「甘い人生」

甘い人生 通常版 [DVD]

甘い人生 通常版 [DVD]

韓国映画はバイオレンス描写が過激でも、なんか業と情の深さがズシンときて見応えがあるので、結構好きな作品が多い。
イ・ビョンホン主演作を観たのは、今年夏の「悪魔を見た」が初めてだったが、確かにアクションもカッコいいし、涙顔も美しく、絵になる俳優だなあと感心した。
それで興味もあったので、彼の代表作といわれる「甘い人生」も観てみたのだったが…。
正直言って、かなり期待ハズレ。
さんざんもったいぶった、意味ありげなシーンが続き、ストーリーも薄っぺらで、ほんとにイ・ビョンホンをカッコ良く映すのが目的でしかない作品。
血を流しながらそれでも闘うビョン様…韓流ファンのオバさま方はキャーキャー喜ぶのかもしれないが、なぜ組織の会長にあそこまで恨まれ、酷い拷問に合わなければいけないのか理由がよくわからないし、ビョン様が組織を裏切ったのは本当にひとりの女性に対する恋心だったのかもよくわからない。
最後のシーンも、「生きていた時の幸せな記憶を呼び起こしている」らしいが、これじゃ観る方は混乱するだけ。マジで「夢オチ」なのかと思って、しばらく呆然としてしまったもの。
とにかく思わせぶりなシーンの連続で、それぞれの人物の心情を描ききっていないから、感情移入しにくいことこの上ない。
それで「死を覚悟して決戦に挑むビョン様の後ろ姿」をスローモーションでダラダラ映しても…泣けないよ!
「アジョシ」を少しは見習ってほしい。
……って、この作品は2005年のものだから「アジョシ」よりもだいぶ前。擁護するとしたらその点か。
この作品がヒットしたことで、後の韓国ノワール映画の良質な作品が生まれる土壌がつくられたのだとしたら、やはり大きな意味があったのだろう。
これを踏まえて、もう何歩も先に踏み込んだところに「悪魔を見た」や「アジョシ」があるのよ……と、やや好意的に捉えることにしよう。