ワタシの今のこのウォーキングのコースを追尾してください。


今、ワタシは純情商店街を出まして、駅前のロータリーに着きました。ロータリーに着いてですね、駅前の北口からロータリーを通過すると対面に、1階が「グローバル・エステート」さん…今回は具体的な名前をバンバン出しますので、問題があったら後からピー入れますけど。名前を聞いてですね、後から面白がってそこに来るとかいうことはやめてください(笑)。はい、いろんな店の営業妨害になりますからね。
現在、1階がその…「日昇ホーム株式会社」さんと「グローバル・エステート」さん…これは要するに不動産屋さんです。この2階にですね、現在「漫画空間」…という名前に、名前が変わってますねえ。
「漫画空間は2階だよ!」っていう看板が出ていますが(笑)、当時この店は「珈琲貴族」という店でした。
「漫画空間」ってことはマンガ喫茶なのかな?…ちょっとワタシ、マンガ喫茶というもの自体を知らないので。


これはですね、ワタシのコアファンの方の間では、「伝説の階段」と呼ばれている階段でですね(笑)。今、上がって行きます。
現在「漫画空間」、当時「珈琲貴族」だった店…うわっ!懐かしい〜。
もうイヤ…(笑)。
あ、マンガ喫茶っていうんだ、これがマンガ喫茶なんだ…。マンガがいっぱいありますね。当時は普通にドリップ式のコーヒーを飲ませるコーヒー屋さんでした。
ワタシは…ま、今はもうすっかり…御存知…御覧の通りっていうか…お聞きの通り、完治して元気にやっておりますが、高円寺で2回死にかけています(笑)。
ひとつは壊死性リンパ結節炎。これはあの…ググっていただけると、みなさん驚かれると思いますけど、一般名じゃねえ…学術名「菊池病」というですね、菊池先生という先生が発見した奇病なんですね。
これに罹って、実質上…最初にオチを言ってしまうようですが、その病気に罹ることで、この街を出るんですけども。
それはもう高円寺のラストタイムということで、それが一個死にかけた時ですね。それはもうホントに死にかけました。臨死したんで。
見舞いに来た友達がみんな、楽しく話した後、「じゃあね。」って言うと、そいつのすすり泣きが聞こえる…っていうですね(笑)、あの状況に。
ワタシの状況…ワタシもうパイプだらけで、体重が20キロぐらいになりましたから。それ見てみんな泣いたというね、病気をやりました。まあ、それを克服して、元気になったわけですけども。
もう一個死にかけた病気ってのがありまして。
これはですね、リスナーの方でも経験されている方、あるいは現在その症状に苦しんでいる方、もしくは潜在的にその病因というんですかね…症状の…まだ発症していないだけだけども潜在的患者の方などがいらっしゃると思いますので、なるべく危険性の…ハザードが無いようにですね(笑)、明るくサラッと話しますが
ワタシ、パニック障害になったことがあります。これは不安神経症という…神経症の中の極端な症状のありかたですね。
パニック障害に苦しめられまして…芸能人だと、「どんだけ〜〜!」でお馴染みのIKKOさん、あるいは中川家のお兄ちゃん等々、何人かパニック障害をカムアウトされている方もいますが。
ワタシも吉田豪さんの「サブカルスーパースター鬱伝」という本にまとめられておりまして。ワタシ以外全員が鬱病で…というか抑鬱神経症で、ワタシだけがパニックっていう、変わった本なんですけど。
その最初の一番えげつない発作ですね…を起こした場所が、前置き長かったですけど…この現在「漫画空間」になっている、当時「珈琲貴族」でした。
え〜…楽しくコーヒーを飲んでいたところ、突然パニック発作に襲われまして、いろんな本だとか…あっちこっちで喋っている事なので、コアファンの方にはお馴染みかもしれませんが…。
とにかくパニックが起こるとですね、心拍数が上がって、血圧が下がりまして、体温がどんどん下降するんですね。で、もう…視野が狭窄。目の前がどんどん狭くなってきて…。
とにかく、鬱病ってのは「死にたくなる病気」、パニックってのは「死にそうになる病気」と言われていてですね(笑)。とにかく発作がくると、「死ぬ、死ぬ…オレは死んでしまう。」という状態になりますね。
その時に、まず…とにかく息が出来なくなりますので、ものすごい頻脈になりますし。
息が出来なくなるので、上着を脱ぎ、それでもまだ苦しい…ので、下に着ていたシャツのボタンを全部外し、それでもまだ苦しいのでズボンのベルトを外し、それでもまだ苦しいので…あ、これは今でも変わりませんけど…ズボンを全チャック開けまして、それでもまだ苦しいのでズボンをヒザまで下ろして…。これを喫茶店の中で、ハアハア言って脂汗をかきながら…そういう状態になったんですね。
今でも忘れられません、遠巻きにワタシを…「何だ、この客?…どうしよう。」と思いながら見ている、当時の「珈琲貴族」の女の店員さんですよね。もう…気持ち悪くて近付けないわけです。「お医者さん呼びましょうか?」とか「お具合いかがですか?」って言うことも出来ないぐらいの激しい形相でですね、ワタシほぼ…プロレスのブリッジするようなぐらいに仰け反りながら(笑)、どんどん服を脱いで。
結果的にですね、ほぼ…「まっぱ」になりまして。「まっぱ」ってのは、まあ…全部洋服を置いたわけじゃないんですけど、こう…全部開いてしまってですね(笑)、ビランビランの…もうほとんど素肌が見えてる非常にセクシーな状態で。
で、もう過呼吸になってきたんで、立って歩くことも出来ずにですね、千円札を入口のところにあるレジに置いて、この今目の前にある(笑)…このドアを…這って降りてきました
そして今、階段があるわけですけど(笑)…ここを当然…今、手すりがあります…普通だったら、手すりに…ま、映画なんかでもし芝居やるとしたらですね、手すりにしがみついてハアハア言いながら降りるという演技をするんでしょうけど。
実際のパニック発作…ワタシ重症でしたから、それどころじゃありませんで、この階段をどうやって降りたかというと、こういうふうに(笑)…四つん這いになってですね、こう…這って…今やって見せてますけど。こういうふうに這いながら、こうしてこう…降りてきたんですね。
で、もうズボンも全部…ほとんど、くるぶしまでズボン下りちゃってますし、上着も全部脱げちゃってて、肩まで下りちゃってますから、もうかなりセクシーな…やる直前みたいな格好のままですね、床まで降りて。
で、もう死ぬんだ…と。当時、パニック発作だと思ってなくて、心臓病だと思ってたんですよね。心臓神経症という言葉も昔ありました。これは誤解なんですけども。
で、この地面…地面に下りました。今、階段降りて地面まで到着しました。この地面に到着して、「もう自分は死ぬんだ。」と。「ここで救急車を呼ばなくてはいけない。」と。
あの時たしか31…とかだったと思うんですけど、ケータイを…あれ持ってたのかなあ…でもあれケータイですよね、買ったばっかりだと思うんですけどね。そのケータイで119番に電話して(笑)。
まさにここです、今。で、電話して。それもですね、今は立ってますけど、今人通りがあるんでやって見せられませんが、どうやって電話したかっていうと、完全に臥せってですね、半裸のまま地面に臥せって、ケータイで電話して
「心臓の発作が起きました。」と。「このままだとワタシは死んでしまうので、救急車を用意してください。」と言ったところですね、出てきた…対応してくれた方が、非常に手慣れているというか、ま…それはそういうものの対応官として当然の対応をしたんでしょうけども。
非常に優しい感じでですね、「えー…ほんとに心臓病ですか?…心臓に手を当てて、ちょっとどのぐらいの速さか、ドキドキドキ…っていう言葉で言ってもらえますか?」って言われて(笑)。
要するにその段階で、「オマエ、言ってる事大げさだよ。心臓病でこのまま死んだりしないよ。」っていう暗示が掛かってるんですよね。
で、そん時からお相手は、「こいつは初期のパニック発作で、自分のこと…心臓病で死ぬと思い込んでる、年間何千本もかかってくるアレのうちの一人だ。」と判断したんでしょうね。
非常に慣れた感じで。「はい、ドキドキドキ…言ってくださーい。」って言われて(笑)。赤ちゃんのようにあやされてですね。
で、「はい。ドキ、ドキ、ドキ、ドキ…。」
「はい、その速度では心臓病ではありませんよー。ちょっと代わりますね、担当の方代わりますー。」て言ったら、さらに優しい人が出てきてですね。
「えー…もしもし、私担当代わりました。動悸以外は何か症状ありますか?」って。
「いや、とにかくもう気が狂いそうです。ワタシはもう死んでしまう。動悸もありますし、冷や汗もありますし、指先がもう震えて、冷たくなって…もう大変なんだ。」って話しましたら。
「あー、それはですね…ひょっとしたらなんですけどねえ。神経症の可能性がありますねえ。」って(笑)。
「ちょっとね、最初はみなさん受け入れ難いらしいんですけど、心臓とか恐い病気じゃなくてですね、ちょっとした精神的な疲れからくる、神経症っていう病気があって、パニック発作っていうものがありますので、その可能性がちょっとあるんですけども。救急車必要でしょうか?」って言われた段階ではですね、もうすっかり…何ともなかった(笑)。
夢から醒めたように症状が収まってて、「あ、どうもすいません。」みたいな感じになってですね(笑)。
「あ、しまった…。」って言って、全部洋服を着替え直して、「救急車は必要ありません。お騒がせしました。」って言って、帰ったのがこの場所ですね。
その日、その時、この場所で…(笑)。
ワタシは自分でも…なかなかね、受け入れ難いんです、最初は。いろんな身体的な症状だと思い込みたがるんですよ。神経症なんてやだもんね、自分が。
今でこそカジュアルになって、あれも。結構、鬱病とか言っちゃう…鬱病じゃないのに言っちゃったりする人も多いんですけど。当時、90年代は神経症ってのは、結構今よりもかなりシリアスなイメージがありましたんで。認められなかったですね。
とはいえ、まあ…認めざるを得ない…ということで、「うわぁ…オレは精神科に行くんだ〜。」と思いながら、症状は収まってスッキリしたものの、ガックリと肩を落としてですね、「オレは神経症の患者なのだ。」と思いながら、ここをトボトボ帰った記憶がですね、今もう鮮明に蘇りましたけども。
とにかくですね、パニック障害の方…ね、ホントに症状苦しいですね。死ぬかと思うほど苦しいです、あれは。ですけど、適切な治療を受ければ、必ず治ってですね、これこの通りワタシのようにですね、働き過ぎるぐらい働く人間に変わりますので。諦めずに頑張って…「頑張って!」って言うのはあまり良くないんですけど、気楽に治療していただければ必ず治りますので。これこの通り、こういう例がいる…ということで、今、「桃太郎寿司」の方向に漠然と歩いています(笑)。
まあ、いくらでも思い出が…8年住みましたからね。

夜に生きるもの

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サブカル・スーパースター鬱伝

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