「『Tea Times』制作に至るまで。」

「粋な夜電波」第267回放送は、先日リリースされた大西順子さんの待望の復帰アルバム「Tea Times」を、プロデューサーである菊地先生が解説しながら全曲試聴しようという特集の前編。
アルバム制作に入るまでの経緯をざっと説明された部分を文字起こししてみました。

Tea Times(SACD HYBRID)

Tea Times(SACD HYBRID)

はい、どうも。「菊地成孔の粋な夜電波」でございます。
え〜…ジャズミュージシャン、そして…タクシー利用の回数では、そうですね…ジャズ界のみならず音楽界の中でも、ひょっとしたら屈指の人物ではないかと思われるワタシなんですが。
ま、タクシー会社にもいろいろございまして、「コンドルタクシー」さんがね、「ライザップ」が多少のスポンサードしてると思うんですよ。
というのは、運転手さんの中で比較的身体が出来てる感じの方(笑)…運転手さんにもいろいろいらっしゃいますからね…の中で、ガッチリされてる方がね、「RIZAP」のロゴが入ったオリジナルゴルフウェアみたいなのを着て運転されてるんですよね。
ただ…「ライザップ」さんにも「コンドルタクシー」さんにも何の恨みもございませんが、単純に「タクシー乗るより歩いたほうが痩せない?」と思ってしまったふしだら野郎(笑)…菊地成孔が、TBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。
今週は…お待たせいたしました…というか、実はもう販売になってるんですが、ジャズピアニストの大西順子さん…復帰作ですね。もうこの番組ではですね、大西さんの引退宣言もこの番組でなさいましたし、復帰作が準備中だって時にも一回出ていただいて、2回出ていただいているんですよね。
で、まあ…足掛け、どっから勘定したらいいか…最初に大西さんと直接お会いして、大西さんが「実は引退するんですよね。」っていう…「ええっ!?」っていう話は、番組でもしましたし、あちこちのメディアで喋ってますから省略しますけども。
最初にワタシが大西さんに会った時は、大西さんが引退を決意されて、具体的には言えないけど「来年何月にやめます。」って仰ったんですよね。ほいで、そっから幾星霜ですよ。あれから4〜5年経つんじゃないですかね。だから、最初に出会った日から勘定すると、5年目の悲願って感じなんですけど。
途中で引退を撤回されて、現場復帰するんですよね。日野皓正さんが「TOKYO JAZZ」の段取りを持ってって、で…ステージ復帰されて。その後、アルバムも復帰するってんで。
で、その前までアタシ…大西さんが「もうこれからはピアニストじゃなくて活動するんだ。」って仰ってたんで、「いろんな事お手伝いしますし、仲良くやらせてくださいよ。せっかくの御縁ですから。」っつんで、トークショーやったり…いろんな事やってたんですよね。
で、その流れの中で、光栄な事に…大西さんってね、すごい数のアルバム出てるんですけど、全部セルフプロデュースで、ほぼ全曲…ジャズのスタンダード曲以外はオリジナル、自分で書いてるんですよね。そんな中、今回に関してだけは、ワタシに全部一任するので、アルバムのプロデューサーやってくれないか…っていう御指名をいただきまして。
で「光栄です、やらせていただきます。」ってことで制作に入りまして、悲願のリリースと(笑)。悲願っていうか…ま、結構時間かけて作ったんですよね。
ガンダム」がね、今おかげさまで絶賛発売中なんですけど。「ガンダム」はね(笑)…この番組で2週かけて、やっぱ「ガンダム」も特集したから、お聞きになった方はお分かりだと思うんですけど。比較的パパッと作ったんですよね(笑)。
手は抜いてないですよ。手は抜いてないですけど、ただ…要するに、「パパッと」っていうか、普通の速度で作ったの、「ガンダム」はね。
だけど、今週来週で聞く、大西さんの復帰作…これ「Tea Times」っていうタイトルなんですけど。これはパパッと作ってないんで。相当な試行錯誤といろんな事があって、まあまあ…ぶっちゃけですけど、もう言っちゃっていいっていうか、あんまり内輪話したくなんですけど。
今日大西さんがいらしてないのも、大西さんがほんとは来て、ワタシがプロデューサーで大西さんがタレントさんで、楽しく喋りながら聞くっていうのが一番いいと思うんですけど。大西さんは御存知の通り、すごいジャズマニアだし頭がほんとにいい方で、喋りがすごいお上手なんですよ。で、ワタシと一緒にジャズの話するとね、ジャズ放談が止まらなくなっちゃうのね(笑)。
で、絶対にこのアルバムの全曲試聴なんて無理だってことで、今回はワタシのほうに全曲試聴の案内は一任させていただきまして。そうですね…今回はほんとに、ジャズミュージシャン、ジャズ関係者、ジャズファンの皆さんを中心に…といった感じの完全にジャズオリエンテッドな回というかね。どうやってアルバムを作ったかっていうような話も含めてですけど。
ま、今言いかけてたのは、比較的時間かけて作ってたので、密な関係になりますよね。ワタシ…プロデューサーとしても…は言うまでもなく、一個人としてもそうなんだけど、女性に…何ていうんですか…手荒い言葉を投げつけるってことは、まあ…めったにっていうか、絶対しないんですよ。できないって言ったほうがいいですね。しないっていうとなんかジェントルメンみたいですけど。できないというか、もちろん自制してる部分もあるんですけど。
まあまあ…よっぽど親密になると、人間甘えが出たり、いろんなストレスが溜まったりして、結構…喧嘩じゃないですけどね、エグい事言ったりするじゃないですか。
で、自分でもびっくりするようなことを大西さんにね、言ったりして(笑)…いまだに謝り続けてるんですけど。そのぐらい密にやってるんですよね。
そんだけ大西さんも本気になったし…初めてです、ワタシね…UAとアルバム作りました、菊地凛子さんともアルバム作りました。で、大西順子さんともアルバム作らせていただいたわけですけれども。
UAの時も、あれ1年越しだったし、菊地凛子さんだって話来てから1年半ぐらいかかってるのね。で、その間ベタ付きですよ、ほぼ。ですけど、まったく全然…静かに楽しくいい調子でやりながら、全部作っちゃったんですけど。
「Tea Times」の時はね…結構…絞り込みましたね、ほんとに。
とりあえず、まず1曲聞いてみましょう。
あの…プロデューサーとして心掛けたのは、「マーケットを広くとる」ことなんですよ、とにかく。ジャズマニア…もともと大西さんが持ってるマーケットだって、なかなか広いわけですけども、もっと「今ジャズ」…NEWチャプターと呼ばれてるものを聞く若い方にも聞いていただきたく。
ワタシがずーっと温めていたアイディアは、それこそですよ…これはガチですけど、大西順子さんと知り合う前からですけども。デトロイト・テクノホアン・アトキンスですとか、ジェフ・ミルズですとか…「ああいったデトロイト・テクノサウンドを、ジャズピアノのピアノトリオにアレンジして作れたら凄いな。そのピアノが大西順子だったら…。なーんていう事を考えながら作ってみた曲です。
アルバムの1曲目になります。「Tea Time 2」。




オリジナル・サウンドトラック「機動戦士ガンダム サンダーボルト」/菊地成孔

オリジナル・サウンドトラック「機動戦士ガンダム サンダーボルト」/菊地成孔