「粋な夜電波」の口上。

毎週楽しみに聞いているTBSラジオ菊地成孔の粋な夜電波」が、10月より金曜20時から2時間の生放送に拡大することになり、あの軽妙なトークがさらにたっぷり聞けるのかと思うと嬉しい限りですが。
http://www.tbsradio.jp/denpa/
特に番組冒頭の口上が最高。キラー・フレーズのオンパレード。
あまりにも好き過ぎて、先日8月28日放送分の口上を文字起こししてみました。
いずれこの番組本とか出版されるだろうか、それも楽しみにしたい。
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あなただけこんばんは。悲しみよ、こんにちは。そして、武器よさらば
猛暑日ゲリラ豪雨。そして愛によって、あるいは愛無きによって。もしくは知性によって、あるいは知性無きによって、振り回される日々。
これすなわち「アメとムチ」ならぬ「雨と無知」。イギリス語で申し上げるならば「Rain and Ignore」でございまして、さしずめ「赤挙げて白挙げない」と手旗信号。これ「共産主義は決して敗北しない」という意味でしょうか。「アカ挙げて白挙げない」…。はたまた「盆暮れ付け届けには白ではなく赤ワインを贈りましょう」という歳時記のようなものでしょうか、「赤あげて白あげない」。
しかしまあ、混迷のセンチュリー・トゥエンティワン
時に舞い上がれよと、時に沈み込めよと、時に「いきなりここでキスしてよ」と、時に「アナタトハ二度トキスシナイヨ」と。善良で愚かな我々のハートはきりきり舞いするばかり。気が付けばまた日曜の夜がやって参りました。ご案内はワタクシ、菊地成孔と申します。
通りすがりの旦那衆、御新造様はお見知り置きを。
行水の桶は片付けられましたかな? 八月最後の放送です。
しかし「ウイークエンド・シャッフル」とはいったものの、TBSでお聞きの皆様におかれましては、なんと生放送しかも続投となっております。
「ゾクトウ」といってもカミナリ族のリーダーではありませんで、吹けば飛ぶよなジャズ・ミュージシャンでありますが故、番組ご贔屓筋が、「アイツに生放送できんのか?」と、「危なっかしくて聞いちゃいられねえ」と、終いには「生じゃねえんじゃねえか」と、「万博の時に録音して、タイムカプセルに埋めてたヤツだろ?」と…言ったとか、言わないとか。
録音でない証拠に、本日のニュースを幾つか。
えー、先日大人気のうちに終了しました、渥美清さん主演の人気テレビドラマ「男はつらいよ」の劇場版が本日から松竹系で公開を……と、おおっとわざと間違えました。これは1969年の出来事…失礼致しました。
えー、本日は歴史的な日です。バラク・オバマ上院議員がアフリカ系として初めて民主党全国大会で、アメリカ合衆国大統領候補に……ああっと、失礼しました。これもまたわざと間違えました。一昨年の、今月今夜の出来事でした。
えー、バラクの野郎がめっきり増えてきた白髪をあえて染めない、ということの意味はなかなか深いと思うばかりですが、お聞きの曲は1947年12月11日に録音されました、チャーリー・パーカーの「Blue Bird」であります。
というわけで、菊地成孔の粋な夜電波、本日はキリよく第20回。夏の終わりにふさわしく「有線放送でかかりそうで絶対かからない、男性ジャズボーカル特集」。久方ぶりの「オール・ザット・ジャズ」でございます。
いずれ劣らぬ呪われた人生のジャズ歌手達があなたの胸に座ってどきゃあしないブルー・ブレスはゆっくりと花が咲くようにして、すっかり吐き出させますが故、どうかお子様は寝かしつけ、ブランデー片手に1950年代式の応接間に集合下さい。それではまいりましょう。