「オヤジ狩りに遭わないために。」

「粋な夜電波」第239回は年内最後の放送。
オンエア日がクリスマスということで、クリスマスにふさわしいロマンティックな話…になるかと思いきや、物忘れが多い話から難病で死にかけた話に。
流行語についていけないとオヤジ狩りに遭っちゃうよ、ということを作品の中で予言されていた小松左京氏の小説の話をされた部分を文字起こししてみました。

Verve Unmixed Christmas

Verve Unmixed Christmas

Verve Remixed Christmas

Verve Remixed Christmas

えーとね、さっきね…そうですね〜…守銭奴ミランダ・カーがワタシの(笑)…すごい語呂がいいんだよね、「守銭奴ミランダ・カー」ってのが。ワタシの今年の流行語大賞だ…と申し上げましたが、今年の2位はですね、坂上の前に二郎なし、坂上の後に二郎なしだ!」っていうね。これ2位ですね(笑)。
これ厳密には、一番長いバージョンで言うと、「『二郎ラーメン』、『すきやばし次郎』だ、『ファブリス・ジロット』だって『ジロー、ジロー』言やがって!…坂上の前に二郎なし、坂上の後に二郎なしだ!」っていうのがね、完璧なバージョンなんですけれども。
これはだいぶ言いましたねえ、今年はねえ。暮らしの周りにね、「ジロー」が多いんですよね。
ま、ワタシはラーメンは食べませんので。ま…年に2回ですかね?…ぐらいしか食べませんので。いっぱいるんですよ。「ジロリアン」って言うの?…いっぱいラーメン食べて、肝臓壊したり膵臓壊したりするっていう人(笑)。まあ、これを言うと怒られるか?…二郎ラーメンに。食い過ぎでね。食い過ぎにご注意ですよね。普通に食べていたら大丈夫だと思いますけど。
自分の生徒なんかにね、「先生、今日、二郎ラーメン行くんすよ」なんつって。また別の洒落た生徒がね、「やっと取れましたよ。『すきやばし次郎』行くんですよ」っつって。で、また違った洒落た生徒がね、「先生、いつもお世話になりました。これファブリス・ジロットのお菓子です」って。…「『ジロー、ジロー』言いやがって!…坂上の前に二郎なし、坂上の後に二郎なしだ!」っていうね。「飛びます!飛びます!」っていう(笑)。
これが2位ですよ、今年の。無理繰り2位ですよね、はい。
まあ…こんなことを言ってるとね、オヤジ狩りに遭っちゃうんで、もう(笑)。オヤジ狩り、恐ろしいですよね。坂上の前に二郎なし」なんか言ってたら、典型的なオヤジ狩りですけどね。
とにかく、「許してちょんまげ」…これ、ダメですね(笑)。この段階で狩られてしまいます、これ。ええ。まず、目をつけられると思います。「許してちょんまげ」で。
あとね、「ヤッバい、これ、…もう最高!…タマランチ会長!」。これもね…あの…(笑)。フォーカスされやすいですから。気をつけてください。「タマランチ会長」ね。はい。
あとね…「めちゃんこ関係あります」っていうね。「めちゃんこ」ヤバいです。
あと…音楽演っている…要するにおやじバンドをやっている方に多いんですけど、「ビシバシ楽器」っていうね。これも気をつけて頂きたいです。「ビシバシ楽器」(笑)。
もうこれで、この4つ揃ったら、完全にフォーカスされますからね。オヤジ狩りの子たちにね。はい。
でも、わかんないですよ。すでにね、ワタシなんかの感覚だと…「キボンヌ」(笑)。あとね「いんじゃね?」「キターーーー!!」そろそろオヤジ狩りの方に寄ってんじゃないかと思うんですよね。時が経つのは早いもんで。
「キボンヌ」いい調子で使っているとね、狩られるんじゃないかっていうね。
あのね、小松左京さんのね…これ…リスナーの方にはなんでしょうか…SFが好きな方、特に日本のSF好きな方なんかがね…ワタシほら、ツツイストでもありますし。これが美少女だけじゃなくて、SFファンでもあって吾妻ひでお先生とも仲良くさせていただいたりすることによって…
っていうか愚兄がね、SFと呼べるんだかなんだかわかんない…(笑)…「SFと呼べるんだかなんだかわかんない…」ってのもどうかと思いますけど、なんかそんなような小説を書いている都合上、リスナーの方にもね…SF好きの方が多いと思うんですよね。
小松左京さんのね…小松左京さんってやっぱね、ヤバいと思うんですよね。さよならジュピター」作った人ですからね。あの映画はもう…ドカン!ですよね。
年に1回はね、ワタシ観る映画があるんですよ。精神の浄化のために。その1本が「さよならジュピター」。
もう1本が…カールスモーキー石井さんが監督やった「河童」っていう映画があるんですけど(笑)。これはね…精神が浄化されますね。「何をやったっていいんだ、世の中は!」って思います、ほんとに。
あとはね…田村正和さんがニューヨークでテナーサックス奏者、ジャズメンですね…だから…役を、あの髪型とあのしゃべりとあのスーツのままやるっていう(笑)。で、相手役が伊東美咲さんっていうね、ものすごい爆弾映画があるんですよ、「ラストラブ」っていう。
これはね、1年に1回、日本のジャズ関係者全員がね…集まってね、一箇所にね。日本のジャズ関係者、全員集まったって1万人かそこらでしょ?…それはもうドームで上映すればいいんですよ、「ラストラブ」。で、もうジャズ関係者以外お断りにして、ラストラブ」を上映してればですね、もうジャズミュージシャン…悩むことないと思うんですね、1年間ね。まあ…そういう映画です(笑)。

で、それはともかく…何の話してたんだっけ?…自分でもわかんなくなっちゃいましたね。
えー…小松左京さんでした。小松左京さんの…ワタシねえ…タイトル忘れちゃって。
最近ね、物忘れが激しくて…こないだ戸波ディレクターにメールしようと思って、「トナミ」って名前が出て来なかった時にはね、やっぱちょっと医者行こうかなって思いましたね(笑)。
あの〜…戸波が出ないの。「あのディレクターの、メガネの坊主の…」とか言ってるわけ(笑)。「えええ〜〜っ!?」っていう(笑)。
「戸波さんでしょ?」って言われて。「そうそう…あっ…あーあーあー。」と、思い出しましたねえ。
あの…30ぐらいの時にね、「ジョン・コルトレーン」が出て来なかった時にはね、かなり焦りましたけど。
え〜…おかげさまで何もなく52になりまして。
先週の前口上の、脳動脈瘤の話ってフェイクですよね?」って、いやリアルですよ、全然。あれは全くリアルなんで。
まあ…カムアウトっていうか何ていうか、文筆業…ん?…そんなカムアウトしてねえか、オレこれ…
えっとね、ワタシ…「壊死性リンパ結節炎」っていう熱病に罹ったんですねえ。98年に。98年ってことはいくつ?…35か。
35の時に…死にかけたんですよ、そん時。ほんとに…危ないとこだったですね。臨死しました。
熱がね、42度まで上がる病気で、そいで42度以上上がるとね…脳細胞が壊死してくんの。
なんで、上がると障害が出るんで、とにかく完全看護体制で、常に体温計って42度に近づいたら、ものすごい…座薬と注射で熱下げるんですよ。
ま…それをね、何ヶ月か繰り返すの。熱が上がらなくなるまで。そうするとですね、36度と42度の間を一日4往復ぐらいしたのを2ヶ月続いたら、体重が30kg台になって、友達みんな「死んだ…」と思ってね、ワタシがね。…って事がありましたね。
その時にね、その病気を治す薬がね、あれなんですよ…ステロイド。この病気はね…ほんとにね…自分でもどうしたことだろう?と思うんですけど。
この病気を発見した…「壊死性リンパ結節炎」っつって…リンパ…リンパ腺が腫れるでしょ、誰でも風邪ひくと。だけど、そこに結節ができたりしても、壊死しないですよね。自然と消えるわけ。それが消えずに残っちゃうんですよ。リンパ腺の壊死が…結節として。
だから首の周りとか体中のリンパにね、壊死したリンパの結節の後が溜まっちゃって…凄い病気ですよ、ほんとに。よく我ながらアレ切り抜けたな〜と思うんですけど。
まあ…ステロイドで治るって事がね、はっきりしましたんで。ステロイドって男性ホルモンでしょ?…言われましたよ、オレ。「途中でものすごい怒りっぽくなったり、喧嘩っぱやくなったりする事がありますんで、気を付けて下さい。そん時は私殴って下さい。」って医者が笑いながら言ってまして。そのぐらい男性ホルモンを入れんの。
で、男性ホルモンなんか入れたらね、さぞかし…そういった所が活性化されるだろうと思うかもしんないですけど、病気治すために無理矢理突っ込むんで、やっぱそういう所がね…壊れるんですよね。
で、そん時に、インフォームド・コンセントっつって、事前に「これこれこういう後遺症が残りますけど、この治療受けますか?」っていうのをね、するわけ。どんな病気でもね。最近は精神病や精神医療一般でもインフォームド・コンセントしたほうがいいんじゃないか、家族が…とか言われてる世の中ですけど。
そん時ね、インフォームドしたんですよ。そのインフォームドはどういう事かって言うと、ま…「子どもが出来なくなる」…精巣がクラッシュするんで、「そんでもいいですか?」って。
ワタシそん時もう…2ヶ月間の記憶ほとんど無いんで。熱に浮かされてて。で、熱が下がると寒気でガタガタ震えてね。ベッドから落ちないように看護婦に押さえられたりしたんですけど。
ま、ワタシの病気自慢しててもね…こんな年の瀬にね(笑)。
…あれなんですけど、なんでこの話こんな長引いてるかっちゅうと、そん時に…当時は一緒に住んでたワタシの家内が、インフォームドでOKって言ったんです。じゃないと、ワタシどっかに…脳に障害が出るんでね。そこは守ろうとしたんでしょうね。その代わり、まあ…捨てるもんは捨てる、と。…いうわけで、ワタシは子どもが出来ない身体なんですよ。これ…言った事ないよね?…ひょっとしたら初めてかもしんない。
ま、ま…子どもが出来ないのは、そんな…欲しいと思わないんで構わないんですけど、自分で選択するんじゃなくて、出来ないって決められちゃうとね、なかなかね。
まあ…ほんとにお恥ずかしい話っていうか、その…神様の采配はスゲエなって思うんですけど。やっぱ人間ね、一番悪さをした所をやられんだなって思いましたね(笑)。ほんとに…。
まあまあ…あんまり「昔も俺はさぁ…」みたいな話は、一番オヤジ狩りの対象になりますから(笑)…言いませんけど。他はね、ワタシ…どんなに酒呑んでもね、膵臓も肝臓も全然大丈夫なのよ。
銚子で産まれたから醤油が大好き、刺身は醤油を飲むために食う、只の醤油のアテだと思ってますからね。刺身はね。そんな人間ですけど、腎臓も心臓もビクともしない。肝臓も全く問題無い。呑めば呑む程、肝機能良くなりますからね。
そんな奴が、クラッシュしてんのが、ま…そっちのほうと、あと…脳ですよね。こないだ言ったように…
まあ、右脳と左脳が離れてるところにもってきて、動脈瘤見つかって。ま、安全だとは言われましたけども。爆弾があるのはそこですよね。
脳とシモですからね。一番悪さしてる所ですからね、ワタシがね(笑)。肝臓で悪さしてないんで。酔っ払っても誰にも迷惑掛けてないんで。ま…悪ぃ事は考えるわ、シモはそんな感じで…まあ…なんちゅうかね、やっぱりその…神罰というかね。悪さをすると、この歳になるとそこがやられんだな…ってのをね、身に沁みてね…感じてますけど。
小松左京さんの話、どっか行っちゃいましたけどね。
小松左京さんが、短編で書いてるんですよ。すごい早いですよ。60年代末だと思うんですけど。
老人がね…オヤジ狩りに遭って、地上に出ると子どもに殺されるっていうんで、地下に潜ってんの。で、地下に潜って、整形手術と化粧と…若作りをして、少年として地上で生活して仕事をして、地下に潜ることで自分の本当の老人の状態に戻るっていう短編小説があるんですよ。
で、その時にその老人達は、同じ身の上である老人…ま、中年かな…ちょっと忘れちゃいましたけど…と、やっぱ連携していかないと、一人でやってても間に合わないから。情報交換してる…インターネットも何にも無い時代ですよ。1960年代、もしくは70年代初頭の小説ですよ。
で、流行語と踊りのステップを間違えると狩られるから、今流行ってる流行語の一覧と踊りのステップ名とステップのやり方ってのが、新聞で送られてくるわけ。同じ地下生活している中年に。
もう…名前は全部忘れちゃいましたけど、「なんとかのことをこう言う…のは今年で終わりです。来年からはこうなります。」って、流行語が全部一覧で書いてあるわけ。で、その事を必死に読んで…若作りしないと生きていけないオヤジ達の話っていう短編があるんですよ。何の短編か分かるって方いらっしゃると思いますんで、これは教えて下さい。メールでぜひ、送っていただけるとありがたいですね。買ってまた読みたいんでね。
え〜…なんかとんでもない話になりましたけども(笑)。
ま、ま…クリスマスパーティーシャンパンだ鶏だ赤ワインだケーキだ…なんつって終わったところには、ちょうどいい苦さの話だったのではないかと思いますが。

小松左京マガジン 第25巻

小松左京マガジン 第25巻