「なるようになるマン!」

「粋な夜電波」第316回放送は、久しぶりのジャズ特集。まだ日本ではあまり知られていないスティーヴ・リーマンの音楽を紹介。
マニアじゃなくても面白いジャズ薀蓄を交え、スティーヴ・リーマンの最新作に至る足取りを解説。最もエッヂなジャズ求道者が辿り着いた結論とは?
トークの一部を文字起こししてみました。
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Mise En Abime

Mise En Abime

今週は久しぶりのジャズBAR…というかね、「JAZZ ATTITUDE」…「ジャズ・アティチュード」って名乗るのも2〜3年ぶりになるんで。ヘタしたら…ほんと2〜3年ぶりですねえ。
ジャズ特集ですね、簡単に言うとね。ま、「電波ジャズ喫茶」ですよね。
「遅まきながらのジャズ界のリーマン・ショックと題しまして、スティーヴ・リーマンっていうサキソフォン奏者…いかにこの名前がめんどくさい名前かっていうことは口上で申し上げましたが。彼の音楽を特集しますが…
口上でね、すでにワタシ、ミスちゃったかもしんないのね。
冒頭で流したスティーヴ・コールマンね、コールマンのほうですね。スティーヴ・コールマンの無伴奏ソロを、あたかも昨年録音されて昨年リリースされた新作であるかのように言ってしまいましたけども。
日本盤がTZADIK(ザディック)から…TZADIKはジョン・ゾーンのレーベルですけども、TZADIKから日本盤が出たのが昨年で、これ録音されたのは…もう2007年ですから、10年前に…2007年ぐらいかな?…そのあたりですね。ほぼほぼ10年ぐらい前の作品ですので。
そこらへんね、ジャズマニアの方はうるさいですからね。ま、そういうこともあるので、スティーヴ・コールマンの無伴奏ソロは昨年の新作ではありません。
というわけで、ティーヴ・コールマンならぬ、そしてデイヴ・リーブマンならぬ、スティーヴ・リーマンですけどね。
ティーヴ・コールマンですら、「そこそこのジャズファンだよ、俺は。」って言う人だって、名前ぐらいしか知らないっていう人多いと思いますよね。
デイヴ・リーブマンはさすがにね、マイルス聴きゃあ、出てきますからね。
口上でも言いましたけど、マイルスの番犬ですよね。
マイルスはBE-BOP発なんで…口上と同じ事言ってますけど…ビーバップ発なんで、ツートップでフロントにトランペットとサックスがいるってことは、いろんなことやったマイルスですけど、やっぱ崩さなかったですよね。どの時期もね。
その役割なんですけど、ビーバップの時はチャーリー・パーカー&ディジー・ギレスピーですから、ほんとにツートップって感じで、押しも押されぬツートップが同じようなソロをとっていくっていうのが売りだったんだけど。
マイルスの…もうほんとにジャンル付けられないね、「マイルス・ミュージック」としか言いようがないんだけど。
マイルスがやったことっていうのは…「番犬」ですよね。御主人様であるマイルスが音数少なく、こう…淡々と…ギリギリ手抜きぐらいの(笑)…音数で演った後、「行け!」っていうと番犬がワンワンッ!っつって、ジョン・コルトレーンとかウェイン・ショーターとかデイヴ・リーブマンとかが、もの凄い勢いで猛烈に吹きまくって。
聴いてる人が「マイルスいいな。いいけど、ちょっと欲求不満だな。」っていう気持ちを全部ガブガブ噛みながら、もの凄い勢いで吹いて…問題を解決していくっていう。
だから、ま、番犬の役割ですよね。いい意味でですけどね。用心棒っつってもいいですけど。
とまあ、そんな前置きで始まりました。スティーヴ・リーマンは、なんと…
今回「ジャズ・アティチュード」なんで、ジャズに詳しくない方が聞いたら、もう寿限無…っつーか、何だかわからないと思うんですけど(笑)。一切のエクスキューズ無く、「ものすげえジャズマニアを相手に喋ってる」っていう体で進めますので。
「知らない話題でも、面白い!」っていう感じで聞いていただければ…という感じですけども。
ティーヴ・リーマンはなんとですね、アンソニー・ブラクストンとジャッキー・マクリーンに師事した…という(笑)。もうこの段階でジャズマニアは吹くっていうね。
アンソニー・ブラクストンっていうのは、のちに…フィラデルフィア大学じゃなかったかな?…ここらへん記憶曖昧ですけど、相当有名な大学の理系の数学の先生になった人ですからね。フリージャズですけどね。チック・コリアと「サークル」やってた人ですけどね。
一方、ジャッキー・マクリーンジャッキー・マクリーンですからね。ま、マイルスのヤク友達ですよ。ジャッキー・マクリーンは。正直言って(笑)。
マイルスのハードバップ期の…チンピラ期の友達ですよね。普通のハードバッパーですよ。良い意味で。それ以上でも以下でもない、普通のハードバッパー。で、麻薬が大好き…っていうことですけどね(笑)。
ワタシが使ってるアルトサックスのモデルは、ジャッキー・マクリーンと同じモデルを使ってますけども。まあ、それはどうでもいいんだけど。
この二人ですよね。かたやチンピラのハードバッパー、かたや後に大学の数学の先生になるインテリのフリージャズ。この二人に師事したっていうのは、そうですね…何っつったらいいんだろうね、まあ…好一対ですよ。
で、そのスティーヴ・リーマンですけど、やっぱりさすがに一筋縄ではいかず、「オクテット」…「オクテット」は「オクトパス」の「オクト」…「8」ですから。8人組のバンドを率いておりまして。
2009年と2014年にアルバム出ております。
1曲目…先ほど聞いていただいた曲は2014年…言っちゃ最近のほうですね。
2009年盤も2014年盤もメンバーは全く同じでして。ここになんか生真面目さっていうかね。
普通3〜4年も経つと、メンバー替えたり、一人ぐらい違ったりとかね、するもんですけど。

(中略)


はい。というわけで、スティーヴ・リーマンに戻りますけども。
先ほどフランス語が出てきて「そのフランス語がフランス憧れじゃなくて、アフリカに目が向いている可能性がちょっとある」という事と、あと「『フロウ』っていうヒップホップの用語がちょっと入ってる」という事と、しかし「11〜12年に爆発する『ブラック・レイディオ』によるインパクトを、あまり受けていない」という3つの点が、全部なだれ込むようにしてスティーヴ・リーマンの最新作に結実しています。
ワタシはスティーヴ・リーマンの作品としては、これが一番好きです。
最新作は昨年の作品で、番組でも既に1曲ご紹介していますが、オクテットを捨てまして、スティーヴ・リーマンは「STEVE LEHMAN & …」…これ未だに発音出来ないんだけどね、「セレベヨン」だと思いますけど。近似値で。
というのは、これがウォロフ語が…ウォロフ語はヨルバ語と並ぶアフリカの2大言語勢力で、相当広い地域で話されている言葉ですけれども。
なんとスティーヴ・リーマンはどこに向かったかというと「ヒップホップとの融合」ですね。
ラッパー2人、そしてサキソフォン2人…という編成で、新しいバンドをやっています。
つまり、ジャズを新しく…何っつったらいいのかな?…ジャズにトラディショナルな側面というのを求めずに、「どんどんどんどんジャズは新しくなっていくんだ!」っていうふうに、考えたがる人たち…の結論というのは、結局スティーヴ・コールマンも…リーマンじゃないですよ。番組の最初にかかったスティーヴ・コールマンも80年代にヒップホップ…ラップと接近しましたし。ま…やめちゃいましたけど。
デイヴ・リーブマンは…最近は作品出してないですけど、ラージ・アンサンブルですよね。要するにビッグバンドっていうか、比較的大きめの編成でアレンジングしていくっていうとこにね、行きますよね。
ラージ・アンサンブル、そしてヒップホップの接近…ね、ワタシとやってる事おんなじじゃないか!ってね。
「菊地ナルマン」…じゃないか!って結論ですね、今日の結論としては(笑)。
「菊地成マン」ということなのではないかな?っていうことですが…とんでもない結論に落ち着きましたけど(笑)。
ま、この結論を巡って、来週もジャズ特集にしようかな?と思っている菊地ナルマンがお届けしております、「菊地ナルマンの粋な夜電波」、そろそろお別れの時間でございます(笑)。
来週日曜夜8時…まあ、相当高い確率で、ゆるゆるのフリースタイルになると思いますけど。ひょっとしたら「ジャズ・アティチュード」が続くかもしれないですね。
「そのままジャズ番組になっちゃえばいいじゃん!なるマン!」って感じですよね。
「なるようになるマン!」って感じだと思いますけども。

SELEBEYONE

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