「菊地成孔の粋な人生相談」

TBSラジオ菊地成孔の粋な夜電波」第317回はフリースタイル。
思いついた時にハガキを読み、思いつくままに喋っていたら、なぜかリスナーのお悩みにお答えしてしまっていた…そしてそれが実は深い!という菊地マジックが起きたトークの一部を文字起こししてみました。

ジェーン・スー 相談は踊る (一般書)

ジェーン・スー 相談は踊る (一般書)

今夜もカネで解決だ

今夜もカネで解決だ

はい、えーと…メールいただきまし…
メールもね、なんでしょう…これ、多分番組間違えてると思うんですよねえ。
「恋の進め方と嫌いな女性の忘れ方について教えてください。」というメールを読んで)
これ…間違ってますよね、これね。ウチじゃないんじゃないですかね(笑)。
ま…電話とかね、間違い電話とかありますから。気を付けていただきたいわけですけども。
そうですね、これ多分ね、ジェーン・スーさんでしょうね。ジェーン・スーさんの番組にきちゃった(笑)…
でも、まあ…間違い電話にはね、間違え回答で返すってのが、やっぱり都市民としてのね…都市を生きる者…ね、アーバン・シチズンとしてですね(笑)、やっぱりこう…コミュニケーションってのがあるでしょうから。
と言ったのは寺山修司さんですけどね、亡くなったね。
「今、これだけ人と人との繋がりがデジタル化してくると、生の人間の繋がりというのは間違い電話にしかないのである!」って寺山修司が言ったんですよ。先生ね。凄い事言うな〜と思いましたけど。…そんなんどうでもいいですけど(笑)。
えーと…「恋の進め方」って凄いですね。
恋って進めて行くもんじゃないと思いますけどね。
どんどんどんどん勝手に転がって行くもんだと思いますよ。はい。
もっと言うと、「こじらせる」もんですよね、恋っていうのはね。と、今様に言うとね。今、ちょっとすいません…若ぶっちゃいましたけど。拗らせる…こじらせていくっていうね。
「メンヘラ」とか、よく言って…メンタルが恋愛時…特に恋愛時でしょうね、これね。なんかこう…具合が悪くなる方を「メンヘラ」なんつって。差別だと思いますけどね。
だって、恋愛するって、頭がおかしくなるって事ですからね。
全員メンヘラだと思いますけどね。恋愛してる人は。
「俺は正気だけど、恋してるんだ!」っていう奴がいたら、結婚詐欺か、それこそ病気ですよ…それ。
恋してる人、全員頭おかしいはずなんで。物事が進められるわけないですよね。物事進めるってのは、正気の作業ですから。進められないと思いますよ。
ですから「恋の進め方」というのは、原理的には無いですよね、これね。
すごい真面目に答えてんな。なんかジェーン・スーさんになった気分ですけどね(笑)。どんな気分だ!って話ですけど。
え〜…「嫌いな女性の忘れ方」…ここも重いですねえ。やっぱ絶対間違いメールだろ、これ。
だって女性ですよ、この方。女性が「嫌いな女性の忘れ方について教えてください。」っつーね。
まあねえ…物忘れは増えましたけどね(笑)。
物忘れって絶対増えてくもんですよね。
「最近さ、物忘れがさ…」っていう出だしで、「…きれいさっぱり無くなったんだよね。」っていう台詞聞いた事あります?、皆さん。無いですよね。
「最近さ、物忘れが…」っつったら、「いいよ、もう!先まで言わなくて…激しくなったんでしょ?」っていう…もう、それだけしかないですよね。だから物忘れってのは増えてくもんですけど。
とはいえ、やっぱ「嫌いなものを忘れる」っていうのは、フロイドでいう…
ワタシ、信じてる学問、フロイドしかないんで。フロイドでいうと…
「フロイドしか信じてない。」って、フロイド以上に音楽を信じてますけどね。学問なんてクソみたいなもんですけども(笑)。ま、そんなクソみたいなもんの中でも、フロイドしか信じてないですけど。
「嫌いなものを忘れる」っていうのは、フロイド的に言うと、一番難しいですよ。
好きなもんのほうが、まだ忘れやすいですよね。
忘れるって、要するに「どうでもよくなる」わけでしょ。「しらける」って、ほんとに難しい事で。
例えば…それこそ社会派みたいになっちゃうな、気を付けよう。今回ばっかりは特例ということで、社会派になっちゃいます。相談事に答えちゃったりなんかしてね(笑)。相談事に答えるタマじゃないですけどね、はい。
「相談事にも答えない、自分も相談しない」っていうタマですけどね(笑)。それはともかく。
あのね、例えばですけど…「ストーカー」って言葉も、ギリギリの用語だと思うんですよ。
だって、一回付き合って上手く別れられなかった人が、しつこく付いてきたりする事を、「ストーカーになっちゃってさぁ、彼が。」と平然と言う人いますけど。それ、どうかなあと思いますよね。
上手く別れられなかったら、絶対、未練で付いてきますよ。
昭和ではそういうのをねえ…何つったらいいんでしょう…「痴情のもつれ」とかね、「怨恨」とか言ったもんですけどね。
ちゃんと別れ…上手く話がつくならともかく、つかなかったら、そら追っかけるよ…と思うんですけど。
ま、ま、それはともかくですよ。何が言いたいかっちゅうと…
そんななっちゃった人が、ある日待ち伏せされてガンッ!って現れた時にどうしたらいいでしょう?…って、よくなりますよね。
そういう人が現れたら、とにかくよく言われるのが、無理繰り拒絶したりね、あるいは懐柔しようとして仲直りしようとしたりするのは…難しい…難しいっていうかイージーなんだけど…イージーっていうか、反射的になっちゃいがちなんだけど、あとあと考えると怖いですよね。
やっぱりね、ネジを外してデプログラミングしないといけないの。
要するに、しらけさせないといけないんですよね、情熱ってのは。あ、もう要らない情熱はね。
「要らない情熱なんだけど…」って思われたら、ブロックしようとしてもダメですよ。ブロックしたら絶対来ますからね。
「僕から逃げようったってダメだよ!」っつってね。
「逃げれば逃げるほど、君は僕に近づくってわけ。だって地球は丸いんだもん!」っつったのは、フォーリーブスですよね(笑)。
相当な懐かしさですよ、今(笑)。
サブが比較的トシだって事を利用してね、誰が聞いてるかわかんない…若者が聞いてるかわかんない番組で「フォーリーブス」って言ったって、しょうがないんですけど(笑)。
ヤバいですよ、だって四つ葉のクローバーからきてるんですからね、フォーリーブスね。ま、それはともかく。
…ダメなの。デプログラムするためには、しらけていかないといけないんですよ。
さて、どうやってしらけていこうか?…嫌いな女性を忘れるのは誰ですか?…あなたですよね。だから、あなたがしらけなきゃいけないんですよね。
あなたが、自分で自分の嫌いだっていう感情をデプログラムして、その人のことを忘れる…っていうか、別にどうでもよくなんないといけないんでね。
さて、その時に必ず必要な過程は何か?…「なぜ嫌いなのか?」を徹底的に自分に問うということですね。
そいつがどんだけ嫌いで、どういうふうに嫌いで…ってことをね、本当に…上っ面じゃなくて、どこまでもどこまでも追求するんですよ。つらいと思いますけど(笑)。
やっぱりね、痛みが伴いますからね。何か対価を払わないと事は成せないので。
やっぱ、こう…どうして嫌いなのか?を問うの。で、なぜ嫌いなのかを、どんどんどんどん問うていって、大抵行き当たります。近親憎悪だってことに(笑)。
もう…完全にね、自分の内部に無い原因で人を嫌うってことは、ほぼ無いですよ。人のことを嫌いになる…
すごい真面目な番組になっちゃったな。今、戸波さんが感心している顔が見えて、ちょっと嫌なんですけど(笑)。
感心しないでください!ってね。オレに感心するな!ってことですけども(笑)。
自分の内部に全く無いものってありますよね。自分の外部にあるもの…その外部にあるものが原因で誰かが嫌いになることって、原理的に無いです。
自分の内部にあるものが、その人を嫌いになる理由に絶対なってるんで、そこまで降りていくの。
そうすっと、「あ、自分の内部にあるもんが原因で、その人が嫌いなんだな。」って時に、「しらけ」の「し」がやって来ます(笑)。あと、「ら」…「け」って詰めればいいんでね(笑)。そんで「しらけ」は完成するんで。
その頃にはもう忘れてんじゃないですかね。
すごーい。人生相談って、すると20分も掛かるんですね(笑)。めんどくせえ仕事!(笑)。
ジェーン・スーさんをディスってるわけじゃありません、本当に。ええ。立派なお仕事だと思います、人生相談は。
はい。え〜…ですね。次の曲いきましょうかね(笑)。
人生相談って、ハガキ1枚でワンブロックもっちゃうね。すごいなあ。


Tropical Rain

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ゼア・イット・イズ

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