「韓流の島宇宙化について。」

「粋な夜電波」第225回放送は、恒例の〈韓流最高会議〉。
韓東賢さんとヴィヴィアンさんをゲストに迎えて、K-POP、K-HIPHOPのみならず、カルチャー全般にわたって幅広く語られました。
話が盛り上がり過ぎて、今回もPodcast配信。オンエアにのらなかった部分も含めて、Podcastより冒頭のトークを文字起こししてみました。

シングル - Party(韓国盤)

シングル - Party(韓国盤)

菊地 …と、まあ…震災の年に「少女時代」が猛烈に輝いていたという季節も、とうに過ぎまして。最高会議議長の私、菊地成孔がですね…〈「少女時代」がPVでビキニ解禁!〉といった情報に…
ヴィヴィアン へえ〜。
菊地 脳も生殖器もピクリともせず。
ヴィヴィアン (笑)。
 なんかあの海の広告みたいなやつですよね。
菊地 そうそう(笑)。
 JALの…JALとか言ったらダメなのか…某航空会社の…
ヴィヴィアン へえ〜。
菊地 そうそうそう。
 だから、すごくあの時代のあれっぽいですよね。
菊地 あれはね、マレーシア航空です。
 あ、実際マレーシア航空の?
菊地 だと…思いますね。ええ。ま、このぐらいのリテラシーだと、生放送だったらツッコミが入る時代…(笑)。
 (笑)。
菊地 …ですけども、一抹のパセティックさを覚えていた…ね、マルドアンデな状況もともかく。遠くて近い、近くて遠い、隣国との文化交流はまったく衰えをみせておりませんで、むしろガチンコというか。ジャンル・ミュージックですね、ジャンル・カルチャーといいましょうか、完全に閉鎖された…しかし豊かな島宇宙のひとつ…
ヴィヴィアン はい。
菊地 …という感じで、結晶化している感じですけどね。ま、現在ニッポンでサブカルチャーが熱狂的に結晶するというケースの定型にしっかりハマっているとも言えなくもないですけどね。
ヴィヴィアン うん、うん。
菊地 アイドルとかね。…ですから、リスナーはもうすでにワタシなんかより100倍詳しいわ!…という方が、日本中にいらっしゃるというね、状況で。
 全然ついていけないです(笑)。
菊地 ま、番組の…最高会議の理念といいましょうかね、いちおう崇高な理念としては、「Kミュージック、ペン、ヨルブン…(以下略)」…韓国音楽の愛好家の方も、「いや、俺はそういうんじゃないから。」という方も、どちらもお楽しみ…AMによってお楽しみいただきたいわけなんですけど。
 うーん。
菊地 おそらくワタシの予想だと、こう…最高会議の理念むなしく
 (笑)。
菊地 今日はもう…先週予告してますから、「来週、〈韓流最高会議〉です。」と。そしたら「もう来週聞かない!」って…
 いますよね〜、アンチが。
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 アンチっていうか、まあ…興味無い人ね。「来週はいいや。休むわ。」っていう人。
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 休んだって、いくらでもね…「タモリ倶楽部」がありますし…
 (笑)。
菊地 「JETSTREAM」もありますし…ええ。逆に「来週〈韓流最高会議〉なんだ!」って、いきり立って…メールも送られてきてますし。
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 要するに「メンバー交代」っていう。
ヴィヴィアン ああ〜。
菊地 ワタシ、この番組を「メンバー交代」させないために始めたんですね。
 うーん。
菊地 で、ヒップホップもやるし、いろんなアフリカの音楽もやる、と。
ヴィヴィアン はい。
菊地 ところがやっぱり「ヒップホップ特集」っていうと、ヒップホップのヘッズがガーンってきて、あとの人は「今週はお休み」っていうね。
 ああ〜。
菊地 まあ、この現状…自体が、文化的な定着…ですよね。
 すごい番組ですよね、そう考えたら。
菊地 ん、まあ…
 番組自体が幕の内弁当的な…一回一回はそうじゃないですけどね。
ヴィヴィアン うん、うん。
菊地 そうそう、そうなの。一年聴くと、幕の内弁当の高級なのが食えるっていう…予定だったんですけどね。ま、幕の内弁当のうち、唐揚げだけ食うっていう…(笑)。
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 卵焼きだけ食う人…
ヴィヴィアン 「今日は唐揚げだけの日」みたいな。
菊地 そうそう。なんかちょっと昔のファンクミュージックのミュージシャンみたいでカッコいいですよね、「朝からフライドチキン」っていう。
 (笑)。
菊地 この何て言うか…何て言うんでしょうね、島宇宙化に関してですね、いきなりですけど社会学者でもあり、日本映画大学准教授でもあり、最近はフェミニストとしての発言も目立っております…
 いやいやいや(笑)
菊地 しかもコリアン…ナムジャアイドルのビッグペン…
 ナム…ん?…いや、まあいいです…
菊地 「青少年が恋に落ちたい、年長の在日コリアン女性ナンバーワン」(笑)。
ヴィヴィアン へえ〜。
 ちょっ…誰が言ってるんですか!
菊地 オレが言ってるんです。
 (笑)。
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 …韓東賢さんとしては、書記長…そこらへんに関してどういう感じで捉えられておられますか。
 え?…島宇宙化ですか?
菊地 はい。
 ねえ。でも別にカルチャーに限らず言われてることじゃないですか、ずっと。
菊地 はい。
 タコツボ化とか、島宇宙化って。
ヴィヴィアン うんうんうん。
 ね、で…何て言うんだっけ…部族?
菊地 トライブ。
 うん、トライブっていうか。それはずっと言われてることで、それがますますツールも発達し…
ヴィヴィアン うーん。
 むしろ、横に関心を持たないっていうのが、もうデフォルトになってきて。
菊地 そうですね。
ヴィヴィアン はいはいはい。
 なんかますます進んでるかな?って気はしなくも…ないですね。
菊地 まあ、どんな文化も必ず揺り戻しやねじれが起こりますから。
ヴィヴィアン うん。
菊地 また一気に…幕の内的な…何て言うんですか、「文藝春秋」みたいなね。
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 「麻雀の打ち手」から国家まで全部書いてあるっていう。
 だから…全部下部構造で言っちゃうとつまんないかもしれないですけど、そのツールとかメディアが変わったら、さっきちょっと始まる前に話してたことですけど…
ヴィヴィアン うんうん。
 また提供する形が変われば、人間の生活って簡単に変わっちゃうところもあるので。
ヴィヴィアン そうですね。
菊地 もちろんもちろん、そうですね。だからそれは巨視的に見るとそうなんだけど、つまりその…言っちゃあですよ、よっぽどの好事家じゃない限り2010年ぐらいからじゃないですか。
ヴィヴィアン うん。
 K-POPがね。はいはいはい。
菊地 そうすっと、わずか5年でこうなったわけですよね。
ヴィヴィアン はい。
菊地 だから大韓民国のカルチャーの消費のされ方…そしてそれを遠目に見てる、消費しない人…外野さんの目線…外野さん目線に映ってるK-POPカルチャーの消費イメージも含めまして、だいぶタコツボ化してるわけですけれどもね。
 うん。
菊地 とてもこの…現象自体は、やっぱり韓流のみならず、全体に関わってくることなんで。
 だから、アイドルとかでも…マスに売らなくても、何て言うのかな…すごく昔みたいな形のマスで売れなくても、ドーム入るし…
菊地 はいはいはい。いや、ほんとですよ。
 そこそこチャートは入るし。前…チャート紹介してたじゃないですか、菊地さん。いろんな国の。
菊地 はい。
 あん時も、日本のチャートでKがすごく入ってるけど、誰も知らないっていう感じとか…
ヴィヴィアン うんうんうん。
 「少女時代」が売れた時とかは、みんなが「少女時代」を知っていたけど、今は全然そうじゃないけど、普通にドーム埋まるグループ、3つぐらいあったり…
ヴィヴィアン ふーん。
 チャートはトップ…ベストワン獲ったりするし。
菊地 はい。
 だから、それで商売できちゃうからね、いいんでしょうね。
菊地 そうですね、全然問題ないんでしょうね。音産としては回ってんだよ。
ヴィヴィアン うんうん。
 それで一人で5枚買ったりっていうのは、K-POPもそういうふうになってきてるし。AKBみたいなやり方してますから。
ヴィヴィアン うん。
 日本のアルバムとか出ると、ジャケット違いで5枚とか。それでみんな買いますからね。特に日本はね。
菊地 買いますよね。