「残暑きびしい折に、あえて暑苦しい音楽を。」

「粋な夜電波」第330回は、ジャズ・アティテュード。
もうすっかり秋…かと思ったら、意外と残暑きびしいという中、あえて暑苦しい音楽を聞いて涼しくなろうという意図で、エチオピアン・ジャズの特集回となりました。
菊地先生の生徒さんの作品もプレイされた、エチオピアン・ジャズの曲解説の一部を文字起こししてみました。

Tche Belew

Tche Belew

えーとですね…何から行こうかな。エチオピア歌謡ですよね、とにかく暑苦しいと言ったらエチオピアですよ。
エチオピア…ま、アフリカっていう国自体が、一括りにされがちでしょ。「アフリカ」なんつって。
「ユーロ」だってさ、そんなもんイギリスとドイツじゃ全然違う、もう。オランダとスイスじゃ…結構似てますけど(笑)。ポルトガルとね、スペインとじゃ微妙に違う。
その…結局一つのチームになってますけどね。グループになってますけど。
もともと全然違う国だったりしてね。隣国どうしが、ぎっしりクラスターしてるわけですけども。
アフリカなんか、もうその極致ですよね。全部違いますよ、アフリカって。
ただ、アフリカ大陸を一貫している音楽的な特徴ってのはあるんですけど、そのベーシックな特長ね…ポリリズムとかさ。そういうベーシックな特長を取っちゃったらね、全然違う。
何でね…エチオピアだけが、こんなに日本の演歌に似てんだ?って、よく言われるんですよ。
あの…日本の演歌とかね、チンドン屋さんとかね、サキソフォンがなぜかメロディをとってる歌謡曲の…
今でもまだね…もうないか?…東急ストアさんか、要するに食品売り場とか行くと必ず流れてるJ-POPの、メロディがさ…キーボードとかがとってるやつとか、まだあるんですかね?
自炊しないもんで、外食100%なんで。自炊してた頃はね、よく「鱈のフィレが夕方になったら安くなるから買いに行くんだ!」とか言って(笑)…よく行ったから、聞いてたんですけど。
「♪さかな、さかな、さかな〜」とかね、あれも暑苦しいですよね(笑)。とにかく…「♪まーるい緑の〜」とか暑苦しい、とにかく。
とにかく、繰り返して音楽を聞かされて覚えるっていう事ほど、暑苦しいもんはないんだけど。
そうじゃなくて単体で…話がズレまくりですけどね、今日ね。
エチオピアだけは、ああいったもんに似てる音楽があるんですよ。
これはタンザニアにも無いです。マリにも無いです。スーダンにも無いし…どこにも無いよね。モロッコなんか全然無い…なんだけど、なぜかエチオピアだけには、「エチオジャズ」「エチオ歌謡」と呼ばれる…非常に日本人の郷愁にうったえる音楽があるんですよね。
これはね、初めて聞くのに懐かしい、そして暑苦しいっていうね。
名だたるエチオ歌謡のヴォーカリストたちのバックバンドを務めていた…ま、だいたいそういうバンドありますよね、どの国にもね。
「ワリス」…「THE WALIAS」っていうね、「ワリス・バンド」てのがあるんですけど。そのバンドと、エチオピア音楽の鬼才であります、ハイル・メルギアっていう人がいるのね。この人の先生の音楽とかも、今日持ってきたんだけど。
ムラトゥ・アスタトゥケ…これ「NON STOP アフリカ」とかでもプレイしましたね。
そのムラトゥ・アスタトゥケの弟子でもありますね。あ、これあれだ…77年の「TCHE BELEW」、ムラトゥ・アスタトゥケも参加してますね。はい。
えーと「Musicawi Silt」…ちょっと何語なんだか、微妙にフランス語とお国の言葉が混じってるような感じですけどね。
ちょっと聞いてみましょう。暑苦しいですよ〜。ま、暑苦しくて、おいしいって感じですけどね。どうぞ。


(中略)


ま、こういったものがあるわけですな。
こういうものがですね、実は日本人意外と好きで。まあ、あのね…好事家がいて。
暑苦しいっていうことと地域性を結びつけて何だかんだ…文化的に何とか言おうって、そんな手垢に塗れたこと言いたくないんですけど、大阪に多いんですよね(笑)。
大阪にエチオピアのジャズの凄い優れたカバーバンドが、かなりドープなのがいるの。やっぱ東京の人には無理じゃないかな、やっぱ。エチオピアン・ジャズっていうのは。
そんな中、珍しく東京で活動しているエチオピアン・ジャズのバンドがあって。なんとそれがね、自分の生徒だったって事に、二度ビックリですけどね。
堀岡くんっていう生徒がいて(笑)…堀岡くん、これ…全然授業ではこの話してないんで。
ま、自主レーベルから…自分の、「ホリオカキカク」っていうね。バンド名はそんなに暑苦しくないんですけど。
「もう少し…堀岡くん、「エチオピア・ジャズ演ってるよ!」って分かる感じのバンド名にして、ジャケットにして出さないと、これ…スッと通り過ぎられちゃうよ。」…って、聞くとね、エチオピア・ジャズ…かなりガチで演ってるんですよね。
「ホリオカキカク」…さっき言ったように、もちろんインディーなんですけど、生徒がね。「先生、こんなん作ったんで聞いてください。」っつって、聞いたら…なんとビックリ!エチオピアン・ジャズ正統派だったんで、驚きましたけども。そちらから1曲。
これはとにかく、30…もう40代なのかな? 堀岡君は…30〜40代の日本人が…しかも東京の日本人が演っておりますエチオピアン・ジャズ・オリエンテッドなバンドですね。
「ホリオカキカク」で「ダダダン」。