「(500)日のサマー」

これもシネマハスラーで評価の高かった作品で、いずれ観たいと思っていた。
ミュージックビデオ監督として知られるマーク・ウェブの長編初監督作。
普通の恋愛映画かと思いきや、ちょっと見せ方が変わっている。
主人公トム(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)が、特定の恋人を作らない主義のサマー(ズーイー・デシャネル)と出会って、恋に落ち、別れてしまうまでの500日を、時間軸のポイントを前後させてランダムに見せていく。
例えば、1日目を見せたら、次にいきなり28日目、109日目、34日目、402日目、259日目…(正確な日付と順番は覚えていないけど)というようにランダムにふたりの「あの日あの時」を見せるのだ。
楽しそうにIKEAでデートする幸せな一日があったと思ったら、酒場でのトラブルが原因で喧嘩になった日、「彼女は最高だ!」と職場の同僚に楽しそうに話す場面の直後に、「彼女のなにもかもが憎い」と愚痴をこぼす場面が出てくる。
かなり行ったり来たりするので最初は混乱するが、だんだんふたりの関係の行く末が想像できるようになってくると、「すでにあの時に破局の予兆はあった」とか「そもそも最初からあまりかみ合っていなかった」とか「恋は盲目というが、よく考えたら彼女のあの態度は単なるわがままだっただけじゃないのか」とか、検証しているような目線が生じてくる。これは終わってしまった恋の思い出を反芻し、受けた傷をしっかり見つめ直して、そこから回復しようとする主人公の心情に同化していく過程でもある。
過去の検証型恋愛映画」という点で「ブルー・バレンタイン」を連想させるが、この作品では次の新しい恋の可能性を提示して終わるので、観賞後の気分は爽やかだ。
「(500)日のサマー」っていうくらいだから夏の日の映画なのかと思って、いまのうちのタイミングで観ておこうとしたのだが、「サマー」って人名かい!…夏関係ないのか…と思ってたら、これがちゃんとオチで生きてくるのだね。見事。
個人的に好きなシーンは、サマーと結ばれた翌朝、トムが幸せのあまり通勤途中で行き交う人々と笑顔で挨拶をかわし、ハイタッチし、握手し、ポーズをきめ、とうとう踊りだしてしまうところ。周囲の人も巻き込んでみんなでダンスしてミュージカルのようになるところは、急にそんな演出になるので笑っちゃうんだが、楽しそうな雰囲気に観ている方も嬉しくなってしまう。このあたりはさすがミュージックビデオ監督ならではだと思う。
いろんな人に勧めたくなる一本だ。

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