「ラスベガスをやっつけろ」


シネマート新宿では、公開中の「GONZO」に関連する作品として、1週間限定で「ラスベガスをやっつけろ」がレイトショーで上映されている。(原題:Fear and Loathing in Las Vegas)
昨夜「GONZO」に引き続いてそれも観ることにした。
初めて来たシネマートだったが、スクリーン1の方は結構広くて335席もあるらしい。しかし…21時過ぎからの上映だったとはいえ、土曜の夜なのにお客はほとんどおらず、4〜5人だったかも。その前の「GONZO」の最終上映も20人居なかったんじゃないかな?…公開初日なのにだいじょうぶかいな。スクリーン2にした方が良かったのでは?
ま、ハンター・トンプソンアメリカでは最も有名なジャーナリストらしいが、日本での知名度はほとんどないだろうから、そんな人物のドキュメンタリー映画ということで、なかなかとっつきにくいところはあると思うけど。「ラスベガス〜」の方は企画上映だし、公開から3年以上経ってDVDで既に観ている人も多いだろうから、今更観ようという客は多くないのかもしれない。(自分はその「今更」のクチ…)
どんな内容なのかも全く知らなかったのだが、ただタイトルはよく耳にしていたし、キャスティングを知っただけでも面白そうだと思っていたので、いずれ観たいと思っていた作品ではあった。(ジョニー・デップベニチオ・デル・トロクリスティーナ・リッチキャメロン・ディアス、トビー・マグワイヤ、ユマ・サーマン…って、超豪華)
結果的に、「GONZO」と同時に観て正解。トンプソン本人の映像を観て、それをふまえてジョニー・デップが演じる彼を観ると、いかに役に入り込んで緻密な演技をしているかがよくわかる。いやあ、すごいわJD。
頭髪を抜いて禿頭にしてまで見た目も本人に似せようとしているが、3ヶ月泊まり込んで生活を共にして、トンプソンの一挙手一投足を観察し、完璧に真似てみせている。
ジャーナリストという肩書きを超えて、ロックスターのような存在感を放っていたトンプソンだから、ロックミュージシャンでもありアートやカルチャー指向の強いデップが憧れたのは容易に想像が付くが、ここまで心酔しているとは…。
ベニチオ・デル・トロもこの作品のために体重を20kg増やし、トンプソンのラスベガス取材に同行したサモア弁護士に見事になりきっている。彼等の役者魂には脱帽。
ただ、肝心の映画自体は、ジャーナリストとしてのトンプソン像には迫っておらず、ドラッグにどっぷり浸かったクレイジーな奴らの珍道中というところばかりが内容のほとんどを占め、かなりルーズな作品になってしまった。
延々続く幻覚のシーンはいささか退屈で、ドラマとしてもいまいち。
監督はテリー・ギリアムらしいが、そういや昔「12モンキーズ」を観た時も、「なんかぶっ飛んだ映画っぽくて面白そう」と期待したが、よくわからないシュールな映像の垂れ流しで、あまり楽しめなかったのだった。今回その時の記憶が蘇った。
トンプソンのハリウッド体験という題材にかこつけて、単にこの監督の趣味で実験的でイカレた映像を撮りたかっただけなんじゃないだろうか。
仕事帰りに2本観るというのはさすがに疲れる体験だったけれども、この2本を同時に観れたことは、別の視点、作風からアプローチできて、トンプソンという人物への理解がより深まったので、まあよかったと思う。

ラスベガスをやっつけろ [DVD]

ラスベガスをやっつけろ [DVD]