「クリチバ0℃」


東京は10月15〜21日に、ユーロスペースで上映されている「ブラジル映画祭2011」。
期間中に仕事が休みの日は水曜しかないので、観れる作品が限られてしまう。
たまたま火曜に仕事が早目に終わり、調べてみたら最後の回に間に合いそうだったので、帰りに渋谷に寄って「クリチバ0℃」という作品を観ることにした。
ブラジルに行ったことがあり、少しは土地勘があるとはいえ、クリティーバにはいったことがなく、パラナ州って南部だよな…というぐらいしかわからない。冬にはかなり寒くなるという地方なので、「クリチバ0℃」というからには、ブラジルのイメージらしからぬ寒々しい映像が映し出されるのでは…と予想した。

オープニングで空撮されたクリティーバ市の姿が長い時間映し出されるのを観て、意外にも大都市だったのに驚いた。
立ち並ぶ高層ビル群、張り巡らされた交通網。寒さ厳しい地方都市の人々の暮らしを映す「北の国から」的な作品と勝手に思い込んでいたが、大都市で今この現代に暮らす人々のリアルな現実を映す作品だとわかった。
主人公らしき中年男は自動車ディーラーに務め、かなり裕福な暮らしをしているが、盗難車を掴まされるトラブルに遭う。家庭では年頃の娘と息子との関係がうまくいかずに悩んでいる。窮地を救ってやると言う弁護士に法外な金額を要求されて…というストーリー。
事前にどんな内容の映画か全く予備知識のないまま観始めたので、てっきりこのジャイメという男の物語なのかと思い込んでいたのだが、なんとか金を工面していざその弁護士に合いに行くという場面で、別の男の話に切り替わってしまう。
その前の場面でジャイメの乗る車と接触しそうになったバイクの男にカメラが寄り、そのバイクの男のモノローグで「オレの人生はトラブル続きだ…ま、いまにわかるさ」というセリフが突然出て来たので、「???…」急にわけがわからなくなりかけた。
その後しばらくはバイクの男・マルシオの物語になり、彼が別居中の妻と姑に、愛娘になかなか会わせてもらえずに不満を募らせている様子が映し出される。バイクで配達の仕事をしている彼がスピードを上げてかっ飛ばしていると、並走する路線バスの運転手と目が合う。…ここでまたそのバスの男のモノローグ。「今日俺は人生で大きな決断をした…いまにわかるさ」…カメラはそれからしばらくマルシオの行動を追っていたが、急に今度はそのバスの運転手の物語に切り替わる。
そこでようやく、こうやってリレー形式で繋いでオムニバスのように見せる、これは群像劇なんだということに気付いたのだった。
映画はこの後、ファベーラに住み、リヤカーを引いて古紙回収をしてわずかな日銭を稼ぐ貧しい男とその家族が登場し、4者それぞれの物語を見せて行く。
最後はこの4人の物語が繋がってくる場面があるのだが、特に前の伏線をきれいに回収して劇的なオチが付くわけではない。
結局「人生いろいろ」みたいな曖昧な結論になってしまうので、大きなカタルシスのある作品ではなかった。
それでも現在のブラジルの人々のリアルな生活が描かれていて、興味深く観れた作品であった。
ただどうしても気になったのは、映画の中での音楽の使い方の酷さ…。何も物事が起こってないのに仰々しいクラシックが流れたり、ダサいロック調の音楽が突然鳴り始めたりと、唖然とするぐらいのヘタさ。これはわざとなのだろうか?
…このいろんな音楽のごった煮感が、まさに現在のブラジルを象徴している……のかなあ…。

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