【LIVE】「椿屋四重奏ワンマンショー『九段心中』@九段会館」

梅雨の合間にすっと晴れ間が差し込んで、外は明るく、夏の夕方のような蒸し暑さ。浴衣でライヴに向かいたい気分にも。
九段下駅の4番出口を出ると、会場から九段坂に折れて科学技術館の先の方まで、すでに入場を待つ人の長蛇の列が出来ていたのには驚きました。自分らもその列の後ろに並んでいると、道行く人達の会話が聞こえてきて、「なに?今日何かあるの?」「なんとか四重奏だって・・・」とか「シベリヤ何とか?よく聞こえなかった〜」などと、まだまだ椿屋の事をよく知らない人の様子がちょっと面白かったです。
九段会館の中に入ったのは初めてでしたが、厳かながら華やかさもあり、昭和のレトロさも感じさせる独特の雰囲気。椿屋の初ホールにふさわしい舞台だと感じました。客層としては、やはり女性が多かったけれど、和柄の服を意識的に着て来ているような、20台のOL層が中心だったような気がします。グッズ売場に並ぶ長蛇の列は2階席への階段の上にまで伸び、大変な盛況ぶり。開演時間も迫っていたのでグッズは諦めました。「紫陽花」のCDジャケと同じ柄のハンドタオルは欲しいと思ったのですが。
自分の座席は1階の後ろの方でしたが、ステージを遠く感じるほどの広さではなく、かなり観やすい位置だったので安心。それにしても、「れ列」を探していたら最後尾が「ら」だったのでちょっと焦りましたが、あいうえお順ではなくて「いろはにほへと・・・」の順に列が並んでいたのですね。この辺がまた椿屋らしいな〜と感じたり。
前回のワンマン・渋谷AXとはまたひと味違ったホールならではの演舞を展開してくれるのではという期待通りに、オープニングから予想外の展開が新鮮でしたね。いつもならSEが流れる中を袖からステージに一人ずつ登場するのですが、幕が上がると、ステージには既にバンドの姿が。そして、ピアノのみの伴奏に合わせて、中田裕二がハンドマイクで歌い出したのは「小春日和」。ゆっくりとサビを歌い上げたあと、いつもよりテンポ遅めのオーソドックスな演奏で始まりました。サポートギタリストが向かって右に立ち、BASSの永田氏は今日は左側、中田氏は真ん中に堂々と構え、ギターを持たずにボーカルに専念するという絵的にも新鮮に映りました。続く「群青」「舌足らず」ではギターを持ち、アグレッシブなモードに切り替えて椿屋節全開。サポートを得て音に厚みが増しているよう。ホールの反響に慣れないせいか、音がぶつかり合って最初のうちは聴きとりにくいところもあったが、それは徐々に解消されていきました。ただ、会場のノリがまだまだ熱くなってこない。ホールという状況におけるお客さんとの距離もはかり兼ねているようで、中田裕二は一生懸命あおっていましたが、手拍子も要求されたときだけ応えるといった、観客もちょっと遠慮気味な様子でした。よりショーとして見せる意識も強かったのか、前半は演奏がやや固めだったかもしれません。
中盤に恒例の弾き語りコーナーを挟み、トークも交えつつ「十色の風」などのアコースティックなナンバーを聴かせていく。こういう曲をしっかり聴いてもらうには、この会場は雰囲気も良くて非常に合っていたようです。ようやく観客も落ち着いてきたようで、新曲のファンクナンバー「熱病」で仕切直した後半からだんだん盛り上がり始めてきました。続く「螺旋階段」はシングル曲ということで一気に会場もヒートアップ。その勢いのままに「道づれ」「空中分解」と、加速感のあるナンバーで、その場の全員を「椿屋ワールド」に引き込みましたねえ。
嵐が丘」「風の何処へ」という大団円ナンバーで締めくくりましたが、まだ「紫陽花」も「かたはらに」も演っていないので、アンコールがあることはバレバレ。とくにもったいぶることもなくすぐに再登場。温かい拍手に迎えられて新曲の「プロローグ」を披露。いかにもJ-POP的なこの曲はコアなファンの間でも賛否両論別れるところでしょうが、これも「より大勢の人に聴いてもらうために、こういう曲もやっていく!」という彼らの一種の決意表明的なところがあるのでしょう。(個人的にはあまりこういう曲は好みではないし、椿屋がやる必要はないと思っています)
最後はきっちり「紫陽花」で締め、無事に初のホールワンマンコンサートを成功させた安堵からか、中田氏もめずらしくちょっとうるうるきているようにも見えました。まだまだ通過点とはいえ、かなりの達成感があったのでしょう。それは、小さいハコから彼らを追いかけてきたコアなファンの方たちも同じ思いだったかもしれません。祝祭的なムードに満ちた、かなり良いコンサートになりました。いやあ、よかったよかった(拍手)。