「R&Bはエロい音楽としての役目を終えたのか?」

「粋な夜電波」第254回は、3週連続の生放送。急遽「インディーR&B」を特集。
エロい音楽としての役目を終えてしまったメジャーのR&Bに不感症になってしまった方々に、自主制作で美学を貫いているアーティストたちの音源を紹介。
時代が変われば、そのジャンルミュージックの持つ役割も変わる…その中でも良い音楽を見つけて反応していくのが、心身の健康にも良いですよ、というメッセージが伝わった回になったと思います。
自主制作のR&Bについて説明された部分を文字起こししてみました。

えーとですね…今日は生なのに企画ものっていうね。生だったら気楽にフリースタイルが一番いいんですけど。
ちょうど、なんか企画ものの音源が揃ったとこなんでね。
まあ、先ほども…前口上からずーっと連続で言ってますけども、音楽…これはね、前に松尾潔さんが来た回が、非常に伏線になってるんですけどね。
松尾潔さんは日本を代表されるR&B…日本のブラックミュージックのプロデューサーであり、同時に欧米のブラックミュージックの批評家として、非常に優れた第一級の方ですけども。
そん時に、ちょうど…「R&Bが今、元気ないんだ」と。ちょっとした…「『ロビン・シック裁判』などによるダーティーイメージも関係してるのかな?」…なんて話になって。
それよりも今、全体的にR&Bってものが、昔みたいに濡れる音楽…とにかく「『エロい』と言ったらR&B!」といった時代ですよね。
R&Bがね、エロい音楽になっちゃって、PVはタレントさんがほとんど…ヤらないだけでソフトポルノに出てるのと同じぐらいのレベルになっちゃった…ってのが、いつからか?っていう話などし始めると、生放送なので終わらなくなってしまう可能性があるので(笑)…サクサク進みますが。
とにかく、ちょっと前までのR&Bってのは、セクシーでエロいという役割を負ってました。
ただ、まあ…音楽が…音楽だけじゃないんですけどね、何にでも役回りってのがあって、「お前はこの役な。」ってのが振られるわけですよね。それがこう…時代の変遷によって、あるいは何らかの集中的なアクシデント等々によって、ガラッと役割を変える…というようなことが、やっぱり世の中には多々ございます。
例えば、極論的にですけども、ロックンロールって音楽は最初は反体制的な音楽だったんですけども、現在はいい意味で…ほんとにディスじゃないですけどね、いい意味で完全に体制の音楽になりましたよね。体制的な音楽になったわけで、これは転向したわけです、完全に。「てんこう」って学校が移ったって意味じゃないですよ(笑)。
驚くべきことにですね、「パンク・ロック」なんてのは、生成された瞬間、ワタシ…テレビの「世界のニュース」で観た組ですけどね。
最初に…この場合「ロンドン・パンク」ですけど、ま…ピストルズですけど。ピストルズが最初に出て来た時、ワタシ…音楽のニュースとか音楽雑誌じゃなくて、えーと…名前出しちゃっていいのかな?…Nで始まってHが真ん中を繋ぎKで止めを刺す…放送局が(笑)、テレビでやっていた「世界のニュース」っていう…今で言うと「YouTube面白画像紹介」みたいなもんですよね…その「世界のニュース」で、「ロンドンでこんな変わった音楽が今演奏されています。」っていう珍ニュースとしてジョン・ライドンが映し出されたのを観たのが最初でしたけれども。
まあ…とにかく「破壊せよ!」という…「パンクである」という、あのパンクの誕生から幾星霜、今やパンクという…音楽の内容というよりね、「パンク・ロック」っていう言葉とか、「パンキッシュなもの」っていうものが、破壊よりも様式美的に…つまり構築に変わったってことね。これは転向というか逆転ですよね。
ジャズなんかは、出目がね…「レストランBGM、もしくはホテルのボールルーム…ダンスホールのダンスミュージックだった」という出目がありますけど、これをこう…ギリ忘れてないっていうかね。
ま、日本の特殊な事情ってのがあって、学生運動っていうあれが入ってますから。学生運動が入ってるのは日本だけじゃないですけど、「いつ学生運動が、20世紀に、はまり込んだのか?」ってのは国によって違いますけどね。
日本は、まあ…学生運動があって、あの時ね…一律、ユース・カルチャーってのは、アレがコレが…っていうんじゃなくて、何もかもが…マンガですら「ユース・カルチャーってのは左翼で革命志向だ」っていうことに一回なった…っていう時があるから。
その事考えたら、ロックが転向しただの、ジャズが転向…ジャズだってね、一時期、フリー・ジャズにかかわる…なんてのは革命運動に関わる…共産主義革命に、あるいはもっとバクーニズム的な、無政府主義革命みたいなものに関わるのだ、といったような…ま、無政府主義に革命は無いですけどね、社共の方が革命があるわけですけども…それはともかく。それぐらいの迫力で、大学のジャズ研が動いていた時代があったんですよね。
その事言っちゃうと、「アイツが転んだ、コイツが転んだ」言うのもアンフェアかな…というところもあるんですけどね。全員転んだとも言えるんですけど。
ただ、まあ…役割変えるっていうことは、やっぱりありますよね。
レゲエの役割も変わりました。ヘヴィメタルの役割も変わりました。ボサノヴァの役割も…ま、徐々に変わってんじゃないかな?っていうような昨今ですね。
やっぱり「エロい音楽としてのR&B」ってのは役割を終えて…
これはワタシの…拙著、拙著が何冊かあるんですけど、その拙著の中でも最も売れない拙著のひとつに(笑)…「聴き飽きない人々」っていうディスクガイド本があるんですよね。そん中で既に、「R&Bはエロくないんじゃないか。」っていう…相当前の本ですけど。
ワタシは、指摘が早過ぎて、そん時は「バカじゃないの?」と言われるだけで、後年になって「やっぱり言う通りだったでしょ?」って言った時には誰も覚えてない…ってことで、生きている男ですけども(笑)。
その時に既に、「セックスとマッサージの違いだ。」っていう。男と女がベッドの上で裸でやる事として、セックス方向に流れる音楽と、マッサージ方向に流れる音楽で、R&Bは今後マッサージの音楽になっていくんじゃないか。癒されて、それで活力を得て、もうちょっと欲張っちゃえば愛も得れる…というような感じに行く可能性が、あるかもね…どうかもね…といった考察をその本でしてるんですけど。御興味ある方はお手に取っていただければ、という感じなんですけどね。

聴き飽きない人々

聴き飽きない人々

(中略)

…ですけど、もう今はR&Bは頑張っても頑張ってもエロくなくなってしまっている、というような状況がありまして。
ところが…これも松尾さんとの対談が伏線になってるんですけど、R&Bってのは元々お金があって、つまり…何ての?…車の中にシャンパン・クーラーがあって、女の人をいっぱい乗り込ませることができて、場合によっちゃそのままバブル・バスとかも付いてて、で…パーティーやってて、プールがあって…っていうような(笑)、あるじゃないですか、図式的なかたちがね。よしんば、それが借り物のセットとかだとしても…ですよね。
そういうかたちのもので…つまり贅沢でお金があるっていう土台の上で、セクシーなのだ…ということをやるわけで。ラブと、そこは…純愛と切り離されてるようなとこが、ちょっとあるわけですよね。
それなのに、松尾さんとの対談で最後出てきたのは…もう時間ギリギリであんまり話せなかったんですけど、最近「インディーのR&B」、つまり自主制作のR&B…もっと端的に言ってしまうと、「お金があんまり無いので、メジャーでやりませんよ。」っていう…あるいは「お金はあるかもしんないですけど、メジャーとはいろいろあって出来ませんよ。」って事なのかもしんないんだけど。
いずれにせよ、プロダクツが自主制作のR&Bってのが出てきたんですよ、いっぱい。
で、これらが意外と…何っつったらいいんですかね…「食える」というかね。
「…ですよ。」って話を松尾さんにしたら、松尾さん顔を曇らせて…松尾さん自体が大変なリッチマンですからね。
「R&Bは貧乏か貧乏じゃないか、じゃない。貧乏臭さが無い音楽がR&Bなんだ。」っつって。
で、まあ…そこはほんとギリギリなのね。
今日御紹介する、あと3曲ってのは、全部自主制作で。プロダクツ…つまりCD盤が今手元にありますけど、はっきり言って貧乏臭いんですよ、全部(笑)。
全部貧乏臭いんですけど、ただまあ…一所懸命頑張ってやってんのね。1曲聞きましょう。
もうこれはね、メスローンですよね。「アンダーグラウンドR&B界のR・ケリー」って言われてますからね、メスローンはね(笑)。
もうアルバム1曲が…スロー・ジャムとキラー・スローばっかりですよね。ま、クラブバングっていうんですけど、要するに…踊れるような感じのものすら無い、という感じですね。


My Life Reinvented

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