「キック・アス」

映画秘宝 2011年 03月号 [雑誌]

映画秘宝 2011年 03月号 [雑誌]

映画秘宝で2010年度ベスト1と評価された「KICK-ASS」を観に行って来た。
新宿武蔵野館って初めて来た。しかもスクリーン2の方で、84席しかない。こんな狭いところで映画を観るというのも初めてだが、なんか映画館というより見世物小屋的な雰囲気もあって、おそらくB級感満載であろう本作を観るのにうってつけな気がしてワクワクした。公開からだいぶ経っての今更ながらの鑑賞だが、結果的にこのタイミング、このロケーションで良かったのかも。(あ、それでも満席だったみたい)
キラ☆キラ」金曜日の町山智浩氏の映画紹介コーナーを毎週楽しみにしているのだが、ここにきて自分が急に映画館に足を運ぶようになったのは、町山氏やライムスター・宇多丸氏のラジオ(Podcast)での映画評論に影響されたところが大きい。町山氏が選ぶ年間ベスト1になっていたことで、俄然映画館に行く気になったのだ。(実際にこの作品、日本公開予定が立っていなかったのを、町山氏の呼びかけで公開が決まり、字幕翻訳の監修も手がけている)
自分のような蘊蓄語りたがりのタイプは、視覚、聴覚、体感的な刺激を受けても、「あー、面白かった、楽しかった」だけでは済まないところがある。どうしてもそれを言語化しなければ、体験を記憶として自分の中に落とし込めないのだ。ほんとは先入観なしに観て自分なりに感想を持てばいいだけなんだが、「あの人はこう語っていた、なるほど。観たら確かにその通りだ。自分もそう思う。」という確認作業をしていくことが、自分にとっての映画の楽しみ方だったりするのでね。
さて、「キック・アス」…面白かった!。痛快なアクション・ムービーで、結局、屁理屈こねる必要ないくらい(笑)単純に楽しめた。
冴えないモテないコミックオタクの少年が、ヒーロー願望を実現すべく、ネットで買ったダサいコスチュームを着て、「キックアス」と名乗り町をパトロールするうちに、ネットに公開された動画から一躍有名になり、本物のギャングと戦う羽目になるというストーリー。そのささやかな勇気を振り絞って闘いを挑むあたりは泣かせるし、一番のキモなんだが…。
主人公さしおいてなんだけど、やっぱりこの映画は「ヒット・ガール」萌えに尽きるでしょう。
クロエ・グレース・モレッツという少女が扮するヒット・ガールは、元刑事の父親(がニコラス刑事!)が罠に嵌められたギャング組織に復讐を果たすために幼少の頃から殺人術を叩き込まれている。ヒーローになりたいが何もできないダメっぷりを晒す主人公・キックアスに対して、彼女の方は本当に悪と戦う力を持っている。その少女がキックアスのピンチを何度も救う。
元はといえば、キックアスがギャングに命を狙われるようになったのも、ヒット・ガールとその父ビッグダディの仕業だったのを勘違いされたからで、ストーリーの大筋はギャングとこの父娘の対決であって、実はキックアスは主人公なのにほとんど活躍できずにいるのだ。アクションシーンの主役は間違いなくヒット・ガール! その戦いっぷりが痛快で情け容赦なく、観ていてテンション上がる。
全体的にコミカルな作りでB級アクション映画感丸出しなので、殺人術を幼い少女に教え込んでいるといっても悲壮感はないし、血もいっぱい出る残虐な殺しのシーンでも良心が痛む間もないくらい、スピーディーにばんばんやっつけていくので、「まあ、あんまり深く考えずに楽しく観ようよ」という気になってしまう。
ただ、この父親も元々コミックオタクだったとはいえ、ヒーローコスチュームで堂々と悪の組織に戦いを挑むようになったのは、キックアスが奮い起こしたなけなしの勇気に触発されたからであって、やがて同士として共に戦い、最終的にはヒット・ガールのピンチも救うようになるのだから、やはりこの映画の主人公はキックアスだったのだ。
全米No.1のヒットにもなったそうだから、当然続編やヒット・ガール主役のスピンオフ作品などへの期待の声もあがりそうだが、どうなるかな?