Book3、読了。

1Q84 BOOK 3

1Q84 BOOK 3

職場でも仕事の合間にちょこちょこと読み進め、帰宅してからも読み、あと3章分を残し、いよいよ佳境に入って来たところで睡魔に負けて寝てしまった。(夕食時ビール飲んじゃったからね)
それでも夜中ふと目を覚まし、台所でなっちゃんオレンジを飲みながら、残りのページをめくる。
で、先ほど読了。
〈以下ややネタバレ含みます〉
読む前は、「1Q84」という世界が共通で、全く違う話をぶつけてくるんじゃないか?とも予想しましたが、普通に「続き」でした。当然のように「続き」でしたわ(笑)。
これだとBook1、2発売時に「全2巻」とポスターに書かれていたのは嘘だったということになりますね。
まあ、昔からの春樹ファンは「ねじまき鳥クロニクル」の時のことを覚えているので、これはしばらく経ってから絶対3冊目が出るはずと思っていたでしょうが…。
3冊通した読後感は…結構すっきりしている。ほっとしてもいる。また賛否両論分かれると思うけど、落としどころをきちんと示してくれたのはありがたい。多くの謎を含んでいる(それが思わせぶりに過ぎると思われてもいる)作品だが、すべての答えを示す必要はないと思うし、それは各々が考えればいいことなのだろうから、個人的には「この終わり方で良かったのだ」と思っている。
これでBook4が刊行されたらビックリだけどね(笑)。
タイトルに「BOOK 1<4月-6月>」「BOOK 2<7月-9月>」「BOOK 3<10月-12月>」とあるから、あくまでもこれは「1Q84年」の話だとすれば、これで完結だと思われる。(…あ、「1Q85」を出すという手もあるか!)
Book3ではBook1、2で蒔かれた謎を回収しにかかっているので、天吾と青豆、それぞれのモノローグ的な部分が多くなり、それほど大きく物語は動かない。
しかし、ここで全く予想外だったのだが、Book3では「牛河」の存在が大きくクローズアップされている。
答えを探しながら困惑して行き先を見失っている天吾と青豆のふたりの間で、なぜかあの牛河氏が汗かきせっせと働いているのだ。今回物語を動かしているのは、実は牛河氏だったというのが面白かった。
思い返せば「ねじまき鳥」の時も、主人公の「僕」と妻のクミコとの間を行き来する役だった牛河氏だが、邪悪な存在の側にいたはずのキャラクターが、今回再び「1Q84」の作中に登場した際には、わりと好意的に描かれている。もともと作者の中で、「どこか憎めないところがある」人物として捉えられていたのだろう。実際、このBook3を読んでいるうちに、俗で卑屈で嫌われ者のはずの牛河氏に、大きく共感するようになってしまった。
この「1Q84」は、ざっくり言ってしまうと、天吾と青豆ふたりの「愛」の物語なのだが、その愛を成就させるために実はいろんなものが犠牲になっている。本人達も失ったものはたくさんあるけれども、当人の全く預かり知らないところで、いろんな事が起こり、何かが発生し、損なわれ、失われている。その最たるものが牛河の存在だったと思う。
作品を発表するごとに、村上春樹氏の小説世界はどんどん拡大しているのだが、この「1Q84」ではとうとう「私とあなたがいるこの世界そのもの」を描こうとした。その世界には牛河に代表されるような、あまり好ましくない、目をそむけたい存在も、当然ながら含まれる。逆にそういう存在があるからこそ、今の私があるのかもしれない、といったところにも意識がいく。そのへんは作者も意図して書かれているのではないだろうか。


ちなみに「ねじまき鳥」で登場した時から、自分の中で勝手にイメージした牛河氏の風貌なのだが、「踊る大走査線」のスリーアミーゴスにいたメガネの副署長(?)役の俳優さんの姿が浮かんでしまって、もうそれからあの人イコール牛河氏になってしまった。
斉藤暁さんという役者さんらしい。今回Book3読んでいる間も、牛河の章の部分はずーっとあの人が頭の中で動き回っていた(笑)。
映画化するとしたら絶対牛河は斉藤さんだと思うのだが…。