「未来世紀ブラジル」

未来世紀ブラジル [DVD]

未来世紀ブラジル [DVD]

映画一本観たくらいで憂鬱になるほど、ナイーブぶってる年齢でもないんだが。
テリー・ギリアム監督の今や古典的カルトムービーとなった「未来世紀ブラジル(原題:Brazil)」を観た。
過去に何度も観ようと試みて、前半部分で眠くなったり苛々に耐えきれなくなったり飽きてきたりで、まともに観終えたことがなかった。
考えてみたらテリー・ギリアムの映画は観る度にそういう気持ちにさせられるようだ。「12モンキーズ」にしろ「ラスベガスをやっつけろ」にしろ、最初「なんだこの狂った映画?わけわかんねー」という印象を持ち、観ていくうちに、あまりの不条理さに腹がたつやらなんか居心地悪い思いをするやらで、落ち着いて観ていられなくなるのだ。
それを我慢して観ていくと、観終わった後では、「まあ、面白いっちゃ面白いよな」という評価になるのだが。
未来世紀ブラジル」は、「情報によって統制された人間社会の狂気」を描いていて、確かに「1984年」的であり、「カフカ」的でもある。そこからの脱出を試みる主人公サム・ラウリーだったが…。
うすうす予想していたが、やっぱり救いのないエンディング。
作品の中でのこのエンディングは様々な示唆に富んでいて、全然アリだとは思うが。
観終わった後に絶望的な気分になったのは、これが四半世紀も昔に作られた映画で、ここで警告されていることは改善されるどころか、まさに今現実社会がこの作品の中で描かれている「どこかの国」のようになっていることを痛感したからだ。
…人間、なんにも学んでないじゃん。
これだけぶっ飛んだ映画よりも、現実はそれ以上に狂ってる
テリー・ギリアムの描いた世界はメタファではなく「予言」でもあったのかと思うと、かなり憂鬱な気分になった。
作品としてはかなり面白かったけど(笑)。