「カイジ」はジョニー・トーで。

去年マリエンバートで」みたいなタイトルになってしまった。
……なってねえわ。(サンドウィッチマン伊達調で)
10月1日のWOWOW無料放送の間に何本か映画を録り溜めたので、「ゴッドファーザー2」を観始めたら、案の定大家族の宴のシーンで退屈して、再生停止ボタンを押したのだった。ちゃんと観たら面白いのだろうが、3時間半とかって長過ぎる…。観る前から億劫になるわ。
そういう時に観るのはジョニー・トー先生の映画がいいね。90分そこそこの作品がたくさんあるというのがいい!
「エグザイル/絆」や「エレクション」などの有名なところから観始めたが、なにしろ作品数が多い監督なので、観ていないのがまだまだある。

PTU [DVD]

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というわけで「PTU」を観た。
サイモン・ヤムとラム・シューという、トーさん作品常連のふたりが主演。
夜の香港の繁華街をパトロールするPTU(Police Tactical Unit=香港警察特殊機動部隊)の部隊長ホー(サイモン・ヤム)と、組織犯罪課の刑事サァ(ラム・シュー)は旧知の仲なのか?、チンピラを追ってる最中にバナナの皮で滑って転んで気絶するサァ(笑)が拳銃を奪われてしまい、それを探すのを手伝ってやることに。
その間にサァの拳銃を奪ったギャングのリーダーは対立組織に殺されてしまう。
そこに、別の事件を追っていた特捜課CIDのチョン刑事(ルビー・ウォン)達が遭遇する。
様々な事件が同時に絡みあって、どこで何がどう繋がってくるのかハラハラしながら観る84分間のこの作品は、たったひと晩の出来事。
それを独特の構図でスタイリッシュに見せるジョニー・トーの映像センス。そしてものすごくタメの効いた「間」の取り方による緊張と緩和で、観る者をぐいぐい引き込んでいく。
脚本もないままに撮り始めて、即興で演出するのは、香港の監督には多いそうだが、ジョニー・トー作品はどこまで計算されているのだろう。
人物の相関図がきっちり出来上がった上で、画面上のどこに配置するかまで考えぬかれているのではないだろうか。
そうでなければ、ただたっぷり間をとっただけの「引き」では退屈極まりないはずだから。
例えば、ただ呆然と立ち尽くす男を映すとする。しかしその手前の人物にピントが合っている状態でその画面奥を誰かが通り過ぎる。実はそれが探している男…とか、偶然同じ場所に居合わせた者同士で、後々また別の場面で遭遇することになるのだが、この時はまだ知らない…。といったような伏線を、説明的な描写を極力省いて、映っている人物同士の距離感や視線のやり取りなどで語らせるのが本当に上手い。
「PTU」は最後にすべてが同時に起こり、あっという間に解決に向かうクライマックスに集約されていく、言ってしまえばワン・アイディアっちゃあそうなんだが、それでもそこにカタルシスがきっちりあって、やっぱり映画として最高に楽しい作品だ。
それで…観終わって、ふと思ったのだが。
カイジ」ってジョニー・トー監督に撮ってもらうべきじゃないか?

それこそ福本伸行先生の原作マンガは、アイディアこそ素晴らしいが、先生ご本人の画力による制限が大き過ぎて、限られた時間と空間の中で、脳内での葛藤はものすごいアクションしているけれども、実はあんまり見た目の動きがなかったりして、映画にしにくいところがある。
それを「誰得?」な改変をして、大げさに騒いで煽るだけで、さも劇的に盛り上げました〜ていう感じに仕立て上げてるんじゃないの?(観てないけど)
それで酷評されていたにもかかわらず、「2」がまた公開されているという不思議。
だいたい何でサラ金屋の遠藤が女にして天海祐希に演じさせたのかもわからないが、今度の2では天海祐希のスケジュールがあわなかったのか、「沼」攻略に協力するはずの遠藤の役どころが、前作で天敵として闘ったはずの利根川香川照之)になってるっつーのはどーゆーことだ?(予告編しか観てないけど、もう十分。)
…いや、映画版「カイジ」に文句を付け出したらキリがない。
もし自分が大金持ちでプロデューサーやれるんだったら、香港に「カイジ」のコミックス全巻送りつけて、ジョニー・トー先生にオファーを出すのにな。
それこそ顔や手元のアップの連続でも、使いどころをわきまえた間と、緩急付けた演出で、スリリングないい作品に出来ると思うのだが。
「スリ」なんてまさにそういう見せ場がメインの映画だったじゃない。
トー先生なら「限定ジャンケン」だけで一本、ビシッとした映画になるね。次いで「2」で「Eカード」、「3」で地下チンチロ…なんぼでも傑作ができるわ。
カイジニック・チョンでもいいし、利根川はサイモン・ヤムでもいいじゃない。「沼」編やるなら坂崎役はラム・シューで(笑))

ちなみに「PTU」の動画をリンクしようと思ってYouTubeを検索したら、自分が観たのにはなかったシーンの動画が見つかった。
これって撮影中といわれてどうなったのかわからない続編なのかな?
それともテレビシリーズとかもあるのだろうか。うーん、謎。
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