「冷たい熱帯魚」

サーフィンに行かない休日。ひとりでこっそり観に行って来ました。
史上最狂最悪とも言われているが、あちこちで大絶賛中のダークムービー「冷たい熱帯魚」。
水道橋博士Twitterでプッシュしているので気にはなっていたのだが…。
内容についての詳しい情報は頭に入れず、なるべく先入観を持たないようにしたとはいえ、いや、自分の予想をはるかに超えて、もう凄まじい映画だった。
笑うに笑えない、泣くに泣けない、目を背けたくても背けられない…ただただ絶句
エロスとバイオレンス満載の予想はしていたけど、あまりにスプラッターなシーンはショッキングすぎて、ここまでやっていいのかと恐ろしくなるほど。そういう映像は個人的にすごく苦手なので、ほんとに膝がガクガクした。
ただそういうシーンをホラーとしてではなく、むしろコミカルな演出でテンポよく見せていて、劇場内のところどころでは笑い声も上がっていた。しかしそれは残虐なシーンを面白がっているというより、どうしていいかわからなくなっているような乾いた笑い。それでも自分からしてみれば「いやいや笑えない笑えない…」と、そんな余裕もなく背筋の凍る思い。
人間を描こうとする志の高さが感じられるせいか、単なる露悪趣味とは思わなかった。おそらくここまでの極限状態に追い込まれなければ表れてこない、心の裏側のリアルな感情を爆発させたいのだろう。自分がこの映画を観て戦慄したのは、映像からダイレクトに受けたものもあるが、そういう心理的な描写によるところが大きい。
ラストでせめてささやかな救いがあるかと思いきや、その願いすらも無惨に打ち砕く容赦の無さ。園監督の「僕はもう観客に癒しも慰めも与えなくて、残酷な事実だけを提供します」というコメントの通りだった。しかしその徹底した表現が、強く胸を打つ。
新聞・テレビのタブーに触れることを極端に恐れた無責任な報道や、毒抜きされてつまらなくなった娯楽の提供にうんざりしているという背景もあって、「この映画をどうしても観なければ!」という衝動にかられたのだったが、確かにその憤懣を吹き飛ばすにあまりある、強烈過ぎる映画体験だった。