「kikUUiki」


ネクストブレイクの筆頭・サカナクション、待望のニューアルバム「kikUUiki」。だいぶ前から楽しみにしていた1枚だ。
早速2回通して聴いての、率直な感想だが、「うーん、ちょっと期待が大き過ぎたかな?」…。
前作「シンシロ」が、全曲捨て曲なしで、個人的にそういう「1曲1曲が粒ぞろい」なアルバムが好みだということもあるけど、「さらに上げられたハードルを超えた!」と手放しで喜ぶことは出来なかった。
(おそらくこのアルバムを踏まえて新旧織り交ぜたセットリストでライヴをやったとしても、一発でアガるキラーチューン的な役割は、前作の「Ame(B)」であり、「ライトダンス」「アドベンチャー」「セントレイ」といった曲が担うことになるだろうという想像がつく)
サウンド面では、ダブ、エレクトロニカなどをギターロックのフォーマットに融合させるという試みはさらに追求されており、バンドの演奏のスケール感もアップ、進化しているという印象はある。いろいろ実験的な試みもあり、停滞している感はまったくない。
それでもちょっと惜しいなと思ってしまうのは、「いろんなバンドのいいとこ取り」が出来る、山口一郎の構成力の高さが、むしろ「あざとさ」のような感じで顕われてしまっているような気がしてしまうところだ。
具体的に言うと、4分打ちテクノの手法を取り入れた曲にUnderworldの影響が見受けられるのは今に始まったことではないが、先行シングル「アルクアラウンド」のイントロは「Born Slippy」を明らかに意識させているし、6曲目のインストナンバー「21.1」は、Radioheadの「There There」をUnderworldがリミックスしたような構成の曲に、間にダフトパンクを挟んでみました…というのが、わりとまんま出ている。
歌メロに関しては、どうしても作曲者のクセって出てしまうものだし、このアルバムで初めてサカナクションを知る人も多いのだろうから、「以前のあの曲に似ている」と指摘することは野暮なのだろう。それは分かっているが、「壁」や「目が明く藍色」のAメロが、思いっきり〝「くるり」岸田〟が書きそうな曲調になっているのは、さすがにどうかと思う。
いろいろ手を替え品を替え、工夫しているところは大いに買う。しかし、戦略を持って「打って出た」だけに、アルバムのコンセプトとしてよりも、もっと「何をやってもサカナクション」らしさを核にした、バンドの姿勢としての一体感が欲しかった。(無いものねだりなのかもしれないのは十分分かっているつもりなのだが)
…とか。まあ、そうは言っても優れた作品であることは確かだ。もっと何度も聴き込んでこなれてきたら、普通にいい曲として好きになるのだろう。
たまたま気付いてしまったことを、最初の印象として書き留めておきたかっただけで、細かい粗探しをして作品を批評することは本意ではないのよ。

kikUUiki(初回限定盤)

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