「『ゴム』がカッコいい!」

TBSラジオ菊地成孔の粋な夜電波」第253回放送は、先週同様フリースタイルの生放送。
4月に入り、オープニングテーマ曲も変えて新シーズン突入。番組も6年目に突入しました。放送終了の日が永遠に来ないことを強く望みます。
最先端のクラブミュージックを紹介するにあたって、なぜか杉作J太郎さんのことを思い浮かべてしまった、「ゴム」というジャンルの音楽について解説された部分を文字起こししてみました。

Jazz-the African Sound

Jazz-the African Sound

ボンクラ映画魂 完全版: 燃える男優列伝

ボンクラ映画魂 完全版: 燃える男優列伝

えーとですね…久しぶりにミックス…やってみますかね。生放送で生ミックス。
えとね…昔、昔…杉作J太郎さん…杉作J太郎さんは昔の方じゃなくて、まだ全然お元気ですけども。
杉作J太郎さんの昔の本で、てか…あれがブレイクスルーになったんじゃないかな?…「三角マークの男優(オトコ)たち」っていうね、三角マークってのは東映映画のことなんです。東映映画のロゴマークのことですけども。
(注:正式な書名は「ボンクラ映画魂 三角マークの男優たち」 洋泉社
つまり、東映ヤクザ映画に関する…もう百科事典みたいな本を出して、すごい売れたんですよね。
で…杉作J太郎さんは…いろんな思い出があるんですけど(笑)。歌舞伎町時代にね、何度かコンビニですれ違って…面白かったんですけどね。それはまあいいと…ヘビー級のリスナーの方とワタシの懐かし話に留めるとしてですね。
そんなJ太郎さんがね、「三角マークの男優(オトコ)たち」っていう、そのっていう本の中で、とにかく東映ヤクザ映画の端役…もう端役も端役って人ね、主演級じゃなくて、とにかくあらゆる人の…ほんとに百科事典ですけど、何人ぐらいかなあ?…数百人いたと思うんですけど…そんなにいないか。
いずれにせよ、もうよくもここまで…っていう、いわゆるマニア本なんですけど。
その中にね…今日持って来ようと思ったんですけど、ちょっとね…持ってくんの忘れちゃったんで、正確な名前がわかんないんですけど。
「ゴム河合」っていう…ゴムってのはカタカナのゴムね。ゴム河合だか、ゴム山本だか?…っていう、やっぱ脇役の…日の目を見ない…日の目を見ないっていうより、脇役志向の方ですね。
(注:「ゴム高津」氏のことと思われる)
っていう…シブい俳優さんがいらっしゃって、で…そのことに関して、非常に愛情を持って書いてるわけですね、杉作J太郎さんが。
で、最後に…「『ゴム』っていう名前はカッコいい!」っつって、「DJみたいだ!」って書いてあったんですよ(笑)。
ゴムでDJって…杉作J太郎さんの…あの方ワタシの2つか3つ上…だからほぼ同年配なんですけど。
「いやぁ〜わかるよ〜。」っていう。「わかるけど、届かないよ〜。」って思いながら、それ読んでたんですね(笑)。
で、「三角マークの男たち」って結構前の本で、10年ってことはないと思うんですけど、かなり前の本なんですが。
(注:1996年出版)
なんでこんな話してるかっていうと、その杉作J太郎さんの至言「『ゴム』っていう名前は、DJみたいでカッコいい!」っていう…クラブカルチャーに対する我々の世代の感覚っていうんですかね…が、とうとうホントの事になりまして。
ゴム(Gqom)」という音楽が(笑)…クラブミュージックが、今…南アフリカから…ジャンルの名前ですね…「ゴム」っていうのが、とうとう出てきたんですね。
これ見た時にワタシ…「杉作さん!」って思ったんですけど(笑)。
このシリーズの…オープニング曲がさっき流れましたよね、あれも南アメリカなんですよね。で、62年ですから相当古いです。ワタシが生まれる前ですけども、1年前ですけども。
ああ…南アメリカじゃねえや、南アフリカだ…失礼。要するに南ア共和国ですよね。
アパルトヘイトが無くなって、今年で何十周年とかじゃない?…20年ちょっとぐらいかな?…そのぐらいの国ですけどね。
アパルトヘイト時代に活躍してたのが、クリス・マクレガー&ザ・キャッスル・ラガー・ビッグバンド…そのバンドの曲が、今シーズンのオープニングになるんですけど。
南ア共和国といえば、一番でっかい都市はケープタウンですよね、御存知。まあ、他にもいろんな都市…第二都市、第三都市があるんですけども、第二都市ぐらいになんのかな?…人口的には。ダーバンっていう都市があるんですよ。
で、その南ア共和国のダーバンの、今一番新しいクラブミュージックが「ゴム(Gqom)」っていうんですよね(笑)。
「やった!杉作さん!」って思いながらCD買ってまいりまして。
そのゴムってのが、アフリカの音楽としては…っていうか、最近のクラブミュージックの流れは、「ジューク(Juke)」みたいなね、シカゴから…シカゴのアフリカ系の人が作る…要するにアフロ・アメリカンな感じの音楽ってのは、まあ…ディアンジェロだとかの話もこの番組でちょっとしましたけど、少なくとも打ち込みのクラブミュージックはね、だいぶ音数が増えてたんですよね。
それがね、ぐっと減って、相当空間の多い…かといってダビー…ダブっぽくもない、ま…今から聞いていただきますけど、ゴムってのがめちゃめちゃ流行ってて。
まあ…今コンピレーションのCD開いてますけど、若いですね。DJもみんな…10代じゃないかな?
これはアフロ・アメリカンでもなくて、普通にアフロですからね。南ア共和国の人ですから。
非常にあの…ま、聞いていただくとおわかりになると思いますけど、一回シンプライズしたんで、退屈な方には退屈かもしんないですけど、これ爆音でクラブで聞いたら相当ヤバいし、実際のアフリカの人が踊りまくってるところを想像するとね、相当アガるんですけど。
南ア繋がりということで、ケープタウンとダーバンをリミックスということでですね。
今から「ゴム」ムーブメントの中から1曲…えーとですね、名前が読みづらいんですけど…「ドミノウエ」でしょうね、「ドミノウエ」っていうアーティストの…曲名は簡単なんですけど「Africa's Cry」っていう曲ですね。で、その曲と今日のオープニングの…カタカナで言うと「エクリプス・アット・ダウン」ですね、キャッスル・ラガー・ビッグバンド…これをミックスしてみます。
生ミックスをお聞きください。
キャッスル・ラガー・ビッグバンドはね、相当脇役っていうか、後ろに下がるようにミックスしてみますね。
(曲)