「クリスマスに食べる鯉。」

「粋な夜電波」第243回は「ポーランド映画サウンドトラックとしてのジャズ特集」。
AMラジオではなかなか聞けない楽曲を、映画の解説とともにオンエアした渋い回となりました。
ポーランドジャズのツートップの話をされた部分を文字起こししてみました。

Jazz in Polish Cinema

Jazz in Polish Cinema

はい、どうも。「菊地成孔の粋な夜電波」。ジャズミュージシャンの、そしてですね…
何ヶ月ぐらい前ですかねえ〜…4〜5ヶ月ぐらい前かな?…兆候としてですね、兆候…兆しですね…兆候として真矢みきさんと森高千里さんがだんだん似てきている」と。ま…労力士(ロレックス)ですね。だんだん似てきているという報告をしたんですけれども、ほとんどスタッフ、番組を聞いている友人らから、何の反応も得られず(笑)、まあ…最初に気が付いてしまう人間の…炭坑カナリアというんですかね…の悲しみを噛み締めて、「まあ、誰もまだ気が付かないんだな。」という状態が過ぎまして、「やっぱ、真矢みき森高千里…似てるわ!」と言う友達がだんだん増えてきてですね。
だんだんやっぱりもね…奥田民生さんじゃありませんよ…っていうネタも懐かしいですけどね(笑)…民も真矢みきさんと森高千里さんが似てきてるんだっていうことをですね、「どこが似てる、ここが似てる」って感じじゃないですよね、全体的に似てきちゃってるんで。…に気が付き始めたと思うんですけどね。
この際だから、もうチームは作ってほしいですよね。二人で音楽活動する…ということで、一時期の…誰でしたっけ?…童謡を歌う…「夜明けのスキャット」でブレイクした…えーとね。あ、そうそうそうそう(笑)…オレが由紀さおりの名前を忘れてどうすんだ?って感じの番組ですけど、由紀さおりさん姉妹みたいにね、二人できれいにハモりながら、真矢みきさんと森高千里さんが歌われたりなんかしたら、相当素敵だと思っている…菊地成孔が(笑)…TBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。
今週はですね、何と言いましょうか…簡単に言うと、先ほど説明したように、ポーランドの映画音楽特集っていうか…それはすべてジャズですので、こんなのもう誰でも知ってる事ですから言うのも野暮という話ですけど、フランスがまず最初に映画にモダンジャズ使いまして。
マイルスの「死刑台のエレベーター」が一番最初だという説が、なんか定着しかかっちゃうんですけど、マイルスの「死刑台のエレベーター」は全然一番最初じゃなくてですね、もっとその前の段階があって。MJQとロジャー・ヴァデムの「大運河」とかね。そういうのがあって、満を持してマイルスが出てったら大爆発という、マイルスのスター性を物語ってるわけですけど。
それが58年なんですけどね、「死刑台のエレベーター」が。その58年から大体61〜2年というのは、もう…特に若手が撮る斬新な映画…フランスだとそれはもう端的にヌーヴェルヴァーグと呼んでましたけども。「東欧ヌーヴェルヴァーグ」とかね、日本でも後に「松竹ヌーヴェルヴァーグ」とかありましたけど。
そういう若いクリエイターの斬新な作品にジャズが絶対くっ付いてくるんだ、というのが定番だった短い時間があるんですね。蜜月(ハニームーン)だった時間が。だいたい58年初で、国によって違いますけど、60年代中盤には終わってくんですけども。
それのポーランド版ですね、…のボックスセットが出てまして。まあ、作曲家が二人しかいないですね(笑)。
一般的に非常に有名なクリストフ・コメダと、あんまり一般的に有名じゃないけど、才能はもうツートップと言っていいね…これツートップの話、真矢みきさんと森高千里さんの話から引っ張ってるって事にお気付きいただけると、まあ…嬉しいわけなんですけど(笑)。どのくらい嬉しいかって?…こんーなぐらいですけどね(笑)…嬉しいわけですけど。
ツートップなんですね。まあ、アンジェイ・トシャコフスキーってのは…そうですね、AMでもFMでもほとんど流れたことがない音楽家ですので、今日ちょっとアンジェイ・トシャコフスキー…まず1曲聞いてみましたけどね。
特にそんなに…ポーランドの当時の映画状況、ジャズ状況って話を詳しくしようっていう日でもないですけども。
まあ…ポーランドがどんなに複雑な歴史の国かって、もう全然理解できないですね。
前口上で言った「クリスマスに鯉を食べる」ってのは本当の話ですからね。
ワタシ…現在だとボスニア・ヘルツェゴビナセルビア・モンテネグロに分…どうなってんだろうな?…あそこら辺くっ付いたり離れたりが激しいですからね、現状どうなってるかわかんないんですけど。当時まだボスニア・ヘルツェゴビナセルビア・モンテネグロって言う前の、ユーゴスラヴィア…旧ユーゴとか新ユーゴとか言ってた時期ですね。新ユーゴの頃かな?…に、あの一帯をツアーしてたことがあって。
「まあ、やっぱ…ほんとに暗いし難しい地帯だよな…。」っていう。
ちょっと…ね?…クレージーキャッツで産湯を使い、成人の頃にはバブル期だったっていう(笑)…日本国民であるワタシには…。
映画なんかでロマンティークに知ってた東欧っていう感じを生で…
あ、そうそう。ある時、ちょっとホテルの手配がおかしくなって。ジャズのツアーなんかに付き物なんですけどね。
「1日だけ友達の家に泊まってくれ。」って言われた時があったんですよ(笑)。まあまあ…よくある話です、これ実際。
そいで、その時に…友達の家がポーランドだって言われて(笑)。何時間電車乗ったかな?…相当電車乗ってポーランドまで行って。その日のレストは…つまり宿は、主催者の友達のポーランド人の家(笑)…まで行った事があるんですよね。
それがね、12月の19か20日か…そんなんだったと思うんですけど。そん時、ワタシ現物見たことあるんですよ。
「ゴメン、今…風呂が無いんで、シャワーで我慢してくれ。」って言われて。すんごい寒かったんですけど。
「えっ、どうして?」って思ったらね、「バスタブに鯉がいるから。」って言われて、「ええ〜っ!?」っつって。
「バスタブで鯉飼ってるの?」と思ったら、「食べるんだ、これ。クリスマスに。」って言われて。びっくりしましたね。
これが、まあ…ワタシの、数少ない東欧経験のひとつですけどね。
その後それが病みつきになってポーランドによく行くようになった…って事は、さすがになかったですね。
ワタシはやっぱり…暖かくて楽しい感じのほうが。ま、少しバカぐらいが好きだな…っていう。
ポーランドが深淵でバカじゃないって言ってるわけじゃないんですけどね(笑)。単なる雑なイメージですけどね。