【BOOK】「阿修羅ガール」 舞城王太郎・著

阿修羅ガール (新潮文庫)

阿修羅ガール (新潮文庫)

もっか舞城キャンペーン中につき、行き帰りのバスに文庫本を持ち込み、「阿修羅ガール」読了。
思慮深さとは無縁のただ反応、反射の言葉の上滑りを書き連ねることによって、見事にイマドキの女子高生口調を書き言葉の中で再現した本作は、いたるところで文体の実験が行われている。文学以前に好きずきが別れてしまうのだが、斬新な作品だと言わざるを得ないだろう。舞城を文体のみで語るのは本質を理解していない証拠だと言われるのかもしれないが、やはりこの人の作品は文体に尽きる。背後にあるメッセージを読みとらせるには、あまりにも展開が乱暴だし、早急に結論づけようとするし、投げやりともとれる断絶を多用し過ぎだと思う。作品中の暴力と混乱に満ちた殺伐とした世界は、「誇張された現実」であるという見方もあるだろうが、それを認めてしまうのにはためらってしまう。深読みしすぎるのも危険だが、かといって無視して素通りするわけにはいかないと感じさせる。
舞城と村上春樹の比較はよくされるところだと思うが、まさにこの作品は「裏・ねじまき鳥クロニクル」に値するのではないのだろうか。邪悪なものと戦うためには、自分の中のカオスから邪悪なものを掘り起こす必要がある、ということも共通して言われていると思う。「グダグダ言ってねーで、殺っちまえばいいんだよ!」的な衝動を意識して現実と対峙していかなければならないとゆーのは、あまりに虚しいのだが、それが我々の生きている世界のひとつの捉え方であることは確かなのだ。